最恐家族は本日も無双中 ~ギルモア家と愉快な人々~

Rohdea

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番外編~成長後~

1. ジョシュアとアイラ ※再掲

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───────
───……


「また、すごい数……」
「セアラさん?   どうかした?」
「お義母様……」

 ギルモア家に届いた手紙の山を見てセアラさんが大きなため息を吐いていた。

「すごい手紙の量ね?」
「はい。こちらの山がジョシュア宛て、こちらの山がアイラ宛てです」
「……!」

 セアラさんがそれぞれの手紙の山を指しながら説明してくれた。
 これはこれは……

「ホーホホホッ!   二人揃ってモッテモテじゃないの、さすがジョルジュと私の孫ね!」




 あれから時は流れ、
 暴走天使ベビーだった二人もすくすく成長しお年頃を迎えている。

(そう。あの時……うたた寝した夢で見た頃の年齢……)

 ジョルジュ、ジョエルに似ては美男子に成長したジョシュア。
 何年経っても可愛らしさを失わない天使の義娘セアラさんに似て、同じくは天使のように可愛いらしいアイラ。

 ───見  た  目  は!

「いつから、こんな面白いことに?」
「アイラが社交界デビューを迎えてからです」
「そう……」

 先日、アイラの社交界デビューがあった。
 エスコート役は兄、ジョシュア。

(二人とも見た目は最高だから悪目立ちしたのかもしれないわね……)

「つまり、この山は全部、ジョシュアやアイラへの縁談や婚約の申し出?   やっぱりみんな“あの”見た目に騙されてしまったのかしら?」

(見た目だけよ~?   中身は癖の強いかなりやっべぇ子たちよ?)

「……」

 しかし、セアラさんは首を横に振る。
 その表情はどこか深刻そう。

「いえ、半分くらいはそうなのですけど……」
「半分?」
「残りはちょっと特殊で……」
「特殊?」

 意味がよく分からず首を傾げた。
 そんな私にセアラさんは、差出人が判別出来る形で一通の手紙を見せてくれた。

「───例えばですが、ジョシュア宛のこちら」
「これ?   別に普通の手紙───え?」

 一見普通の手紙。
 でも、差出人の名前を見て驚いた。

「は?   お、男!?  男性の名前じゃないの!」
「はい。このジョシュアへの手紙は男性からなんです……」
「え?   ジョシュア……!?  何したのよ」

 脳裏に浮かぶはニパッと笑う人懐こいジョシュアの顔。
 油断すればいつでも脳内で「あうあ!」というあの声まで聞こえてくる。

 戸惑う私にセアラさんが気まずそうに説明してくれた。

「ジョシュアは、あの昔から変わらないニッコニコな人懐っこい笑顔を振り撒いて……その、男女問わず惑わしているみたいなんです……」
「男女問わずぅぅ~!?」

(ジョシュアーーーー!)

 魔性の女……ではなく、魔性の男が出来上がっている……!

「ジョシュアのファンクラブが出来ているそうなんですよ。会員には男性も多くいるそうで」
「ファンクラブ!?」
「名称は、ギルモア侯爵令息ジョシュア様を愛でる会……」
「愛でる……」

 開いた口が塞がらない。
 ジョシュア周りが思っていた以上にやっべぇことになっているわ!

 では、アイラは?   
 まさか、アイラも……?
 そんな私の視線を受け止めたセアラさんが頷く。

「…………アイラの場合は」

 スッとセアラさんが差し出した手紙。
 それを見て、やはり……と私は頭を抱えた。

「ホホホ、差出人は……ご令嬢、なのね……」
「はい。そしてアイラ宛ての手紙の中身は、アイラをまるで女王様か何かのように崇拝する内容となっております」
「じょ……」

 女王!?    崇拝!?

「普段は大人しく無口なアイラが口を開いた時の女王様っぷりが堪らない!   痺れる!   踏んで!   ……とやらで人気なのだとか」
「踏……」
「特にお義母様譲りの誇り高き高笑いが大人気だそうです」
「……!」

 オ~~ホッホッホ!

 私の脳内にアイラの高笑いが聞こえる。
 アレか!   
 あれがアイラの女王様に拍車をかけているのね!?

「なんてこと……」

 アイラはもちろん女王ではない。
 王家の血なんて一滴も入っていない。
 可愛い顔したただの侯爵令嬢よ!?

 こっちも周囲がやっべぇことになっている……!

「アイラの場合は、可愛い見た目に反して中身が苛烈すぎて無理!   となる所じゃないの?」

 セアラさんは静かに首を横に振った。

「いいえ、お義母様────そのギャップが堪らないそうです」
「ギャップ……!」
「ホワホワした見た目から繰り出されるまさかの豪胆さに、皆、新たな世界の扉が開いてしまうのだとか」
「新たな世界……っ!」

 かつて私と出会ったジョルジュや、ジョエルの親友エドゥアルトがジョエルと出会って開いた扉!

 私は言葉を失う。
 まだ、二人が暴走天使ベビーだった頃から、あの夢のこともあり将来を心配してセアラさんと協力し合ってしっかり躾をしてきたはずだったのに……!


『ホーホッホッホ!   ジョシュア!   その我が家では貴重な生きた新鮮なあなたの表情筋…………たくさん動かしておくのよ!   絶対に固まらせては駄目!   さあ、笑って!』

 ───はい!   おばあさま!   ニパッ!

『ホーホッホッホ!   アイラ!   あなたは昔から声がか細いですからね!   周囲に舐められては大変。さあ!   お腹から声を出すのよ!   ホーホッホッホッ!』

 ───はい!   おばあさま!   オーホッホッホッ!

(幼少期に笑わせ過ぎたかしら……?)



「───仕方がないわね。二人からも事情を聞いてみましょう」
「そうですね」

 私はパンパンと手を叩いて使用人を呼びつける。

「ジョシュアとアイラをここに呼んできて欲しいの。“至急”でお願い」
「至急ですね?   ───承知いたしました」
「……」

 各々の部屋にいるという二人を呼びに行った使用人の背中を見て、私はため息を吐く。
 そして、セアラさんに向かって言った。

「三十分かしら?」
「いいえ、最低でも一時間は見た方がいいかと」
「そうよねぇ……」

 愛する夫ジョルジュ、愛息子ジョエルに似てギルモア家の素晴らしい方向感覚を持ち合わせてしまった二人の孫。
 困ったことに使用人が“迷子防止”のために付き添って共に屋敷内を歩いたとしても一瞬の隙に姿をくらませてしまう。
(※つまり、付き添いは無意味)

 よって、至急で呼び出したものの、それぞれの部屋から一分もかからない距離にあるこの部屋に来るのに早くて三十分。

「───では、セアラさん。二人の到着までのんびりお茶でもして待ちましょうか」
「そうですね!」

 私たちはのんびり優雅なお茶会を開始した。



 ────それから、一時間後にアイラ到着。

「…………お呼びとうかがいましたわ、おばあ様、お母様」
「……」
「……」

 私とセアラさんは顔を見合わせる。
 無表情のアイラは何故かタオルやら雑巾やらを手に持っている。
 どう見ても物置部屋を経由して来たのだと分かった。

 そこから更に遅れること三十分。

「────おばあ様!   母上!   どうしましたか!?」
「……」
「……」

 ニパッ!
 ジョシュアは、何故か愛用のスコップを片手に持って満面の笑顔で部屋にやって来た。
 ほんのり土で汚れた服。
 ……こっちは庭を経由して来たことが窺えた。

 
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