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最終話 ざまぁされた悪役王女の幸せ
しおりを挟む「フェリ。窓の外を見てごらん?」
「?」
リアム殿下の声で馬車の窓からそっと外を見ると、この世界では初めて見る景色が広がっていた。
「……海だわ!! 綺麗!」
(レバテックル国には海が無かったからとっても新鮮だわ! そして懐かしい!)
私が大興奮していると、リアム殿下は首を傾げながら不思議そうに言った。
「あれ? フェリは海を知っているんだね」
「え! あ、そう、そうなの! 見るのは初めてだけど!」
(いけない、ついつい子供みたいに浮かれてはしゃいでしまったわ!)
そんな私をリアム殿下は優しい眼差しで見つめながら言う。
「フェリは可愛いなぁ」
「ま、またそれ……!」
「本当の事を言ってるだけだよ?」
リアム殿下はいつでもどんな時でも直球なので、私はもう毎日がドキドキが止まらない。
でも、これからもこの先もこんな日が続くのかと思うと嬉しくてたまらない。
(だって、本当に私を愛してくれているのはリアム殿下だけ)
あれから。
諸々の事が片付いたので、リアム殿下は帰国する事になり、それに伴い私も一緒に彼について来た。
レバテックル国の今後の事があったので、最後に王宮を訪ねた私は家族だった人達に最後の別れを告げた。
お父様はここ数日ですっかりやつれて見たところ十歳は老けていた。
なんて言うかヨボヨボ?
そしてお母様は……荒れていた。
昔から面倒な事が嫌いで社交も滅多にしない王妃だと有名なお母様は、リアム殿下の要求した“レバテックル国の今後について”が気に入らなかったらしい。
(でも、仕方ないじゃない。お兄様が廃嫡されてしまったんだから……)
私達は二人兄妹だった。つまり王子がいなくなったレバテックル国の王位継承は王女の私に回って来るのが通常なのだけど……悪評高くポンコツな私が女王になんてなったら大変。すぐに国が傾くわ。
そういうわけで、リアム殿下はあのにっこり笑顔で「もう、この道しかないですよね?」と、要求したわ。
──レバテックル国はリュキアード国の従属国になれ、と。
ただ、すんなりと行く話では無いので、これから両国間で詳しい話し合いが持たれていく事になった。
でも、レバテックルは、この話を受けるしかないと思う──
そして───……
リュキアード国に来て早いもので約1ヶ月が経つ。
今日のリアム殿下は公務がお休みらしく、二人でお茶とお菓子を堪能した後は手を繋いで中庭を散歩しようという事になった。
「フェリ、ここでの生活には慣れた?」
「ええ!」
「良かった」
私が笑顔で答えるとリアム殿下も嬉しそうに笑う。
嘘では無いわ。
本当に本当に幸せなんだもの。
「思っていたより暖かく優しく迎えてもらって驚いているわ」
「俺のフェリは誰よりも可愛いからな」
チュッ
キス魔のリアム殿下はそう言いながら、私の額にキスをする。
「もう! リー様ったら!! ……と言うより、微笑ましく見られている気がするの」
「微笑ましい?」
「えっと、視線がね? 生あたたかいの」
「あー、それは……」
この国の王宮に着いた日、リアム殿下は私を横抱きにしたまま王宮に入った。
私はその時の城の人達の驚愕した顔が今でも忘れられない。
特にソネット様。
彼女が一番驚いていたように思う。
(心配だったソネット様もあたたかく迎えてくれたわ……)
「最近の俺は影で“溺愛王子”と呼ばれているらしい」
「でき!? ふ、ふふ」
「何で笑うんだよ……」
ちょっと不貞腐れるリアム殿下が、可愛くて私はますます笑ってしまう。
「ふ、ふふ、だって!」
「……ったく。本当にフェリは可愛くて困る」
「リー様?」
声が小さすぎてよく聞こえなかった。
「何でもない! フェリは最近笑顔が増えた……そう思っただけだ!」
「え? そう……ですか?」
「あぁ、とっても笑顔が可愛くて眩しくて俺は、毎日フェリへの愛しさが募っていくばかりだよ……」
(ひぇ!? だからこの方は夜───……)
「リーさ、ま……んんっ」
「フェリ……愛してるよ」
チュッチュッチュッ……
キス魔のリアム殿下のキス攻撃が開始して、私の頭の中はデロデロになった。
────
「そうそう、アーロンとあの女だけど」
「……!」
たくさんのキスを終えた後、リアム殿下が思い出したかのように口にした。
「出発前に様子を見に行かせていた者の報告によると、追放された直後は毎日のように仲良く喧嘩ばかりしていたらしいけれど、最近は目も合わせないそうだ」
「仲良く喧嘩……?」
(それ絶対に仲良しじゃないと思うわ)
嫌だって泣き叫んでいたものね。
「それで今は互いに浮気三昧らしいよ。ペトラが男連れ込んだり、アーロンは女性の元に入り浸ったりで。 “真実の愛”って何だったんだろうね」
「……」
「二人とも平民の暮らしがどういうものか分かっていなさそうで、手持ちのお金はどんどん減っているんだってさ。思っていたより早く自滅するかもしれないな」
「……」
お兄様はともかくペトラは転生者のはずなのに……
ペトラのこれはゲームのどのルートの結末とも違うけれど、間違いなくバッドエンドだと思った。
「リー様」
「どうした? フェリ」
私はギューーッとリアム殿下に抱き着く。
「フェ、フェ、フェリ!?」
「……ギュッてしたくなりました」
「……」
「リー様?」
何故かリアム殿下は黙り込んでしまう。そして顔を赤くした後、小さな声で言う。
「……俺のお嫁さんが…………可愛すぎる」
「ふふ」
(あぁ、やっぱりこうしていられる事がとってもとっても幸せ)
処刑寸前で前世の記憶を思い出した時は、絶望しかなかったけれど……
(あなたに出会えて良かった)
死ぬのは真っ平ゴメンだけれど、ざまぁはされて良かったかも。
なんて思ってしまう。
「フェリ? 笑いすぎじゃないかな?」
「ふふ、気のせいよ」
「……」
「ふーん、なら。悪い子にはお仕置だ!」
「───え?」
そんな甘い甘いお仕置という名のキスが再び────……
────ある日、目が覚めたら乙女ゲームの悪役王女に転生し、バッドエンド目前だったけれど、こうして悪役王女の私は隠しキャラに愛されて、誰よりも幸せになりました!
~完~
✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼
ありがとうございました!
これで完結です。
ここまでお読み下さりありがとうございました。
何だか不幸な主人公でしたが、色んな意味で最強な人に愛されてこれからは幸せに過ごしていってくれる事でしょう。
(隠しキャラ万歳!)
あ、完結は完結なのですが、あともう1話だけ番外編として、ソネット視点をお届けしようと思っています。(今、書いてる途中です)
ちょっと答え合わせ的な要素が……
書き終わり次第投稿するのでお待ち下されば嬉しいです。
最後まで二人を応援して下さりありがとうございました!
そして、いつもの新作です。
『あなたからの愛は望みません ~お願いしたのは契約結婚のはずでした~』
イチャイチャが書きたいなぁ……でも、どうなるかは分からない。
ちょっと時間が足りなくて初回は1話だけ……
よければまたお付き合い下さいませ!!
ありがとうございました(。ᵕᴗᵕ。)
応援ありがとうございます!
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