28 / 70
番外編~成長後~
1. ジョシュアとアイラ ※再掲
しおりを挟む───────
───……
「また、すごい数……」
「セアラさん? どうかした?」
「お義母様……」
ギルモア家に届いた手紙の山を見てセアラさんが大きなため息を吐いていた。
「すごい手紙の量ね?」
「はい。こちらの山がジョシュア宛て、こちらの山がアイラ宛てです」
「……!」
セアラさんがそれぞれの手紙の山を指しながら説明してくれた。
これはこれは……
「ホーホホホッ! 二人揃ってモッテモテじゃないの、さすがジョルジュと私の孫ね!」
あれから時は流れ、
暴走天使ベビーだった二人もすくすく成長しお年頃を迎えている。
(そう。あの時……うたた寝した夢で見た頃の年齢……)
ジョルジュ、ジョエルに似て見た目は美男子に成長したジョシュア。
何年経っても可愛らしさを失わない天使の義娘セアラさんに似て、同じく見た目は天使のように可愛いらしいアイラ。
───見 た 目 は!
「いつから、こんな面白いことに?」
「アイラが社交界デビューを迎えてからです」
「そう……」
先日、アイラの社交界デビューがあった。
エスコート役は兄、ジョシュア。
(二人とも見た目は最高だから悪目立ちしたのかもしれないわね……)
「つまり、この山は全部、ジョシュアやアイラへの縁談や婚約の申し出? やっぱりみんな“あの”見た目に騙されてしまったのかしら?」
(見た目だけよ~? 中身は癖の強いかなりやっべぇ子たちよ?)
「……」
しかし、セアラさんは首を横に振る。
その表情はどこか深刻そう。
「いえ、半分くらいはそうなのですけど……」
「半分?」
「残りはちょっと特殊で……」
「特殊?」
意味がよく分からず首を傾げた。
そんな私にセアラさんは、差出人が判別出来る形で一通の手紙を見せてくれた。
「───例えばですが、ジョシュア宛のこちら」
「これ? 別に普通の手紙───え?」
一見普通の手紙。
でも、差出人の名前を見て驚いた。
「は? お、男!? 男性の名前じゃないの!」
「はい。このジョシュアへの手紙は男性からなんです……」
「え? ジョシュア……!? 何したのよ」
脳裏に浮かぶはニパッと笑う人懐こいジョシュアの顔。
油断すればいつでも脳内で「あうあ!」というあの声まで聞こえてくる。
戸惑う私にセアラさんが気まずそうに説明してくれた。
「ジョシュアは、あの昔から変わらないニッコニコな人懐っこい笑顔を振り撒いて……その、男女問わず惑わしているみたいなんです……」
「男女問わずぅぅ~!?」
(ジョシュアーーーー!)
魔性の女……ではなく、魔性の男が出来上がっている……!
「ジョシュアのファンクラブが出来ているそうなんですよ。会員には男性も多くいるそうで」
「ファンクラブ!?」
「名称は、ギルモア侯爵令息ジョシュア様を愛でる会……」
「愛でる……」
開いた口が塞がらない。
ジョシュア周りが思っていた以上にやっべぇことになっているわ!
では、アイラは?
まさか、アイラも……?
そんな私の視線を受け止めたセアラさんが頷く。
「…………アイラの場合は」
スッとセアラさんが差し出した手紙。
それを見て、やはり……と私は頭を抱えた。
「ホホホ、差出人は……ご令嬢、なのね……」
「はい。そしてアイラ宛ての手紙の中身は、アイラをまるで女王様か何かのように崇拝する内容となっております」
「じょ……」
女王!? 崇拝!?
「普段は大人しく無口なアイラが口を開いた時の女王様っぷりが堪らない! 痺れる! 踏んで! ……とやらで人気なのだとか」
「踏……」
「特にお義母様譲りの誇り高き高笑いが大人気だそうです」
「……!」
オ~~ホッホッホ!
私の脳内にアイラの高笑いが聞こえる。
アレか!
あれがアイラの女王様に拍車をかけているのね!?
「なんてこと……」
アイラはもちろん女王ではない。
王家の血なんて一滴も入っていない。
可愛い顔したただの侯爵令嬢よ!?
こっちも周囲がやっべぇことになっている……!
「アイラの場合は、可愛い見た目に反して中身が苛烈すぎて無理! となる所じゃないの?」
セアラさんは静かに首を横に振った。
「いいえ、お義母様────そのギャップが堪らないそうです」
「ギャップ……!」
「ホワホワした見た目から繰り出されるまさかの豪胆さに、皆、新たな世界の扉が開いてしまうのだとか」
「新たな世界……っ!」
かつて私と出会ったジョルジュや、ジョエルの親友エドゥアルトがジョエルと出会って開いた扉!
私は言葉を失う。
まだ、二人が暴走天使ベビーだった頃から、あの夢のこともあり将来を心配してセアラさんと協力し合ってしっかり躾をしてきたはずだったのに……!
『ホーホッホッホ! ジョシュア! その我が家では貴重な生きた新鮮なあなたの表情筋…………たくさん動かしておくのよ! 絶対に固まらせては駄目! さあ、笑って!』
───はい! おばあさま! ニパッ!
『ホーホッホッホ! アイラ! あなたは昔から声がか細いですからね! 周囲に舐められては大変。さあ! お腹から声を出すのよ! ホーホッホッホッ!』
───はい! おばあさま! オーホッホッホッ!
(幼少期に笑わせ過ぎたかしら……?)
「───仕方がないわね。二人からも事情を聞いてみましょう」
「そうですね」
私はパンパンと手を叩いて使用人を呼びつける。
「ジョシュアとアイラをここに呼んできて欲しいの。“至急”でお願い」
「至急ですね? ───承知いたしました」
「……」
各々の部屋にいるという二人を呼びに行った使用人の背中を見て、私はため息を吐く。
そして、セアラさんに向かって言った。
「三十分かしら?」
「いいえ、最低でも一時間は見た方がいいかと」
「そうよねぇ……」
愛する夫ジョルジュ、愛息子ジョエルに似てギルモア家の素晴らしい方向感覚を持ち合わせてしまった二人の孫。
困ったことに使用人が“迷子防止”のために付き添って共に屋敷内を歩いたとしても一瞬の隙に姿をくらませてしまう。
(※つまり、付き添いは無意味)
よって、至急で呼び出したものの、それぞれの部屋から一分もかからない距離にあるこの部屋に来るのに早くて三十分。
「───では、セアラさん。二人の到着までのんびりお茶でもして待ちましょうか」
「そうですね!」
私たちはのんびり優雅なお茶会を開始した。
────それから、一時間後にアイラ到着。
「…………お呼びとうかがいましたわ、おばあ様、お母様」
「……」
「……」
私とセアラさんは顔を見合わせる。
無表情のアイラは何故かタオルやら雑巾やらを手に持っている。
どう見ても物置部屋を経由して来たのだと分かった。
そこから更に遅れること三十分。
「────おばあ様! 母上! どうしましたか!?」
「……」
「……」
ニパッ!
ジョシュアは、何故か愛用のスコップを片手に持って満面の笑顔で部屋にやって来た。
ほんのり土で汚れた服。
……こっちは庭を経由して来たことが窺えた。
199
あなたにおすすめの小説
婚約破棄?いいですよ。ですが、次期王を決めるのは私ですので
水中 沈
恋愛
「コメット、今ここで君との婚約を破棄する!!」
建国記念パーティーの最中、私の婚約者であり、第一王子のエドワードは人目も気にせずに大声でそう言った。
彼の腕には伯爵令嬢、モニカがべったりとくっついている。
婚約破棄の理由を問うと、モニカを苛めた悪女と結婚する気は無い。俺は真実の愛を見つけたのだ!とのたまった。
「婚約破棄ですか。別に構いませんよ」
私はあっさりと婚約破棄を了承し、書類にサインをする。
(でもいいのかしら?私と婚約破棄をするってことはそういう事なんだけれど。
まあ、本人は真実の愛とやらを見つけたみたいだし…引き留める理由も無いわ)
婚約破棄から数日後。
第二王子との結婚が決まった私の元にエドワードが鬼の形相でやって来る。
「この悪女め何をした!父上が弟を次期王にすると言い出すなんて!!
お前が父上に良からぬことを吹き込んだだろう!!」
唾をまき散らし叫ぶ彼に冷めた声で言葉を返す。
「まさか。
エドワード様、ご存じないのですか?次期王を決めるのは私ですよ」
王座がいらない程焦がれる、真実の愛を見つけたんでしょう?どうぞお幸せに。
真実の愛(笑)の為に全てを失った馬鹿王子にざまぁする話です。
冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件
水月
恋愛
「君を愛するつもりはない」
結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。
出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。
愛を期待されないのなら、失望させることもない。
契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。
ただ「役に立ちたい」という一心だった。
――その瞬間。
冷酷騎士の情緒が崩壊した。
「君は、自分の価値を分かっていない」
開始一分で愛さない宣言は撤回。
無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。
以後、
寝室は強制統合
常時抱っこ移動
一秒ごとに更新される溺愛
妻を傷つける者には容赦なし宣言
甘さ過多、独占欲過剰、愛情暴走中。
さらにはリーリアを取り戻そうとする実家の横槍まで入り――?
自己評価ゼロの健気令嬢と愛が一分も我慢できなかった最強騎士。
溺愛が止まらない、契約結婚から始まる甘すぎる逆転ラブコメ
『婚約破棄されたので玉座から降りました。――理で王国をざまあします
ふわふわ
恋愛
王太子から突然の婚約破棄を告げられた公爵令嬢。
社交界の中心で恥をかかされ、次期王妃の座を奪われた――はずだった。
けれど彼女は泣かなかった。怒鳴らなかった。復讐を誓いもしなかった。
「玉座は、座るより設計したほうが面白いですわ」
そう言って一歩退いた彼女は、王妃教育制度を立ち上げ、王と王妃を“育てる側”へと回る。
感情で動く王太子は、やがて理を学び始める。
新たに選ばれた王妃候補は、責任と孤独を知りながら成長していく。
武力でも陰謀でもない。
透明性と制度、そして対話で国を立て直していく静かな逆転劇。
婚約破棄で笑った者たちは、気づけば彼女の作った仕組みの中で頭を下げていた。
これは復讐ではない。
これは成熟。
選ばれなかった令嬢が、王国そのものを進化させる物語。
婚約破棄?いいですけど私巨乳ですよ?
無色
恋愛
子爵令嬢のディーカは、衆目の中で婚約破棄を告げられる。
身分差を理由に見下されながらも、彼女は淡々と受け入れようとするが、その時ドレスが破れ、隠していた自慢のそれが解き放たれてしまう。
「お前を愛する者などいない」と笑われた夜、私は“本物の王子”に拾われた
波依 沙枝
恋愛
侯爵令嬢セレスティアは、第二王子リヒトの婚約者だった。
彼に愛されていると信じ、どれほど冷たくされても、気まぐれに与えられる優しい言葉だけを支えに、隣に立ち続けてきた。
――しかしある夜、彼女は見てしまう。
婚約者が、知らない女を抱きながら、自分を嘲笑っているところを。
「お前みたいな女を愛する者などいない」
絶望の中で崩れ落ちた彼女に、ひとりの男が手を差し伸べた。
「――助けるのは、私でもいいかな」
それは、かつて彼女の孤独に寄り添ってくれた、“本当の王子”だった。
これは、愛されなかったはずの侯爵令嬢が、
本物の王子に見出され、溺愛され、
そして彼女を捨て、嘲笑った婚約者が、すべてを失って後悔するまでの物語。
今さら縋りついても、もう遅い。
彼女はもう、“選ばれる側”ではなく、“選ぶ側”なのだから。
義兄のために私ができること
しゃーりん
恋愛
姉が亡くなった。出産時の失血が原因だった。
しかも、子供は義兄の子ではないと罪の告白をして。
入り婿である義兄はどこまで知っている?
姉の子を跡継ぎにすべきか、自分が跡継ぎになるべきか、義兄を解放すべきか。
伯爵家のために、義兄のために最善の道を考え悩む令嬢のお話です。
幼馴染を選んで婚約者を追放した旦那様。しかしその後大変なことになっているようです
睡蓮
恋愛
レーベット侯爵は自身の婚約者として、一目ぼれしたミリアの事を受け入れていた。しかしレーベットはその後、自身の幼馴染であるリナリーの事ばかりを偏愛し、ミリアの事を冷遇し始める。そんな日々が繰り返されたのち、ついにレーベットはミリアのことを婚約破棄することを決める。もう戻れないところまで来てしまったレーベットは、その後大きな後悔をすることとなるのだった…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる