断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる

文字の大きさ
5 / 9

断罪後・アイシャ2

しおりを挟む
塔には何の障害もなく入れた。

塔の造りから、主賓室は最上階しかない。
上品な扉を開くと何らかの結界がある。
弾かれるか。と思ったけど、すんなり入れた。

特定の誰かを入れなくするためか、それとも誰かを出られなくしているのか。

ソファーが置かれた応接室らしい部屋の奥に部屋が2つ。
一つはバスルームとトイレへ続く扉だった。

もう一つの扉を開ける。

大きな天蓋付きのベッドがある。
そこから幾重にもかけられた魔法を感じる。
これは、洗浄。治癒。意識混濁。魔力吸収に・・媚薬効果・・?!

サイドテーブルにトレーを置いて天蓋のカーテンを開ける。

そこにはぼんやりと天井をみつめる男性がいた。

カイン・ロードレス子爵令息

最後に見た時より痩せた男のシャツの隙間から見える肌に散る紅い跡を見た瞬間、血が沸騰した。

「何でアンタがっ!何でアンタなんかにっ!!」

あまりの怒りで言葉にならない。

あの女じゃなかった。コイツがアル様を奪った!コイツが!!
サイファ様もロイド様もみんなコイツが。
私から盗った!私のモノだった!そこは私の場所だった。私の!!

何の反応も見せない盗人に思う様制裁を与えていると、急に手首を掴まれた。

「・・それは代わりたいということか?」

息を飲む。強い意志を感じる目。

「っっ!そこは私の場所よっ」

そう叫んだ瞬間、あの男が何かつぶやいた。

その途端、急激な浮遊感と上下が逆さまになったようなグルリとした回転を感じた。

何が起こったの。

さっきまではっきりしていた意識に膜が張られていく。幾重にも幾重にも。

目を開けると、見慣れた顔があった。
鏡なんてあったかしら。

「ありがとうな。あっアンタも。ありがとうな」

私が喋っている。自分におれいなんてへんね。

それから、いつもぼんやりしている。

たまにきづくとアルさまやサイファさまロイドさまがみたこともないようなおかおでわたしをみている。あせをかいてくるしそうに。すこしえみをうかべて。しかいがゆれてきもちわるい。

コトリ

あるひそんなおとがきこえた。なにかとまったおと。

しかいがくらくなってきた。

わたしなにをかんがえていたんだっけ。なにがほしかったんだっけ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

義弟の婚約者が私の婚約者の番でした

五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」 金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。 自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。 視界の先には 私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

蝋燭

悠十
恋愛
教会の鐘が鳴る。 それは、祝福の鐘だ。 今日、世界を救った勇者と、この国の姫が結婚したのだ。 カレンは幸せそうな二人を見て、悲し気に目を伏せた。 彼女は勇者の恋人だった。 あの日、勇者が記憶を失うまでは……

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

むしゃくしゃしてやった、後悔はしていないがやばいとは思っている

F.conoe
ファンタジー
婚約者をないがしろにしていい気になってる王子の国とかまじ終わってるよねー

過程をすっ飛ばすことにしました

こうやさい
ファンタジー
 ある日、前世の乙女ゲームの中に悪役令嬢として転生したことに気づいたけど、ここどう考えても生活しづらい。  どうせざまぁされて追放されるわけだし、過程すっ飛ばしてもよくね?  そのいろいろが重要なんだろうと思いつつそれもすっ飛ばしました(爆)。  深く考えないでください。

処理中です...