美形揃いの王族の中で珍しく不細工なわたしを、王子がその顔で本当に王族なのかと皮肉ってきたと思っていましたが、実は違ったようです。

ふまさ

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 部屋に戻る途中ですれ違った使用人たちの顔も、誰一人として、もう化け物には見えなかった。母親にも会いにいってみたが、その顔はもう、崩れてはいなかった。


(……呪いは完全に解かれた? どうして、こんな唐突に……)

 自室のバルコニーで、月を見上げる。夜風は少し肌寒かったが、そんなことすら気にならないほど、サイラスは困惑していた。

「……オーエン。どうしてわたしに呪いなどかけたんだ。お前はいったい、何がしたかったんだ」

 誰もいない夜空に語りかける。強い風が一つ、吹いた。目をつぶる。と──。

「呪いなどではありませんよ、サイラス殿下」

 近くで響いた声に、はっとした。目を開ける。バルコニーの手すりの上に立っていたのは、細身の男。

 元、宮廷魔法士のオーエンだった。

「……オーエン?」

「はい、私です。あなたに魔法をかけてから、今日でちょうど一年経ちました。あなたのいう呪いはもう、解けましたか?」

 サイラスが呆然とする。どうして。その言葉ばかりが脳裏を巡る。

「……どうして、わたしの前に姿を現した。捕まれば罰せられることぐらい、理解しているだろう」

「そうですね」

「どうしてわたしに呪いをかけた。いや、呪いではないと言っていたな。どういうことだ」

 オーエンは「まず、兵を呼ばなくてよいのですか? また姿をくらますかもしれませんよ」と口元を緩めた。

「そんなことをすれば、お前とこうして話し合うことなど、きっと出来なくなる。わたしはどうしても、訳が知りたい」

「知って、どうなさるおつもりで? その後で改めて、私を処刑しますか?」

 月明かりのもと。オーエンが真っ直ぐに、サイラスを見つめてくる。サイラスは思わず、言葉に詰まってしまった。

 サイラス自身に、そんなつもりはない。けれど、父親たちは違うだろう。王族に逆らう者、仇なす者に、容赦などしない。処刑の可能性がないとは、とても言いきれなかった。

 でも。
 それはオーエンとて、理解しているはずで。

「……処刑も覚悟で、戻ってきたのか? それほどまでに、わたしに何か伝えたいことがあったのか?」

 意外なほどに真摯な声色に、オーエンは目を丸くし──次いで、ふっと目を細めた。


「ああ、やはり……あなたを選んで、良かった」

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