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「リネット嬢」
背後から呼ばれ、リネットが振り向く。そこには、キースがいた。そこにいるだけで、人の目を引く容姿をしているキースに、リネットも知らぬまに鼓動を高鳴らせていた。
「弟から話しは聞いた。この度は、とんだご無礼を」
頭を下げるキースに、リネットは驚愕した。同時に、姉と間違えられたこと。ひと月だけヒューゴーの婚約者になった経緯など。全部聞いたんだろうな。そう思うと、ひどく惨めにもなり、リネットは薄く笑った。
「とんでもないです。こちらこそ、父が無理を言いまして。ですが、安心してください。わたしがヒューゴー殿下に相応しくないのは承知しておりますので、ひと月後には、間違いなく姉と婚約できますよ」
キースが頭をあげ、口を開こうとした。だが。
「相応しくないのは、ヒューゴー殿下です!」
「そうですよ! いまさらリネット様に婚約を申し込んできても、私たちが許さないんだから!」
リネットの学友たちが騒ぐ。慌てたのは、リネットだ。あんなのでもヒューゴーは王族だ。そのヒューゴーの兄の前でヒューゴーを悪く言うのは、色々と不味いだろう。「あ、あの」と、口を挟もうとしたリネットだったが。
「……あなたは、沢山の方に慕われているのだな」
優しく囁かれた声音に、リネットは思わず、キースを見た。穏やかな双眸とぶつかる。
──一方。
見つめ合うリネットとキースの姿に、アデラがこぶしを握り、鋭い視線を向けていた。後ろから、ヒューゴーが「どうしたの?」と声をかけると、アデラは瞬時に笑みをたたえ、ゆっくりと振り返った。
「すみません。私、ちょっとキース殿下とお話してきます。先ほどのこと、誤解されているようでしたので」
「? うん。わかった」
ヒューゴーに見送られながら、アデラは早足でキースのところへと足を動かしはじめた。その背を見ながら、ヒューゴーはふと、アデラの取り巻きたちに質問をぶつけてみた。
「きみたちは、僕がアデラ嬢に婚約を申し込もうとしたこと、知ってるんだよね?」
「ええ」
「僕は、いわゆる恋敵じゃないの? 僕が憎いとか思わないの?」
一人が「はあ。特には」と緩く答える。他の四人も、同様の顔をしている。ヒューゴーは、頭に疑問符を浮かべた。
「けど、きみたちもアデラ嬢を好いているのではないの?」
「ええ、まあ……可愛い方ですし、お話する分には楽しい方なので。いずれぼくたちは、政略結婚する身ですし、今のうちだけでも好みの女性と楽しんでおきたいなといったところでしょうか」
「確かに。それに結婚したいかと言われたら、微妙かな、なんて。その前に、相手にされないでしょうけど」
はは。男たちは笑い合うが、ヒューゴーはそれどころではない。あんなに可愛くて、小さくて、話上手。家柄も申し分ない。なのに結婚するのは微妙なんて。
「ど、どうして?」
男たちが口ごもる。
「……それはちょっと、ぼくたちの口からは」
「と、とにかく。殿下たちのことは応援してますから」
「そうですよ。ひと月後、でしたっけ? 正式にアデラ様と婚約するんですよね?」
ヒューゴーは「そうだけどぉ……」と、頬を膨らませた。
背後から呼ばれ、リネットが振り向く。そこには、キースがいた。そこにいるだけで、人の目を引く容姿をしているキースに、リネットも知らぬまに鼓動を高鳴らせていた。
「弟から話しは聞いた。この度は、とんだご無礼を」
頭を下げるキースに、リネットは驚愕した。同時に、姉と間違えられたこと。ひと月だけヒューゴーの婚約者になった経緯など。全部聞いたんだろうな。そう思うと、ひどく惨めにもなり、リネットは薄く笑った。
「とんでもないです。こちらこそ、父が無理を言いまして。ですが、安心してください。わたしがヒューゴー殿下に相応しくないのは承知しておりますので、ひと月後には、間違いなく姉と婚約できますよ」
キースが頭をあげ、口を開こうとした。だが。
「相応しくないのは、ヒューゴー殿下です!」
「そうですよ! いまさらリネット様に婚約を申し込んできても、私たちが許さないんだから!」
リネットの学友たちが騒ぐ。慌てたのは、リネットだ。あんなのでもヒューゴーは王族だ。そのヒューゴーの兄の前でヒューゴーを悪く言うのは、色々と不味いだろう。「あ、あの」と、口を挟もうとしたリネットだったが。
「……あなたは、沢山の方に慕われているのだな」
優しく囁かれた声音に、リネットは思わず、キースを見た。穏やかな双眸とぶつかる。
──一方。
見つめ合うリネットとキースの姿に、アデラがこぶしを握り、鋭い視線を向けていた。後ろから、ヒューゴーが「どうしたの?」と声をかけると、アデラは瞬時に笑みをたたえ、ゆっくりと振り返った。
「すみません。私、ちょっとキース殿下とお話してきます。先ほどのこと、誤解されているようでしたので」
「? うん。わかった」
ヒューゴーに見送られながら、アデラは早足でキースのところへと足を動かしはじめた。その背を見ながら、ヒューゴーはふと、アデラの取り巻きたちに質問をぶつけてみた。
「きみたちは、僕がアデラ嬢に婚約を申し込もうとしたこと、知ってるんだよね?」
「ええ」
「僕は、いわゆる恋敵じゃないの? 僕が憎いとか思わないの?」
一人が「はあ。特には」と緩く答える。他の四人も、同様の顔をしている。ヒューゴーは、頭に疑問符を浮かべた。
「けど、きみたちもアデラ嬢を好いているのではないの?」
「ええ、まあ……可愛い方ですし、お話する分には楽しい方なので。いずれぼくたちは、政略結婚する身ですし、今のうちだけでも好みの女性と楽しんでおきたいなといったところでしょうか」
「確かに。それに結婚したいかと言われたら、微妙かな、なんて。その前に、相手にされないでしょうけど」
はは。男たちは笑い合うが、ヒューゴーはそれどころではない。あんなに可愛くて、小さくて、話上手。家柄も申し分ない。なのに結婚するのは微妙なんて。
「ど、どうして?」
男たちが口ごもる。
「……それはちょっと、ぼくたちの口からは」
「と、とにかく。殿下たちのことは応援してますから」
「そうですよ。ひと月後、でしたっけ? 正式にアデラ様と婚約するんですよね?」
ヒューゴーは「そうだけどぉ……」と、頬を膨らませた。
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