溺愛されていると信じておりました──が。もう、どうでもいいです。

ふまさ

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「この子ったら。どうしてもっと早く言ってくれなかったの?」

「そうだな。そしたら私たちも、あんな伯爵令息との婚約など、いくらでも解消してやったというのに」

 ウキウキと侯爵夫人と侯爵が口々にまくし立てる。それをニールが「静かにしろ」の一言で黙らせた。

「フィオナが起きるだろ」

 見ると、ニールと手を繋いだまま、フィオナは安心したように小さな寝息を立てていた。

「も、申し訳ございません。ただ、私たちはあなた様とフィオナとの関係を何も知らされていなくてですね。青天の霹靂とでも申しましょうか」
 
 興奮する侯爵に、侯爵夫人が続く。

「そうなのです。もうわたくしたち、嬉しくて嬉しくて」

 そんな侯爵たちを、ニールは鼻で笑った。

「娘がこんな目に遭ったばかりなのに、嬉しくて仕方がないか。とんだ親がいたものだな」

 侯爵たちが「け、決してそんなつもりでは」とびくっと身体を揺らす。

「もういい。出ていけ。お前たちとの会話は癇に障ってしょうがない」

 吐き捨てたニールに、侯爵夫人が食い下がった。

「そんなわけにはまいりません。フィオナは大事なわたくしたちの娘です。せめてあの子が目が覚めるまでは傍に」

「それをフィオナが望んでいるとでも?」

「当然です」

「首を絞められたのは自業自得だとぬかした貴様らにか?」

 侯爵夫人が「い、いえ。それは……」と目を泳がせてから、小さく口を開いた。

「ミックに首を絞められたなど、何かの間違いに決まっています。きっとミックとどうしても婚約解消したいフィオナが、嘘を……」

 とたん。
 ニールはすっと表情を凍らせ、侯爵夫人に刺すような視線を向けた。


「──フィオナがあいつに殺されようとしていたところを見た唯一の目撃者はわたしだ」
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