イケメン二人に溺愛されてますが選べずにいたら両方に食べられてしまいました

うさみち

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第4話 会議室での秘めゴト

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「おっ、えらいな。星海ちゃん。今日は手作り弁当か?」

 若菜と同じ食堂にいる俺は、自然と若菜を視界に入れ、彼氏(仮)として、若菜を見守っていた。

 すると、若菜のところへやって来たんだ。
 若菜の好きな、吉野先輩が。

「は、はい。今日はお弁当なんです」
「お料理女子、いいな」
「……そ、そんなことないですよ」

 頬をピンク色に染める若菜。
 照れくさそうに、髪を耳にかけて、少しだけうつむいて。

 俺は、キューッと心が締め付けれられた。

「はぁ……」
「どうした、鈴木。ため息なんかついて。お前らしくもない」
「悪い悪い、ちょっと寝不足でさ」
「無理すんなよ」
「ありがとな」

 同期で俺と同じく営業職を務める石澤が、心配そうな顔で俺を見ている。

「ほんと、大丈夫だから。ありがとな。悪い、俺先行くわ」
「あぁ。お大事にな」

 ーー同期にも心配させて。
 修行が足りないぞ、俺。

 わかってたじゃないか。
 若菜が、吉野先輩に惚れてるってことは。
 承知のうえで付き合ってるんだから。
 俺が傷つく権利はない。
 
 ……それよりも、若菜を好きにさせることのほうが重要だ。

 俺は吉野先輩と若菜のテーブルへ息勇んで足を進める。

「吉野先輩、今日は社食なんすね」
「おう、鈴木。調子はどうだ? 最近営業成績いいじゃないか。頑張ってるな」
「あ、雅貴」
「おう。水澤さんもお疲れ様」
「鈴木くんも、お疲れ様~」
「鈴木はいつも気さくでいいな。同性ながら、感心するよ」

 と、吉野先輩が言う。

 ーーくそ、この爽やかイケメンめ。頼むから若菜にちょっかい出さないでくれよ。

 なんて、毒づくのはお門違いであって。
 俺たちの会社は営業職と事務職が隣室だから、自然と会う回数も増えて話す機会が多いのも事実。

 それに。
 吉野先輩が優しくてイケメンだなんて、周知の事実であって俺も痛いほど身に染みて知ってる。
 しかも、営業成績は俺よりも上だ。

 吉野先輩は、身長は俺と同じ180cmくらい。
 白のワイシャツが映える整った顔。
 髪は薄茶で柔らかい髪で、日々変わったアレンジ加えるオシャレな人だ。
 それに、まくった袖から見える血管の浮いた太すぎず細すぎずな適度な腕。
 ジムとか通ってんのかな。服も映える細マッチョだもんな。
 
 ーーなんにせよ、負けられない。

「若菜、食べ終わったら時間もらえるか? 休み中に申し訳ないんだけど、ちょっと相談したいことがあって」
「う、うん。いいよ」
「空いてるA103の会議室で待ってるから」
「わかった」
「すみません、先輩方、若菜借りてきます」
「それはいいんだが、鈴木、顔色悪いぞ。夏バテしないようにな」
「あ、ありがとうございます」

 俺は足早に会議室へ向かう。

 ーーどんだけ、爽やかなんだよ。
 どんだけ、気遣いできんだよ。

 俺と先輩には差があるってことを、嫌でも痛感させられる。

 ◆  ◆

「ええと……雅貴? 会議室に来たのはいいんだけどね? この体勢は何?」
「何って、若菜は俺のだっていうのを若菜に知ってもらうためにやってるんだけど?」
「でっ、でも……」
「大丈夫。鍵かけてるから誰も来られないし、この位置からじゃ誰からも見えない」

 どんな体制かって?
 壁まで若菜を追い込んで、身長を生かして若菜の頭の上の壁に、片肘ついてるだけだ。
 めちゃくちゃ顔と顔の距離が近い。
 やったことなかったけど、これが壁ドンってヤツか。

「あ……のね……、顔、近……」
「うん。わかってる」

 そして俺はもっと顔を近づける。
 わざと、若菜の耳元に。

「さっき吉野先輩と話してただろ? これは、そのお仕置きだ」
「お仕置きって、大したことしか話してないよ?」
「それでも、だーめ」

 俺はわざと耳元で囁く。
 若菜の耳は、どんどん赤くなっていく。
 心なしか、足も震えてる。

 あぁ、可愛すぎる。
 このまま抱きしめて、キスしたい。
 俺は必死に我慢してるけど、本当は、若菜のこと、めちゃくちゃにしたい。
 
「まさ、たか……。私、もう……」

 さすがに限界か、でも。

「今度また吉野先輩と話したら、お仕置きするからな」

 と言って、耳に軽くキスをした。
 本当は首元にしたいけど。
 そしたら歯止めが効かなくなるから。

「キャッ! 雅貴、何するの……」
「若菜は俺のだっていう、マーキング」
「うぅ~」

 足から崩れ落ちそうになる若菜を、腕と腰を支えて体勢を保たせる。

「今日も可愛い。好きだよ、若菜」
「……うう。押し、強いよ」
「知ってる。ホントは唇にキスしたいけど、俺、我慢してるから」
「ええっ」

 ーーキーンコーンカーンコーン

 ここで、始業のチャイムが鳴った。
 至福の時間もこれで終わりか。

「さ、俺は行くな」
「会議室、もう少し使えるように予約してあるから、その真っ赤な顔、おさまってから来いよ? 水澤さんには、俺が伝えとく」
「な、なんて言うの?」
「今若菜は身体が熱いから来られませんって」

 若菜の顔は、もっともっと赤くなる。

「や、やめてよ~」

 今にも泣きそうな若菜。
 俺、ほんとやばいかも。
 好きすぎて、やばい。

「嘘だよ。ちょっと雑務お願いしたから、時間かかるかもって言っとくから」
「うん……、わかった」
「じゃあな」
「うん、また、後で……っと、その前に」

 俺は若菜の左手を取り、甲に軽く口付ける。

「ひゃあっ!」
「ふはっ! いい声イタダキマシタ! それじゃな」

 俺はずるずると壁沿いに腰を抜かした若菜を置いて、足早に会議室を出て、ネクタイをギュッと締める。

 充電させてもらえたし。
 さぁ、切り替えねぇと。

 ーー1件でも多く、営業とってやる。

 吉野先輩に、負けてられねぇ。
 気合を入れて、営業バッグを持って。

「外回りしてきます!」

 と、上司に伝えて、やる気まんまんで外へ出て、煌々と光る爽やかな太陽を見た。

 ーーまるで俺と吉野先輩の差みたいな距離だな。

「日差し強え……それに、当然だけどまだまだ俺の手は届きやしない。でも……!」

 ◇

「清水商事の鈴木と申します! 少しお時間よろしいでしょうか」

 ーー負けてられねぇ。
 若菜から少しでも注目してもらえるように、吉野先輩を超えてやるんだ。


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