【完】放課後の弱点検査

柊一郎|くすぐり小説

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放課後の弱点検査(後編)

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 中村が突然スッと視界から消えたので、瑞希は少し不安になった。中村が下半身の方に移動したのだ。

 中村は、瑞稀の息が整ったくらいのタイミングで、スカートから伸びている太もも~膝~膝裏と、脚全体をくすぐりはじめた。瑞希はふふふっと失笑し、身体を捩らせた。

 お互いに能く分かったのだが、瑞希は触れるか触れないかくらいのタッチと、ふわふわと引っかくようなタッチを織り交ぜられると弱い。

 太ももでいうと、付け根に近いあたりと、膝のすこし上あたりをそうされるのが苦手で、中村にさらさらとくすぐられるたびに笑いが込み上げてきて、どうしても堪えることができなかった。

「あはははっ、もう、、っ、ちゃんと触ってください、あ、あははははっははっ」

「ちょっと、スカートに手をいれないでくださ……あっはは、うふふふふっ」

 上半身のときと違って、バンザイをしている手がギュッとパイプを掴み、それがこのもどかしく甘い刺激を、何とか堪えるための手立てとなっていた。

 こうなるとほぼ拘束されているに近い感じだなと、瑞希はちょっと切ないような気持ちになったのであった。

 それから脚全体をこちょこちょと縦横無尽にくすぐられ、首をいやいやと振りつつ、沢山笑わせられながら、何とか堪え抜くことができた。堪える、の定義によるのであるが――。

「太もも6点…膝3点…膝裏6点といった感じかしらね。付け根など少しくびれている部分が弱い…と」

 瑞希は、いや、膝も充分くすぐったかったですから……とツッコミを入れそうになったが、何だか藪蛇になりそうでやめた。

**

 とうとう終わった……とほっと息をつき、瑞希は上体を起こした。随分はだけたセーラー服をいそいそと直していると、中村がきょとんとした表情で自分を見ていることに気づく。

「なにしてるの?」

 と中村がシンプルに問うた。

「はい……?いえ、くすぐったかったです」

 中村は、うん、と相槌を打ち、

「それはそうだろうけれど。まだ、最後が残っているでしょう」

 にこっと微笑みながら、検査票の足先の部分を指差した。まさか、と瑞希は戦慄した。

「いやいやいや!バッシュ履いてますから!」

 瑞希は思わず、超正論のツッコミをしてしまった。

「え、なに……」

「いや、ですから、バスケする時はバッシュ履いてますので、足の裏は触られることないですよ!だから、検査の必要ないですよね?!」

 瑞希は実は、脚の検査のときにも同じ事を思っていた。しかしまあ、腰の低いディフェンスであれば、触れられることもあるかもしれないか……と無理矢理自分を納得させていたのであった。


「…………連関」


 中村は、ゆっくりとデスクまで歩き、椅子に座って脚を組み、目を細めて呟いた。

「はい……?」

「多臓器連関、って知ってるかしら。人間の臓器はね、神経やホルモンを通して密接に関わっているの。例えば一つの臓器の不調が、他の臓器の不調につながり、身体全体が悪くなるケースもあるの」

 ……中村が、医者の顔をしている。まあ、実際に医者なのであるが。中村は続ける。

「あなたのくすぐったがりも、目に見えるところを検査するだけでは治せないわ。全身をくまなく検査して、総合的に診断を下す。それが大切なの」

 瑞希はしばらく口をパクパクしていたが、良い反論が思い付かず、もうどうにでもなれと、なかば諦観を伴ってベッドに横たわった。

 よって、中村が瑞希の靴下をぽん、と脱がせたときも、裸足にされた驚きと恥ずかしさで口をパクパクしていたが、もうなにも言わなかった。

 そろりと、中村の指先が、瑞希の足指の下の膨らんだところに着地した。この後に及んで我慢することはせず(というか出来なかった)、瑞希は仕様もなく笑い始めた。

**

 普段、裸足をくすぐられることなんて、そうある事ではない。瑞希はそのくすぐったさに衝撃を覚え、ベッドのパイプを握る手に力が入る。

「ひぃゃー!あははっ、あーっはははは、ちょっと待って、私ダメです足、あっはっはっは…………」

 笑いすぎて最後は声になっていない。すぅっと息を吸うと、また激しく笑い始めた。

「っ、、あはははははははっ先生、足はダメでしたあはははっ、きゃははは」

 中村の指は、その膨らんだ部分--中足骨頭部というが今は関係ない--から土踏まずへと移動した。また別の刺激に瑞希は、身体を弓なりにして、笑い声を一層大きくした。

 中村はあえて、足の裏だけは、自身の爪をメインウェポンとして活用していた。少し長めのジェルネイルであり、細かな刺激を与えるのにちょうど良い。瑞希にとっては、それが堪らない。

 足の裏のくすぐったい感覚が、腰のあたりを通って、頭の先まで電撃のように駆け巡る。

 今度は、足の指の間に侵入してきた。

 足指の一本一本を愛でられ、瑞希は少し嬌声の混じった笑い声をあげた――。

**

「あははっ、あはははは、もう、しんじゃいます、あっ、くりくりしないで、あはは、あっ、堪えられない、あはあん」

 中村は軽く指を動かしているだけであるのに対し、瑞希が身体に受ける影響が大きすぎる。その所謂"不公平感"が、瑞希に一種のくやしさのようなものを感じさせた。

 瑞稀の一番の弱点は、足の裏であることは明白であった。年ごろの女の子が、普段人に見せることがない足の裏を晒し、あまつさえくすぐられることを甘受している状況に、中村は少し、ほんの少し妙な感情を抱いていた。

 瑞希が身体を熱らせて喘ぎ笑っている。

 土踏まずのあたりをくすぐるたびに足の裏がキュッと丸まり、足の甲を撫でてあげると、戸惑ったようにそり返る。

 笑う。身体を捩らせる。

 たまらなく愛おしい。

 自身の愛情が暴走し出していることに、中村は気づいていた。


****


 仙陽高校のテスト期間が終わり、それぞれの部活が再開していた。瑞希の所属するバスケ部も例に漏れず、コートに無機質な鳴き声を響かせている。

 あの日、瑞希は笑い疲れて、そのまま仮眠ベッドで眠ってしまったのであった。

 中村に起こされた頃にはもう暗くなり始めていて、慌ててお礼を言い(?)、帰路に着いた。なんだか身体の芯の部分がまだむず痒く、中村にされたことを思い出して、それでいて、少しドキドキした。

 中村はというと、検査票にメモしたことを精緻にまとめ上げ、後日瑞稀に手渡した。

 絶対他の人に見せないで下さいねと、顔を赤くして念押ししている瑞希がおかしくて、中村はふふふと笑った。

 検査の次はトレーニングねとウインクすると、いえ、十分ですと瑞希は笑った。


 保健室の扉が開いた。


-fin-
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