聖女のわたしを隣国に売っておいて、いまさら「母国が滅んでもよいのか」と言われましても。

ふまさ

文字の大きさ
14 / 31

14

 目を覚ましたアーリンの視界は、ひどく薄暗かった。それもそのはずで。灯りはいくつもの蝋燭だけ。埃っぽい部屋に窓はなく、今が朝か昼か、夜なのかもわからない。

「ようやくお目覚め?」

 頭上から降ってきたのは、ブリアナの声色。頭が割れそうなほどの頭痛のなか、それでも必死に身体を起こそうとして、ようやくアーリンは気付いた。両手足が、縄で縛られていることに。どういうつもりですか。問いかけようと、頭をあげたアーリンは固まった。

 アーリンを見下ろすように立っていたのは、ブリアナだけではなかった。ブリアナの左右に、男が二人。年は、二十代後半といったところか。汚れた服を着て、下品な笑みを浮かべている彼らは、貴族では決してないだろう。

 ブリアナがどうするつもりか、まだわからない。だが、楽観視できるような状況でないことだけは、嫌でも痛感するしかなかった。

「……もう一度、聞きます。わたしを、どうするつもりですか」

 うふふ。
 青ざめるアーリンに、ブリアナは上機嫌で笑った。

「あなたの存在意義をね。ここでなくしてしまおうと思いまして」

「……どういう」

「あなたの存在意義なんて、聖女であることだけでしょ? 他には、なーんにもないですわ」

 アーリンの頭に疑問符が浮かぶ。ここまで聞いても、ブリアナの意図がわからない。それを察したブリアナが、本当にお馬鹿さんね、と膝をついた。顔だけあげたアーリンの顎を掴む。

「聖女とは、処女でなくなれば、聖女ではなくなる。そうですわよね?」

 にやっ。
 ブリアナが気味の悪い笑みを浮かべる。そんなブリアナの背後に立つ男たちも、似たような笑みを浮かべていた。

 アーリンはぞっとし、身体を震わせはじめた。嫌な考えを振り払うように、気付けば声を張り上げていた。

「……ちが、違います! そんな話し、聞いたこともありません……だって、歴代聖女の中には、結婚していた方もいて……っ」

「あらあら、見苦しいこと。ですが、それが本当かどうかは、後で確かめればよいこと──ですわよねえ?」

 ブリアナは立ち上がり、男二人に目線を向けた。男の一人が、ですね、と笑った。

「それよりお嬢様。本当に、この女を犯るだけで金が貰えるんで?」

「もちろんですわ。その代わり、身の程をわきまえるよう、徹底的にお願いしますわよ。二度と人の婚約者に色目など使えないように……ね」

 ブリアナは男からアーリンに視線を移すと、殺意を込めた双眸を向けた。

あなたにおすすめの小説

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか

あーもんど
恋愛
聖女のオリアナが神に祈りを捧げている最中、ある女性が現れ、こう言う。 「貴方には、これから裁きを受けてもらうわ!」 突然の宣言に驚きつつも、オリアナはワケを聞く。 すると、出てくるのはただの言い掛かりに過ぎない言い分ばかり。 オリアナは何とか理解してもらおうとするものの、相手は聞く耳持たずで……? 最終的には「神のお告げよ!」とまで言われ、さすがのオリアナも反抗を決意! 「私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか」 さて、聖女オリアナを怒らせた彼らの末路は? ◆小説家になろう様でも掲載中◆ →短編形式で投稿したため、こちらなら一気に最後まで読めます

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

堅実に働いてきた私を無能と切り捨てたのはあなた達ではありませんか。

木山楽斗
恋愛
聖女であるクレメリアは、謙虚な性格をしていた。 彼女は、自らの成果を誇示することもなく、淡々と仕事をこなしていたのだ。 そんな彼女を新たに国王となったアズガルトは軽んじていた。 彼女の能力は大したことはなく、何も成し遂げられない。そう判断して、彼はクレメリアをクビにした。 しかし、彼はすぐに実感することになる。クレメリアがどれ程重要だったのかを。彼女がいたからこそ、王国は成り立っていたのだ。 だが、気付いた時には既に遅かった。クレメリアは既に隣国に移っており、アズガルトからの要請など届かなかったのだ。

【結婚式当日に捨てられました】身代わりの役目は不要だと姉を選んだ王子は、隣国皇帝が私を国ごと奪いに来てから後悔しても手遅れです。

唯崎りいち
恋愛
結婚式当日、私は“替え玉”として捨てられた。 本物の姉が戻ってきたから、もう必要ないのだと。 けれど—— 私こそが、誰も知らなかった“本物の価値”を持っていた。 世界でただ一人、すべてを癒す力。 そして、その価値を知るただ一人の人が、皇帝となって私を迎えに来る。 これは、すべてを失った少女が、本当に必要とされる場所へ辿り着く物語。

現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。

和泉鷹央
恋愛
 聖女は十年しか生きられない。  この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。  それは期間満了後に始まる約束だったけど――  一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。  二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。  ライラはこの契約を承諾する。  十年後。  あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。  そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。  こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。  そう思い、ライラは聖女をやめることにした。  他の投稿サイトでも掲載しています。

リストラされた聖女 ~婚約破棄されたので結界維持を解除します

青の雀
恋愛
キャロラインは、王宮でのパーティで婚約者のジークフリク王太子殿下から婚約破棄されてしまい、王宮から追放されてしまう。 キャロラインは、国境を1歩でも出れば、自身が張っていた結界が消えてしまうのだ。 結界が消えた王国はいかに?

辺境伯聖女は城から追い出される~もう王子もこの国もどうでもいいわ~

サイコちゃん
恋愛
聖女エイリスは結界しか張れないため、辺境伯として国境沿いの城に住んでいた。しかし突如王子がやってきて、ある少女と勝負をしろという。その少女はエイリスとは違い、聖女の資質全てを備えていた。もし負けたら聖女の立場と爵位を剥奪すると言うが……あることが切欠で全力を発揮できるようになっていたエイリスはわざと負けることする。そして国は真の聖女を失う――