【完結】“当て馬姫”と呼ばれている不遇王女、初恋の王子様のお妃候補になりました ~今頃、後悔? 知りません~

Rohdea

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第25話 お怒りです!



◆◇◆


 ───その頃のサスティン王国。

 国王、王妃、王太子が食事を摂っていた。
 王女二人がいないだけで随分と寂しい食事の席に感じ、そして会話は自然と二人についての話になっていく……

「……エリシアは無事にプロウライト国に着いてシンシアに会えただろうか」
「父上。無事に到着したら手紙を送りますと言っていたので、もうすぐ届くのでは?」
「……それもそうだな」

 出発して日数的にもそろそろ到着した頃だ。

「いつものことだが……エリシアは本当にシンシアのことになると熱心だな」
「何でしたっけ?  ───私の怠慢でシンシアを危険に晒してしまったから心配で居てもたってもいられないわ!  だから会いに行きたいの──でしたっけ?」
「ああ、泣きながらそう言っていた」

 だが……と、国王は思った。

(今更……ではあるが──)

 確かにエリシアがルートの最終確認を怠ったことで、シンシアが危険な道を通る寸前だったと聞いた時は肝を冷やし、エリシアを責めた。
 だが、シンシアの機転で危険なルートは回避し、無事に国境を越えて行ったと報告もあったのだ。
 謝罪はすべきだが追いかけてまでする必要はあったのか?  帰国後では駄目だったのか?
 もしくはそんなに気になるなら先に手紙で謝罪でもよかったのではないか……?

「まぁ、エリシアは一度こうと決めたら頑固ですからね」

 王太子はそう言いながら苦笑した。

「───シンシアへの謝罪のためだけに向かった……にしては随分と大荷物だったわねぇ……」
「ん?」
「母上?」

 そこに珍しく王妃が口を開く。

「あら?  二人揃ってなんて間抜けな顔をしているの?  馬車に乗せていたエリシアの荷物。多かったでしょう?  それにエリシア付きのメイドの話によるとエリシアはお気に入りのドレスも持っていったみたいよ?」
「……荷物」
「お気に入りのドレスを……?」

 国王と王太子は、顔を見合せてなぜ……?  と、首を傾げる。
 エリシアはと言っていたのに。

「ドレスの件はよく分からないが、長旅になるから荷物が多くなっただけ、ではないのか?」
「そうね。でもあれだと───シンシアではなくて、まるで、エリシアが“嫁入り”するみたいだったわね」

 王妃は淡々とした表情でそう口にした。

「は、母上……変なことを言わないでくださいよ!  エリシアにはダラスがいるんですよ?」

 王太子は必死になって否定した。
 それにエリシアはその婚約者のダラスと共にプロウライト国に向かっている。

「そ、そうだぞ!  プロウライト国との縁談はシンシアで話をしている」
「……」

 それ以上は何も言わず、王妃は黙り込む。
 国王と王太子は再び顔を見合わせるも互いの瞳はどこか揺れていた。

 ───エリシアは昔からシンシア思いのいい姉で……

(……本当にそうか?)

 ───遠く離れた国に訪問中の妹のことが心配で謝罪のついでに様子を……

(……だが、こたびの縁談の話、エリシアは妙に食いついていなかったか?  ──そう。まるで自分の縁談かのように……)

 二人は今まで当たり前のように思い感じていたことが、まるで間違っていたかのような感覚に陥っていく。
 まるで悪い夢から覚めたかのような───

 国王や王太子がそんな違和感を覚え始めた翌日。
 プロウライト国の王子ジュラールからの手紙がサスティン王国の国王宛に届いた。

  
◇◆◇



 伯爵との特別講義が終わり、挨拶を終えたお姉様とダラスが部屋に向かったという連絡を受けたわたくしは、慌ててジュラールたちの元に向かい合流した。
 そして合流した時の皆の顔は明らかに怒っていた。

「あ、あの……」
「シンシア!  おかえ……」

 わたくしがおそるおそる声をかけ、ジュラールが微笑みながら応えようとしてくれたその時。

「────何だったのあの人っっっ!  許せなーーーーい!!」
  
 フィオナ様のそんな叫び声と共にドゴォォンとすごい迫力の音が響いた。
 わたくしはギョッとしてフィオナ様に視線を向ける。
 なんと!  怒りの表情のフィオナ様が床を殴っていた。

(え、えぇぇえ!?)

 わたくしはその光景に唖然とし言葉を失う。

「……フィオナ」
「止めないで、エミール様!  私はどうしても許せないの!  あれのどこが妹思いの姉なの!?」

 妹思いの姉──どうやら、フィオナ様はお姉様に怒っているらしい。

「本当に妹を思う姉はあんなことは言わないわ!!」

 ドゴォォォン……
 フィオナ様の二発目の拳が床に向けられ、再びすごい音が部屋に響く。

(フィオナ様……手!  そんなことをして手は大丈夫なの!?)

 わたくしがハラハラしていると、横にいた伯爵がポンッとわたくしの肩を叩いた。

「大丈夫だ。フィオナはちゃんと自分の手を痛めないようにして殴っている」
「そ、そうなのですか……」
「しかし、フィオナのあの荒ぶり方は珍しい。よほど許せなかったのだろう」
「……」

 いったいお姉様は皆に何を言ったのかしらと不安になった。

「うん。分かってるよ、フィオナ。君は家族思いだから、あの言動に態度……余計に許せなかったんだよね?」
「エミール様……」

 フィオナ様が小さく頷くとエミール殿下に勢いよく抱きついた。
 エミール殿下はそんなフィオナ様を優しく包み込むように抱きしめて宥めていた。

(すごい!  ……これこそ“愛”だわ)

「シンシア」
「!」

 わたくしが、そんな二人に見惚れているとジュラールが隣にやって来た。

「大丈夫だ。フィオナ妃のことはエミールに任せよう」
「は、はい……ですが、お姉様はそんなにフィオナ様を怒らせるようなことを口にしたのですか?」

 わたくしの知る限り、お姉様は初対面なのに人を不快にさせるような言動や態度は取らない。
 なのに?

「……怒っているのはフィオナ妃だけじなない。僕もだ。もちろん、エミールも」

 ジュラールは眉間に皺を寄せてそう言った。

「お姉様は皆さんに何を言ったのですか?」

 わたくしが訊ねると、ジュラールが悲しそうに笑う。

「とにかく不快なことだよ。シンシアを大事な妹だと庇うフリをして貶めるようなことを平気で言ってのけた」
「あ……」

 わたくしが顔を伏せるとジュラールは言った。

「シンシア、そんな顔をしないでくれ」
「ですが……」
「……いや、彼らがどんな人間性かはよく分かったからね。これで心置き無くエリシア王女とダラスとかいう男をボコボコに出来る」
「ボ……」  

(ボコボコ……)

「シンシア。彼らをボコボコにする舞台はもう決めてある」
「え?」
「明日、急だけど簡単な二人の歓迎パーティーを開こうと思うんだ」
「パーティー!?」

 わたくしが驚きの声をあげると、ジュラールはニッコリと笑った。

「せっかく遠路はるばる、縁談相手でもない王女様がやって来てくれたんだ。歓迎しないといけないだろう?」
「そ、それは、そうですが……」
「だから、ちょっと予定を変更して……シンシアとの対面も今夜ではなくそのパーティーでの場にしようかなと思っているんだけど、構わないだろうか?」
「え?」

 予定では今夜にも対面するはずだったのに?

「わ、わたくしは構いませんが……」

 だって何も自ら進んで会いたいとは思わ……思えないもの。

「よし、それなら決まりだ」

(まさかのパーティー……)

 チラッと伯爵を見たらとても厳つくていい笑顔で頷いている。
 その顔でわたくしはハッと思い出す。
 ──そうだったわ!
 お姉様を精神面でボコボコにする方法。
 伯爵に言われたことをジュラールにお願いしなくちゃ!

「ジュ、ジュラール!」
「うん?」
「で、では明日のパーティー……で」
「明日のパーティーで?」

 ジュラールは不思議そうに首を傾げている。
 一方のわたくしは、頬にジワジワと熱が集まって来ているのが分かる。

(どうしましょう。すごく、は、恥ずかしいわ……でも、言わなくちゃ!)

 ───お姉様を(精神面で)ボコボコにするためだもの!
 わたくしは、えぇい!  と、気合を入れて口を開く。

「───わ、わたくしとイチャイチャしてくださいっ!!」
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