はずれのわたしで、ごめんなさい。

ふまさ

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「あら、アリシア」

「やあ、こんにちは」

 別の人気のないところを探して廊下を歩いていると、一歳年のはなれた姉のベティと、姉の婚約者である公爵家令息のレックスと出くわした。レックスはベティと同じ年だが、そうとは思えないほど大人びた印象を受ける。

「ご、ごきげんよう、お姉様。レックス様」

 アリシアが頭を下げる。姉のベティだけなら緊張もしないが、数度しか会話したことのないレックスが一緒なら、話しは別だ。めったに話しかけられることのないアリシアは、十五歳で学園に入学してからも、人見知りが直ることはなかった。

(……いつ見ても、美男美女でお似合いだなあ)

 頭を下げたまま、ちらっとベティとレックスを見る。悔しいけれど、お似合いだわ。そうレックスに憧れていた令嬢が口にしたのを聞いたことがある。確かに。アリシアも心でうなずいた。

「アリシア、昼食はもうすませたの?」

 ベティが心配そうにたずねる。「はい」とアリシアが答えると、ベティは少し乱れていたアリシアの髪をさっと整えた。

「そう。ちゃんと食べた?」

「大丈夫です、お姉様」

 その光景を見ていたレックスは「ベティは本当に、妹を大切にしているんだね」と、嬉しそうに笑った。

「もちろんです。だって、たった一人の大切な妹ですから」

 アリシアが照れくさそうに、けれど何処か嬉しそうに頬を緩める。

 ──そう。姉はたった一人、この世でわたしを愛してくれる存在。大袈裟でも何でもなく、姉がいなければわたしはとっくに死んでいたかもしれないのだ。

 その場で挨拶し、姉たちと別れたアリシアは、次の授業がはじまるまで一人になれる場所を探して再び歩きはじめ──ふと、お腹をおさえた。

(……お腹いっぱい食べたけど、あんまり入らなかったな。やっぱり、胃が小さくなっているのかなあ)

 それでも夜になれば、お腹は性懲りもなくすく。今日はどうかな。父様の機嫌、悪くないといいなと願いながら、アリシアは窓から青く澄んだ夏の終わりの空を見上げた。

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