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第二部:第二十章 真実と虚構の存在
(四)依頼書②
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「で、依頼主はどなたという事になっているんですか?」
ラーソルバールに言われて、ホグアードは思い出したという様に手を叩いた。
「シルネラにある古代文明解析協会だ」
「そんなの有るんですか?」
思わず身を乗り出す。その様子にエラゼルとシェラを除き、皆が首を傾げる。
「有る。古代語だの古代魔法だの、古代の発明品や芸術品の調査を主としている。現代を上回るものがあるとかなんとか息巻いていてな。常闇の森は古代文明が生み出した闇の名残だとか何とか言っている」
「あはは……」
「まあ、名前を借りるには丁度いいだろう? 見返りに何か奴らにやれる物を拾ってきてくれれば有り難い」
古代の遺物っぽい物でも拾って帰れば、喜ぶだろうし、名を借りた分の礼にもなる。
「その古代文明解析協会というところに行ってみても良いですか?」
「それは別に構わんが……」
目を輝かせて問いかける少女に、ホグアードは何でそんな所に、という表情で返す。
「あ、いや……やっぱり、いいです」
周囲の冷ややかな反応に気付くと、ラーソルバールは小さくなった。恐らくそこは、彼女にとって夢のような空間に違いないが、他の者にとっては退屈極まる場所になるだろう。行ったところで、足しになるものが有るとも限らない。
ホグアードは苦笑しながら、机から書類を取り出す。
「最後に渡すこれが、我が国の身分証明書だ。偽造品ではなく正式なもので、全員分ある。悪用しないでくれよ」
シルネラの身分証明書、それは帝国に入る際に身分を偽るために必要となるもの。
ラーソルバールの身分証明書には、校長が言った通り、ご丁寧に「シルネラ国籍を取得したレンドバール王国出身者」との記載もあった。
「依頼書も渡したし、残った手続きはこっちの作業だ。これで君達がここでやる事は終了となる」
「有難うございました。二国友好のため、精一杯やらせていただきます。またお会いしましょう」
そう告げ、挨拶を終えると、一行は応接室を後にした。
受付カウンター前を通る際、彼らと接点を持とうという冒険者達に囲まれそうになり、大騒ぎになったので、逃げるように表に出る。騒ぎの中には前日の男達も混じっていたが、誰も気に止めなかった。そのままラーソルバールを先頭に街中を走り、追いかけてくる者達を撒いた。
「もうダメ……」
ディナレスが息を切らせて立ち止まる。
「訓練が足りんな……」
教官の如く言い放つエラゼルに、騎士学校の面々は失笑する。無論ディナレスを笑った訳ではない。
「私達はそんな訓練していないもん!」
ふくれて見せたが、顔は笑っていた。先の言葉の直後に当のエラゼルも笑っており、冗談だと分かっていたからでもある。
その後、適当に見繕った食堂で昼食を済ませると、街をあてもなく歩く。
前日は街の外側を歩いていた為、外部の者も多く気付かなかったが行き交う人々の衣装は、隣国とはいえかなり異なる。旅装の者も少なくないため目立つことは無いが、普段通りの服装であれば、周囲から浮いた存在になることは間違いない。
ゆっくり見ると街並みも大分異なり、やや雑多な印象を受ける。中心部に向かうほど、住宅は古いものになるため、街が発展する度に外へ外へと居住地が増えていったのだろうと容易に想像できる。
「こういう感じも落ち着くね」
シェラが商店街を通りながら、周囲を見回して店を物色する。
「エイルディアとは大分雰囲気が違うな。さすがは商人と冒険者が造った街、と言われるだけのことはある。……ん? そういえば、大使館に行かねばならんのではなかったか?」
ギルドで手続きを終えた後は、ヴァストールの大使館に行くという予定だったのだが……。
「あ! ごめん、完全に忘れてた」
ラーソルバールに言われて、ホグアードは思い出したという様に手を叩いた。
「シルネラにある古代文明解析協会だ」
「そんなの有るんですか?」
思わず身を乗り出す。その様子にエラゼルとシェラを除き、皆が首を傾げる。
「有る。古代語だの古代魔法だの、古代の発明品や芸術品の調査を主としている。現代を上回るものがあるとかなんとか息巻いていてな。常闇の森は古代文明が生み出した闇の名残だとか何とか言っている」
「あはは……」
「まあ、名前を借りるには丁度いいだろう? 見返りに何か奴らにやれる物を拾ってきてくれれば有り難い」
古代の遺物っぽい物でも拾って帰れば、喜ぶだろうし、名を借りた分の礼にもなる。
「その古代文明解析協会というところに行ってみても良いですか?」
「それは別に構わんが……」
目を輝かせて問いかける少女に、ホグアードは何でそんな所に、という表情で返す。
「あ、いや……やっぱり、いいです」
周囲の冷ややかな反応に気付くと、ラーソルバールは小さくなった。恐らくそこは、彼女にとって夢のような空間に違いないが、他の者にとっては退屈極まる場所になるだろう。行ったところで、足しになるものが有るとも限らない。
ホグアードは苦笑しながら、机から書類を取り出す。
「最後に渡すこれが、我が国の身分証明書だ。偽造品ではなく正式なもので、全員分ある。悪用しないでくれよ」
シルネラの身分証明書、それは帝国に入る際に身分を偽るために必要となるもの。
ラーソルバールの身分証明書には、校長が言った通り、ご丁寧に「シルネラ国籍を取得したレンドバール王国出身者」との記載もあった。
「依頼書も渡したし、残った手続きはこっちの作業だ。これで君達がここでやる事は終了となる」
「有難うございました。二国友好のため、精一杯やらせていただきます。またお会いしましょう」
そう告げ、挨拶を終えると、一行は応接室を後にした。
受付カウンター前を通る際、彼らと接点を持とうという冒険者達に囲まれそうになり、大騒ぎになったので、逃げるように表に出る。騒ぎの中には前日の男達も混じっていたが、誰も気に止めなかった。そのままラーソルバールを先頭に街中を走り、追いかけてくる者達を撒いた。
「もうダメ……」
ディナレスが息を切らせて立ち止まる。
「訓練が足りんな……」
教官の如く言い放つエラゼルに、騎士学校の面々は失笑する。無論ディナレスを笑った訳ではない。
「私達はそんな訓練していないもん!」
ふくれて見せたが、顔は笑っていた。先の言葉の直後に当のエラゼルも笑っており、冗談だと分かっていたからでもある。
その後、適当に見繕った食堂で昼食を済ませると、街をあてもなく歩く。
前日は街の外側を歩いていた為、外部の者も多く気付かなかったが行き交う人々の衣装は、隣国とはいえかなり異なる。旅装の者も少なくないため目立つことは無いが、普段通りの服装であれば、周囲から浮いた存在になることは間違いない。
ゆっくり見ると街並みも大分異なり、やや雑多な印象を受ける。中心部に向かうほど、住宅は古いものになるため、街が発展する度に外へ外へと居住地が増えていったのだろうと容易に想像できる。
「こういう感じも落ち着くね」
シェラが商店街を通りながら、周囲を見回して店を物色する。
「エイルディアとは大分雰囲気が違うな。さすがは商人と冒険者が造った街、と言われるだけのことはある。……ん? そういえば、大使館に行かねばならんのではなかったか?」
ギルドで手続きを終えた後は、ヴァストールの大使館に行くという予定だったのだが……。
「あ! ごめん、完全に忘れてた」
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