大好きだったあなたはもう、嫌悪と恐怖の対象でしかありません。

ふまさ

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「……数日前から、ルイスの様子がおかしいことには気付いていた……しかし、ジャスパーが言ったのだ。マリー嬢のくれたクッキーの数がジャスパーの方が多かったことに拗ねているのだと……」

 シュルツ伯爵が独白のように呟きはじめる。ジャスパーが「……父上?」と呼び掛けるも、まるで聞こえていないようだった。

「そんな……拗ねている風ではないと思ったが、ジャスパーが言うなら、そうなのだと……でもそれは決して、ジャスパーを一番に信頼し、愛していたからではないんだ」

 シュルツ伯爵は顔をあげ、ルイスを見た。

「……ジャスパーはもう、将来は安泰だと思っていた。けれど、お前は違うだろう? 内気で気弱なお前が、私は一番心配で……」

「心配……? ぼくを、お父様がですか?」

 心底不思議そうなルイスに、シュルツ伯爵は苦笑した。

「……そうか。信じられないか。でなければ、私に相談する前に、ランゲ公爵の元へ行くわけがないな……」

 シュルツ伯爵はランゲ公爵の前まで移動すると「ルイスをお願いします」と頭をさげた。深くうなずくランゲ公爵にほっと胸を撫で下ろしてから、ジャスパーへと視線を投げた。

「──ジャスパー。お前の言うことが真実であろうとなかろうと、我が伯爵家はおしまいだよ」

「…………へ?」

「公爵令嬢に手をあげようとした時点で、もう我が家の行く末は決まっていた。そんなこともわからなかったのか」

「……そんな。う、嘘ですよね?」

「嘘なものか。ランゲ公爵がその気になれば、我が家など簡単に潰せる。それをお前は、ベラベラと偉そうに……っ」

「…………っ」

 ジャスパーはひきつった声をあげ、ランゲ公爵にぼそぼそと問いかけた。

「……ランゲ公爵はそんな、権力を振りかざすことなどなさいませんよね……? とてもお優しい方ですから……」

 ランゲ公爵がじっとジャスパーを見下ろす。ジャスパーは、ごくっと息を呑んだ。

「──私は貴様なんぞより、ルイスたちの言うことを信じる。というより、お前がしたという確信を持っていると言い直してもいい」

「な、何を根拠に……」

 根拠か。
 ランゲ公爵はつかの間マリーに目を向けてから、ジャスパーに視線を戻した。

「貴様になど教えるか。屑め」

 低音で凄まれ、ジャスパーは固まった。

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