5 / 20
5
しおりを挟む
曲が止まり、しばらくして。
広間が──特に令嬢たちがざわつきはじめた。
「あ、見て。キース殿下よ!」
「お姿を拝見するのは一年ぶりだわ。相変わらず、素敵ね」
階段を下ってくる長身の男の名は、キース。この国の第一王子である。今回の舞踏会は、友好国での留学を終え、一年ぶりに帰国してきたキースの祝いも兼ねていた。
愛らしい見た目のヒューゴーとは違い、二つ年上のキースは、男らしくも綺麗な見た目をしている。キースは大人たちと会話を交わしたあと、アデラと複数の男たちと一緒にいるヒューゴーの元へと向かった。アデラが頬を染め、綺麗に微笑む。
「はじめまして、キース殿下」
「ああ、はじめまして。きみがヒューゴーの婚約者だね」
アデラが答える前に、ヒューゴーが口を開いた。
「違うよ。すぐにそうなるだろうけど」
帰国したばかりで、ヒューゴーに婚約者ができたということしか耳にしていなかったキースは「いったい、何の話だ?」と、首を傾げた。ヒューゴーは「あの人が、ひと月限りの僕の婚約者だよ」と、離れた場所に立つリネットを指差した。ますます疑問を募らせるキースに、ヒューゴーは経緯を語った。そして、全てを聞き終えたキースは顔を青くした。
「お、お前……そんな失礼なことを言ったのか!」
ヒューゴーは、キョトンとした。何が失礼か、まるでわかっていない様子だ。キースが心底呆れていると、今度はアデラが口を開いた。
「お気遣い、ありがとうございます。でも妹なら大丈夫ですよ。慣れていますから」
「……どういう意味だ?」
「妹を恋愛対象として見れない殿方は、たくさんいますもの。ね、みなさん?」
アデラが、取り巻きの男たちに語りかける。男たちは、苦笑した。
「まあ、確かに」
「アデラ様と違い、華やかさにかけているというのもありますが……何と言いますか、リネット様はお強いですからねえ」
キースが「強い?」と片眉をぴくりとあげた。
「ええ。あの方は、学園で開催されたフェンシング大会で優勝したこともあるほどの腕前でして」
「そうそう。何でも、元婚約者が復縁をしつこく迫ってきて逃げていたご令嬢を、リネット様が助けたとか」
「ああ、知ってる。その場で男を気絶させたんだろ?」
「産まれてくる性別、どう考えても間違えたよなあ。おまけに勉学も学年で一、二を争うほどで、つけいる隙がないというか」
アデラが、ふふ、と笑う。
「ね、キース殿下。だからどうか、ヒューゴー殿下を責めないでくださいな」
キースは「……きみは、妹が悪く言われているのに、そんな風に笑うのだな」と、不快に眉をひそめた。予想外の反応に、アデラは焦った。
「え? あ、あの。そういうわけじゃ……」
「いや、もう結構。よくわかった。わたしはリネット嬢のところにいくので、これで失礼する」
手を伸ばすアデラに構わず、キースはさっさとリネットのところに向かった。
広間が──特に令嬢たちがざわつきはじめた。
「あ、見て。キース殿下よ!」
「お姿を拝見するのは一年ぶりだわ。相変わらず、素敵ね」
階段を下ってくる長身の男の名は、キース。この国の第一王子である。今回の舞踏会は、友好国での留学を終え、一年ぶりに帰国してきたキースの祝いも兼ねていた。
愛らしい見た目のヒューゴーとは違い、二つ年上のキースは、男らしくも綺麗な見た目をしている。キースは大人たちと会話を交わしたあと、アデラと複数の男たちと一緒にいるヒューゴーの元へと向かった。アデラが頬を染め、綺麗に微笑む。
「はじめまして、キース殿下」
「ああ、はじめまして。きみがヒューゴーの婚約者だね」
アデラが答える前に、ヒューゴーが口を開いた。
「違うよ。すぐにそうなるだろうけど」
帰国したばかりで、ヒューゴーに婚約者ができたということしか耳にしていなかったキースは「いったい、何の話だ?」と、首を傾げた。ヒューゴーは「あの人が、ひと月限りの僕の婚約者だよ」と、離れた場所に立つリネットを指差した。ますます疑問を募らせるキースに、ヒューゴーは経緯を語った。そして、全てを聞き終えたキースは顔を青くした。
「お、お前……そんな失礼なことを言ったのか!」
ヒューゴーは、キョトンとした。何が失礼か、まるでわかっていない様子だ。キースが心底呆れていると、今度はアデラが口を開いた。
「お気遣い、ありがとうございます。でも妹なら大丈夫ですよ。慣れていますから」
「……どういう意味だ?」
「妹を恋愛対象として見れない殿方は、たくさんいますもの。ね、みなさん?」
アデラが、取り巻きの男たちに語りかける。男たちは、苦笑した。
「まあ、確かに」
「アデラ様と違い、華やかさにかけているというのもありますが……何と言いますか、リネット様はお強いですからねえ」
キースが「強い?」と片眉をぴくりとあげた。
「ええ。あの方は、学園で開催されたフェンシング大会で優勝したこともあるほどの腕前でして」
「そうそう。何でも、元婚約者が復縁をしつこく迫ってきて逃げていたご令嬢を、リネット様が助けたとか」
「ああ、知ってる。その場で男を気絶させたんだろ?」
「産まれてくる性別、どう考えても間違えたよなあ。おまけに勉学も学年で一、二を争うほどで、つけいる隙がないというか」
アデラが、ふふ、と笑う。
「ね、キース殿下。だからどうか、ヒューゴー殿下を責めないでくださいな」
キースは「……きみは、妹が悪く言われているのに、そんな風に笑うのだな」と、不快に眉をひそめた。予想外の反応に、アデラは焦った。
「え? あ、あの。そういうわけじゃ……」
「いや、もう結構。よくわかった。わたしはリネット嬢のところにいくので、これで失礼する」
手を伸ばすアデラに構わず、キースはさっさとリネットのところに向かった。
467
あなたにおすすめの小説
【完結】義家族に婚約者も、家も奪われたけれど幸せになります〜義妹達は華麗に笑う
鏑木 うりこ
恋愛
お姉様、お姉様の婚約者、私にくださらない?地味なお姉様より私の方がお似合いですもの!
お姉様、お姉様のお家。私にくださらない?お姉様に伯爵家の当主なんて務まらないわ
お母様が亡くなって喪も明けないうちにやってきた新しいお義母様には私より一つしか違わない双子の姉妹を連れて来られました。
とても美しい姉妹ですが、私はお義母様と義妹達に辛く当たられてしまうのです。
この話は特殊な形で進んで行きます。表(ベアトリス視点が多い)と裏(義母・義妹視点が多い)が入り乱れますので、混乱したら申し訳ないですが、書いていてとても楽しかったです。
お姉様は嘘つきです! ~信じてくれない毒親に期待するのをやめて、私は新しい場所で生きていく! と思ったら、黒の王太子様がお呼びです?
朱音ゆうひ@『桜の嫁入り』発売中です
恋愛
男爵家の令嬢アリシアは、姉ルーミアに「悪魔憑き」のレッテルをはられて家を追い出されようとしていた。
何を言っても信じてくれない毒親には、もう期待しない。私は家族のいない新しい場所で生きていく!
と思ったら、黒の王太子様からの招待状が届いたのだけど?
別サイトにも投稿してます(https://ncode.syosetu.com/n0606ip/)
【完結】私の婚約者の、自称健康な幼なじみ。
❄️冬は つとめて
恋愛
「ルミナス、すまない。カノンが…… 」
「大丈夫ですの? カノン様は。」
「本当にすまない。ルミナス。」
ルミナスの婚約者のオスカー伯爵令息は、何時ものようにすまなそうな顔をして彼女に謝った。
「お兄様、ゴホッゴホッ! ルミナス様、ゴホッ! さあ、遊園地に行きましょ、ゴボッ!! 」
カノンは血を吐いた。
婚約者を奪われた私が悪者扱いされたので、これから何が起きても知りません
天宮有
恋愛
子爵令嬢の私カルラは、妹のミーファに婚約者ザノークを奪われてしまう。
ミーファは全てカルラが悪いと言い出し、束縛侯爵で有名なリックと婚約させたいようだ。
屋敷を追い出されそうになって、私がいなければ領地が大変なことになると説明する。
家族は信じようとしないから――これから何が起きても、私は知りません。
妹は病弱アピールで全てを奪い去っていく
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令嬢マチルダには妹がいる。
妹のビヨネッタは幼い頃に病気で何度か生死の境を彷徨った事実がある。
そのために両親は過保護になりビヨネッタばかり可愛がった。
それは成長した今も変わらない。
今はもう健康なくせに病弱アピールで周囲を思い通り操るビヨネッタ。
その魔の手はマチルダに求婚したレオポルドにまで伸びていく。
私を家から追い出した妹達は、これから後悔するようです
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私サフィラよりも、妹エイダの方が優秀だった。
それは全て私の力によるものだけど、そのことを知っているのにエイダは姉に迷惑していると言い広めていく。
婚約者のヴァン王子はエイダの発言を信じて、私は婚約破棄を言い渡されてしまう。
その後、エイダは私の力が必要ないと思い込んでいるようで、私を家から追い出す。
これから元家族やヴァンは後悔するけど、私には関係ありません。
お姉さまに婚約者を奪われたけど、私は辺境伯と結ばれた~無知なお姉さまは辺境伯の地位の高さを知らない~
マルローネ
恋愛
サイドル王国の子爵家の次女であるテレーズは、長女のマリアに婚約者のラゴウ伯爵を奪われた。
その後、テレーズは辺境伯カインとの婚約が成立するが、マリアやラゴウは所詮は地方領主だとしてバカにし続ける。
しかし、無知な彼らは知らなかったのだ。西の国境線を領地としている辺境伯カインの地位の高さを……。
貴族としての基本的な知識が不足している二人にテレーズは失笑するのだった。
そしてその無知さは取り返しのつかない事態を招くことになる──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる