聖女の婚約者と妹は、聖女の死を望んでいる。

ふまさ

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「どうしてきみは、いつも真っ先に危険なところにいこうとするんだ!」

「それはこちらの科白です。魔物の討伐にかんしては、わたしの方が経験があるんですよ?! なのにクリフ様は、いつも無茶してっ」

 これで何度目かわからない、エリノアとクリフの言い合いがはじまった。魔物討伐部隊の兵士たちは、慣れたように魔物の後始末をはじめる。

「聖女様。なんか、印象変わったよな」

「な。前隊長には、いつもどこか遠慮している部分があったけど」

「前の隊長の布陣て、聖女様をいつも一番前に配置するもんだったしなあ。オレはあれが一般的だと思ってたけど、他の部隊は違うんだろ?」

「少なくとも、前の聖女様のころは違ってたな。ここぞというときに、結界を張ってもらってた」

「そっか。やっぱ、前の隊長は、聖女様を大切にしてなかったんだなあ」

「いまのクリフ隊長を見れば、一目瞭然だけどな」

「確かに。王子様が魔物討伐部隊の隊長なんかできんのかよって正直不安だったけど」

「剣の腕も立つし、度胸もある。指示も的確だ。何より、聖女様を本当に大切にしてくれているしな」

「だな。お、そろそろ終わりそうだぞ」

 一人の兵士の言葉に、みながエリノアとクリフの二人に視線を向けた。


「……け、怪我とか、したら、どうするんですか……っ」

 涙を堪え、エリノアがこぶしを震わす。あとひとつきすれば泣き出しそうなエリノアに、クリフが、うっ、と怯む。これも、いつものパターンとなりつつあった。

「……それはエリノアも同じだろう」

 ため息をつきながら、エリノアを抱き締めるクリフ。エリノアはクリフの胸に顔を埋めながら、どうして、と呟いた。

「ん?」

「……どうして、王子であるクリフ様が、魔物討伐部隊の隊長なんて危ないものに、志願されたんですか」

「何度もいったろ? きみを守りたかったからだよ」

「……わたしは、クリフ様に危険な目に合ってほしくないです」

「それはわたしも同じだよ」

 同じ。エリノアが、心で繰り返す。

 本当に?

 疑いたくないのに、疑ってしまう自分がいる。クリフを失うのが怖い。けれどそれと同じぐらい、アントンとリビーのように、裏切られてしまうことも、怖ろしくてたまらない。

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