聖女の婚約者と妹は、聖女の死を望んでいる。

ふまさ

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 謁見の間の、玉座の前まで連行された二人は、猿ぐつわだけは外されたものの、手枷はそのままだった。

 リビーがぷはっと息を吐き「ひどい! あたしが何をしたっていうの?!」と、叫ぶ。だが、隣にいるアントンは、青ざめた顔で沈黙している。

 十数人がすでに待機している謁見の間。その中に、アントンから見て右側に、ゴーサンス伯爵が──つまりは、アントンの父親が立っていたのだ。殺意のこもった双眸をこちらに向けながら。

 遅れて、クリフ、エリノア。そして国王も姿を現した。三段高い位置にある玉座に腰掛けた国王は、さて、とさっそく口火を切った。

「アントン・ゴーサンス。聖女候補リビー。お前たちは、ここに呼び出された理由に、心当たりはあるか?」

 国王の第一声に、アントンは「は、はい!」と震えながら返答した。

「謹慎処分の身でありながら、焦るあまり、勝手な行動をとってしまいました。まことに申し訳ありません!」

 手枷をつけたまま、頭を深く下げる。横でリビーが「そうです。すべては、アントン様が仕組んだことです!」と声を荒げた。

「あたしは、アントン様が謹慎処分を受けていたなんて、ぜんぜん知りませんでした」

 アントンが、刺すような鋭い視線をリビーに向けた。それに気付いているのかいないのか。リビーは、アントンの方を見ようともしない。

「……婚約者と姉を裏切ってまで愛し合っていた二人の末路が、これか。なんと醜い」

 心底呆れたように吐き捨てられた国王の科白に、二人は凍りついたように動きを止めた。

「わ、わかりました。先ほどの、聖女候補リビーの言葉ですね? 私が口説いたとか何とか……そんなもの、すべてでたらめです。エリノアなら、もちろん、信じてくれるよな?」

 父親が立つ方とは逆の、左側に立つエリノアに、縋るような視線を送るアントン。

「く、口説かれたのは本当だよ? でも、あたしは何度も何度も断った。だって、あたしがお姉ちゃんを傷付けるようなこと、するはずないもん。アントン様はともかく、あたしのことは信じてくれるよね?」

 続いて、リビーもエリノアに懇願してきた。


 複数の視線が集まる中。

 エリノアは、静かに、口を開いた。

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