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「──一年前。わたしは落馬し、頭を強打した。打ち所が悪かったのか、目の前がぼやけ、視力が日を追うごとに低下していくのがわかった。それを魔法で治癒してくれたのが、宮廷魔法士のオーエンだった……元、だが」
確かに同時期。三十代の若さで宮廷魔法士となった天才オーエンに代わり、五十代の男が、宮廷魔法士に任命されたとの話しは、聞いたことがあった。
理由は公表されておらず、当時は国がその話題で持ちきりになった。
「……そうだったのですね。わたしは失礼ながら、サイラス殿下がそのような大変な目に遭っていたことすら、存じませんでした」
セシリーが申し訳なさそうに謝罪する。サイラスは「いや。それは当然のことなんだ」と返答した。
「わたしが落馬したことは、世間には公表していないからな。怪我をしたことも、視力が低下していたことも……何も。いずれ王位を継ぐわたしの身に何かあったなどと、民に──特に貴族に知られたくなかったのだろう。王族は弱みを見せるのを、とかく嫌うからな」
セシリーは驚いていた。これまでの会話からも感じていたことだが、この第一王子からは、王族特有の驕りを感じなかったから。
「……そうですね。わかります。けれど、サイラス殿下を救ってくださったオーエンは、どうして宮廷魔法士の任を解かれてしまったのですか?」
そう。最もわからないのはそこだ。セシリーが問いかけると、サイラスはゆっくりと腕を組んだ。
「……それはな。オーエンがわたしに、呪いをかけたからだ」
予想外過ぎる答えに、セシリーは絶句した。サイラスが続ける。
「オーエンはわたしを眠りにつかせてから、目の治療をした。半日ほどしてから目覚めると、ぼやけはなくなり、視力も元に戻っていた。部屋の中も、窓から見える外の景色も、想い出の中にあるものと何一つ変わっていなかった。わたしは歓喜したよ──でも」
サイラスは「人の顔だけが、それまでとは違って見えたんだ。まるで、恐ろしい化け物のような……っ」と、両手で、両目を覆った。
確かに同時期。三十代の若さで宮廷魔法士となった天才オーエンに代わり、五十代の男が、宮廷魔法士に任命されたとの話しは、聞いたことがあった。
理由は公表されておらず、当時は国がその話題で持ちきりになった。
「……そうだったのですね。わたしは失礼ながら、サイラス殿下がそのような大変な目に遭っていたことすら、存じませんでした」
セシリーが申し訳なさそうに謝罪する。サイラスは「いや。それは当然のことなんだ」と返答した。
「わたしが落馬したことは、世間には公表していないからな。怪我をしたことも、視力が低下していたことも……何も。いずれ王位を継ぐわたしの身に何かあったなどと、民に──特に貴族に知られたくなかったのだろう。王族は弱みを見せるのを、とかく嫌うからな」
セシリーは驚いていた。これまでの会話からも感じていたことだが、この第一王子からは、王族特有の驕りを感じなかったから。
「……そうですね。わかります。けれど、サイラス殿下を救ってくださったオーエンは、どうして宮廷魔法士の任を解かれてしまったのですか?」
そう。最もわからないのはそこだ。セシリーが問いかけると、サイラスはゆっくりと腕を組んだ。
「……それはな。オーエンがわたしに、呪いをかけたからだ」
予想外過ぎる答えに、セシリーは絶句した。サイラスが続ける。
「オーエンはわたしを眠りにつかせてから、目の治療をした。半日ほどしてから目覚めると、ぼやけはなくなり、視力も元に戻っていた。部屋の中も、窓から見える外の景色も、想い出の中にあるものと何一つ変わっていなかった。わたしは歓喜したよ──でも」
サイラスは「人の顔だけが、それまでとは違って見えたんだ。まるで、恐ろしい化け物のような……っ」と、両手で、両目を覆った。
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