可愛い姉より、地味なわたしを選んでくれた王子様。と思っていたら、単に姉と間違えただけのようです。

ふまさ

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 曲が止まり、しばらくして。
 広間が──特に令嬢たちがざわつきはじめた。

「あ、見て。キース殿下よ!」

「お姿を拝見するのは一年ぶりだわ。相変わらず、素敵ね」

 階段を下ってくる長身の男の名は、キース。この国の第一王子である。今回の舞踏会は、友好国での留学を終え、一年ぶりに帰国してきたキースの祝いも兼ねていた。

 愛らしい見た目のヒューゴーとは違い、二つ年上のキースは、男らしくも綺麗な見た目をしている。キースは大人たちと会話を交わしたあと、アデラと複数の男たちと一緒にいるヒューゴーの元へと向かった。アデラが頬を染め、綺麗に微笑む。

「はじめまして、キース殿下」

「ああ、はじめまして。きみがヒューゴーの婚約者だね」

 アデラが答える前に、ヒューゴーが口を開いた。

「違うよ。すぐにそうなるだろうけど」

 帰国したばかりで、ヒューゴーに婚約者ができたということしか耳にしていなかったキースは「いったい、何の話だ?」と、首を傾げた。ヒューゴーは「あの人が、ひと月限りの僕の婚約者だよ」と、離れた場所に立つリネットを指差した。ますます疑問を募らせるキースに、ヒューゴーは経緯を語った。そして、全てを聞き終えたキースは顔を青くした。

「お、お前……そんな失礼なことを言ったのか!」

 ヒューゴーは、キョトンとした。何が失礼か、まるでわかっていない様子だ。キースが心底呆れていると、今度はアデラが口を開いた。

「お気遣い、ありがとうございます。でも妹なら大丈夫ですよ。慣れていますから」

「……どういう意味だ?」

「妹を恋愛対象として見れない殿方は、たくさんいますもの。ね、みなさん?」

 アデラが、取り巻きの男たちに語りかける。男たちは、苦笑した。

「まあ、確かに」

「アデラ様と違い、華やかさにかけているというのもありますが……何と言いますか、リネット様はお強いですからねえ」

 キースが「強い?」と片眉をぴくりとあげた。

「ええ。あの方は、学園で開催されたフェンシング大会で優勝したこともあるほどの腕前でして」

「そうそう。何でも、元婚約者が復縁をしつこく迫ってきて逃げていたご令嬢を、リネット様が助けたとか」

「ああ、知ってる。その場で男を気絶させたんだろ?」

「産まれてくる性別、どう考えても間違えたよなあ。おまけに勉学も学年で一、二を争うほどで、つけいる隙がないというか」

 アデラが、ふふ、と笑う。

「ね、キース殿下。だからどうか、ヒューゴー殿下を責めないでくださいな」

 キースは「……きみは、妹が悪く言われているのに、そんな風に笑うのだな」と、不快に眉をひそめた。予想外の反応に、アデラは焦った。

「え? あ、あの。そういうわけじゃ……」

「いや、もう結構。よくわかった。わたしはリネット嬢のところにいくので、これで失礼する」

 手を伸ばすアデラに構わず、キースはさっさとリネットのところに向かった。
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