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昼休み。
クラスの違うネイトとは、いつも食堂で待ち合わせをしている。そのためエリンは一人、食堂を目指していた。その途中の廊下で、アデラを支えるネイトと出会した。
「ああ、エリン。ちょうどよかった。アデラに熱があるみたいだから、ぼくたちは帰るよ」
アデラは「……だから。あたしは平気だって」とネイトから離れようとするが、ネイトがそれを許すはずもなく。
「駄目だよ、ふらついているじゃないか。それじゃエリン。またね」
「……はい。どうぞ、お大事に」
小さく笑い、二人の背を見送るエリン。上手く笑えていただろうか。しばらくそんなことを考えながら突っ立っていたが、やがてゆっくりと足を動かしはじめた。
何だか食欲もなくなってしまい、どうしようもなく一人になりたい気分にかられたエリンは、人気のない場所を探し、校舎裏へとたどり着いた。
ぼんやりと立ち、空を見上げる。あいにくの曇り空は、何だかよけいに、心を曇らせるようだった。
「……あの、エリン様」
ふいに名を呼ばれたエリンは、驚きはしたものの、か細いその声色にまったく敵意がなかったので、ゆっくりと振り返ってみた。そこに立っていたのは、一人の女子生徒。何だかどこかで見たことがある。そう思い、思考を巡らす。すぐにエリンは、あ、と小さく声をあげた。
(……確か。以前、ネイトと付き合っていた伯爵令嬢……ですよね?)
同じ学年ではあるが、クラスは別なため、一度も話したことはない。別れて半年ほど経つが、少なくともエリンは、ネイトがこの伯爵令嬢と一緒にいるところは見たことがない。
エリンはわざわざ、人気のないところを選んで、ここにきた。たまたま見かけたから、声をかけた。その可能性もあるにはあるが──。
「あの、突然申し訳ありません。どうしても、エリン様に訊ねたいことがありまして……」
意を決して。そんな風に、伯爵令嬢はそう切り出した。
クラスの違うネイトとは、いつも食堂で待ち合わせをしている。そのためエリンは一人、食堂を目指していた。その途中の廊下で、アデラを支えるネイトと出会した。
「ああ、エリン。ちょうどよかった。アデラに熱があるみたいだから、ぼくたちは帰るよ」
アデラは「……だから。あたしは平気だって」とネイトから離れようとするが、ネイトがそれを許すはずもなく。
「駄目だよ、ふらついているじゃないか。それじゃエリン。またね」
「……はい。どうぞ、お大事に」
小さく笑い、二人の背を見送るエリン。上手く笑えていただろうか。しばらくそんなことを考えながら突っ立っていたが、やがてゆっくりと足を動かしはじめた。
何だか食欲もなくなってしまい、どうしようもなく一人になりたい気分にかられたエリンは、人気のない場所を探し、校舎裏へとたどり着いた。
ぼんやりと立ち、空を見上げる。あいにくの曇り空は、何だかよけいに、心を曇らせるようだった。
「……あの、エリン様」
ふいに名を呼ばれたエリンは、驚きはしたものの、か細いその声色にまったく敵意がなかったので、ゆっくりと振り返ってみた。そこに立っていたのは、一人の女子生徒。何だかどこかで見たことがある。そう思い、思考を巡らす。すぐにエリンは、あ、と小さく声をあげた。
(……確か。以前、ネイトと付き合っていた伯爵令嬢……ですよね?)
同じ学年ではあるが、クラスは別なため、一度も話したことはない。別れて半年ほど経つが、少なくともエリンは、ネイトがこの伯爵令嬢と一緒にいるところは見たことがない。
エリンはわざわざ、人気のないところを選んで、ここにきた。たまたま見かけたから、声をかけた。その可能性もあるにはあるが──。
「あの、突然申し訳ありません。どうしても、エリン様に訊ねたいことがありまして……」
意を決して。そんな風に、伯爵令嬢はそう切り出した。
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