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目を覚ましたアーリンの視界は、ひどく薄暗かった。それもそのはずで。灯りはいくつもの蝋燭だけ。埃っぽい部屋に窓はなく、今が朝か昼か、夜なのかもわからない。
「ようやくお目覚め?」
頭上から降ってきたのは、ブリアナの声色。頭が割れそうなほどの頭痛のなか、それでも必死に身体を起こそうとして、ようやくアーリンは気付いた。両手足が、縄で縛られていることに。どういうつもりですか。問いかけようと、頭をあげたアーリンは固まった。
アーリンを見下ろすように立っていたのは、ブリアナだけではなかった。ブリアナの左右に、男が二人。年は、二十代後半といったところか。汚れた服を着て、下品な笑みを浮かべている彼らは、貴族では決してないだろう。
ブリアナがどうするつもりか、まだわからない。だが、楽観視できるような状況でないことだけは、嫌でも痛感するしかなかった。
「……もう一度、聞きます。わたしを、どうするつもりですか」
うふふ。
青ざめるアーリンに、ブリアナは上機嫌で笑った。
「あなたの存在意義をね。ここでなくしてしまおうと思いまして」
「……どういう」
「あなたの存在意義なんて、聖女であることだけでしょ? 他には、なーんにもないですわ」
アーリンの頭に疑問符が浮かぶ。ここまで聞いても、ブリアナの意図がわからない。それを察したブリアナが、本当にお馬鹿さんね、と膝をついた。顔だけあげたアーリンの顎を掴む。
「聖女とは、処女でなくなれば、聖女ではなくなる。そうですわよね?」
にやっ。
ブリアナが気味の悪い笑みを浮かべる。そんなブリアナの背後に立つ男たちも、似たような笑みを浮かべていた。
アーリンはぞっとし、身体を震わせはじめた。嫌な考えを振り払うように、気付けば声を張り上げていた。
「……ちが、違います! そんな話し、聞いたこともありません……だって、歴代聖女の中には、結婚していた方もいて……っ」
「あらあら、見苦しいこと。ですが、それが本当かどうかは、後で確かめればよいこと──ですわよねえ?」
ブリアナは立ち上がり、男二人に目線を向けた。男の一人が、ですね、と笑った。
「それよりお嬢様。本当に、この女を犯るだけで金が貰えるんで?」
「もちろんですわ。その代わり、身の程をわきまえるよう、徹底的にお願いしますわよ。二度と人の婚約者に色目など使えないように……ね」
ブリアナは男からアーリンに視線を移すと、殺意を込めた双眸を向けた。
「ようやくお目覚め?」
頭上から降ってきたのは、ブリアナの声色。頭が割れそうなほどの頭痛のなか、それでも必死に身体を起こそうとして、ようやくアーリンは気付いた。両手足が、縄で縛られていることに。どういうつもりですか。問いかけようと、頭をあげたアーリンは固まった。
アーリンを見下ろすように立っていたのは、ブリアナだけではなかった。ブリアナの左右に、男が二人。年は、二十代後半といったところか。汚れた服を着て、下品な笑みを浮かべている彼らは、貴族では決してないだろう。
ブリアナがどうするつもりか、まだわからない。だが、楽観視できるような状況でないことだけは、嫌でも痛感するしかなかった。
「……もう一度、聞きます。わたしを、どうするつもりですか」
うふふ。
青ざめるアーリンに、ブリアナは上機嫌で笑った。
「あなたの存在意義をね。ここでなくしてしまおうと思いまして」
「……どういう」
「あなたの存在意義なんて、聖女であることだけでしょ? 他には、なーんにもないですわ」
アーリンの頭に疑問符が浮かぶ。ここまで聞いても、ブリアナの意図がわからない。それを察したブリアナが、本当にお馬鹿さんね、と膝をついた。顔だけあげたアーリンの顎を掴む。
「聖女とは、処女でなくなれば、聖女ではなくなる。そうですわよね?」
にやっ。
ブリアナが気味の悪い笑みを浮かべる。そんなブリアナの背後に立つ男たちも、似たような笑みを浮かべていた。
アーリンはぞっとし、身体を震わせはじめた。嫌な考えを振り払うように、気付けば声を張り上げていた。
「……ちが、違います! そんな話し、聞いたこともありません……だって、歴代聖女の中には、結婚していた方もいて……っ」
「あらあら、見苦しいこと。ですが、それが本当かどうかは、後で確かめればよいこと──ですわよねえ?」
ブリアナは立ち上がり、男二人に目線を向けた。男の一人が、ですね、と笑った。
「それよりお嬢様。本当に、この女を犯るだけで金が貰えるんで?」
「もちろんですわ。その代わり、身の程をわきまえるよう、徹底的にお願いしますわよ。二度と人の婚約者に色目など使えないように……ね」
ブリアナは男からアーリンに視線を移すと、殺意を込めた双眸を向けた。
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