最恐家族は本日も無双中 ~ギルモア家と愉快な人々~

Rohdea

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番外編~成長後~

50. 計画のスタート


「えええ!?     ルクセア伯爵ってそんなに危険人物なのですか!?」
「そうらしいのよ……」 
「暗殺計画だなんて只事じゃありませんよね……!?」

 セアラさんが顔を青ざめながらそう呟いた。

「……」

 どこからどう聞いても、危険な人物だというのにジョルジュもジョシュアたちが全っっ然気にしている様子がなかったので、私の方がおかしいのかと思い、セアラさんにその話をしてみた。

(これよこれ! この反応を私は待ってたの……!)

 やっぱり私がおかしかったんじゃないと実感出来たところで、私は机の引き出しを開ける。

「お義母様? それは?」

 私が引き出しから取り出した紙の束を見てセアラさんが不思議そうに首を傾げた。

「これはね、この私が調べさせて独自に作ってる……そうね、貴族名鑑のようなもの」
「え!?」
「普通の貴族名鑑と違うのは……」
「違うのは?」

 真剣な顔をしているセアラさんを見て私はフフッと笑った。

「貴族たちの基本情報はもちろん、弱みや探られたくない秘密を中心に構成されてることね!」
「よ、弱み!」
「そうよ~、だって普通じゃつまらないでしょう?」 
「お義母様、そ、そんな凄い物を持っていたんですか……!」

 そこまで口にしたセアラさんがハッとする。

「もしかして、お義母様がいつもあれやこれやの情報収集が早いのは……」
「これがあるおかげでもあるわね」

 もちろん、最新情報を集めるべくその時点でも人を動かすけれど。

「い……いつから情報を集めているんですか?」
「そうねぇ……元婚約者元祖カスの妃候補になった頃からかしら?」
「え? そんな前ですか!?」

 セアラさんがびっくりしている。

「あら。だって、王族に嫁ぐ予定だったのよ? 先手を打って周りの弱みはしっかり握っておかないと舐められちゃうじゃない?」
「な、舐められる……」
「ホホホ! 幸い、お金は沢山あったから、困ることは無かったわ」
「……お義母様はやっぱり敵に回してはいけませんね」

 私が高らかに笑うとセアラさんは顔をひきつらせながらそう言った。

「そう? でも昔は得られた情報の数も少なかったけど、何十年とかけてだいぶ集まったわよ~」
「……あれ? でもお義母様。それならこれまでの騒動、ジョシュアたちがせっせとパーティーに出向いてターゲットの情報収集なんてしなくてもよかったのでは?」

 その言葉に私はニヤリと笑う。

「そんなことないわよ? 最新情報は必要だし。なにより……」
「なにより?」
「ジョシュアたち────楽して情報を集めようだなんて甘いじゃない」

 ホーホッホッホッ! と私は高らかに笑う。

「まあ、あの子たちは自ら出向くだけでなく、そろそろ“人を使う”ことも覚えた方がいいとも思うけどね~」

 自ら足を運ぶだけではどうしても時間が足りないから。

「……では、今回“それ”を出したのは何故ですか?」
「さすがに暗殺計画とやらは穏やかじゃないでしょ?」
「あ……」

 セアラさんがハッと息を呑む。
 私はルクセア伯爵家に関するページを開いてそっと目を通した。


─────


「おばあ様! さすがに連続でパーティーを開くのは難しかったので、アディール王子には王宮でお茶会を開いて貰うことになりました!」
「は? お茶会?」

 翌々日、ジョシュアが私の部屋にやって来てそう言った。

「お茶会です!」
「それは構わないけど────もうあの不貞しているゴミカスを処分する準備が出来たの?」
「はい!」

 ジョシュアが胸を張りながらニパッと笑った。

「手分けして調べたり、それぞれ人を使ったりして調べました!」
「……へぇ」
「伯爵に関わりのある人たちを中心に招待するお茶会となるです」

 あれこれ心配しなくてもちゃんと人を使っていたらしい。
 これも成長かしら? と思うと感慨深いものがある。

「ですが、実は問題が一つ……」
「問題?」

 順調なようだけど何か壁に当たったらしい。

(伯爵が企んでるという暗殺計画のことかしら?)

 さすがのジョシュアも呑気にヘラヘラしている場合ではないと気付いたのかもしれない。

「おじい様が……」
「ジョルジュ? ジョルジュがどうしたの?」
「……」
「ジョシュア?」

 一瞬黙り込んだジョシュアはパッと顔を上げると言った。

「お茶会だと開催が昼間になっちゃうから、酔っ払ったおばあ様に踏んでもらえないって言うんです」
「は?」

 一瞬、何の話? と思ったけれど、すぐに理解した。
 あの時、私が行き倒れていたジョルジュを踏みつけたのは単にヤケ酒しすぎて酔っていただけじゃない。
 外が暗くてよく見えなかったという理由もある。

「どこまで再現しようとしてるのよ……」
「おじい様、シチュエーションは大事だと言ってました!」

 私はハァとため息を吐く。

「おじい様はどうにか説得するので、おばあ様はヤケ酒する準備をしておいて下さい」
「どんな準備よ……」
「当日は、僕たちが伯爵の不貞を暴いてきちんと“あの日の空気”を作りますから!」
「……もっと暴かなくちゃいけないことあるでしょ……」
「それで“倦怠期”は無事に解消です!」

 ニパッ!

「ニパッじゃないでしょ……」
「では、おばあ様! 僕はおばあ様の承諾を得たとおじい様の説得に向かいます!」
「今の会話の中で私、何を承諾したわけ?」
「任せてください! 僕、説得するの得意です」

 ニパッ!

「やっだぁ…………今までで一番話が通じてない気がするわ」

 あうあ~しか喋らなくてまともに会話が出来なかったベビーの頃に戻ったような気分になった。

「では、おばあ様。失礼します!」

 無駄に張り切っているジョシュアは元気よく部屋を出ていった。
 部屋にポツンと残された私は、机の引き出しを開けてルクセア伯爵に関する調査書を取り出すとハァと息を吐いた。

「まあ、そのお茶会とやらで不貞を暴けば、自然と暗殺計画も失敗することになるのでしょうけど」

 私の調べたところによると、この不貞ゴミカス・ルクセア伯爵が企む暗殺計画のターゲットも間違いなく今回のお茶会の招待リストに名を連ねているはずだから────




 そしてあっという間にジョシュアたちの計画の日……お茶会の日がやって来た。
 王宮に向かう馬車に乗り込んだ私は、ハァと思いっきりため息を吐いた。

「おばあ様? どうしたです?」

 目の前に座るジョシュアとアイラが心配そうに私を見てくる。

「ホホホ、まさかあの時のドレスと似たようなドレスまで着せられるとは思ってなかったのよ」
「お似合いです!」
「……」

 笑顔で褒めたたえてくるジョシュアとその横でコクリと頷くアイラ。
 今朝になって、本日のおばあ様の衣装はコレです! と言って新しいドレスを持ってきたから本当に驚いた。
 なんとこっそり注文して作らせていたらしい。

(ジョルジュもあの日と同じような格好をしているのかしら?)

 今日は出会いを再現するからという理由で、ジョルジュとは一度も顔を合わせていない。
 朝、いつものように置物になっている寝顔を見たのが最後。
 ジョルジュと一言も言葉を交わしていないのは結婚してから初めてかもしれない。

(なんだか変な感じ……)

 王宮への移動も別の馬車にして時間もずらすという徹底ぶり。
 ちなみに、私の馬車にはジョシュアとアイラ。
 ジョルジュの方にはジョエルとセアラさん。
 迷子対策もバッチリな組み分けとなっている。

「おばあ様! 安心してください。お茶会ではありますが、ちゃんとお酒も用意してもらっています」
「ホホホ! 別にそんな心配一切してないけどね!」
「おじい様の意気込みもバッチリでした!」
「ホホホ! 行き倒れる意気込みってなにかしら?」
「楽しみです!」

 ニパッ!

「……っ」

 こうして、ジョシュアに満面の笑顔の圧をかけられながら、あの日の再現踏み踏みするため、私は王宮へと向かった。
 
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