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パッと目が覚めたエノーラは、寝台の上にいた。上半身を起こし、きょろきょろとあたりを見回す。最後の記憶は、夜の馬車内。そこからの記憶がない。
──ということは。
「……また、戻ってしまった」
エノーラが絶望する。あれだけ、あれだけ自分なりに頑張ったのに。正直、ミッチェルに対して腹の立つことも何度かあったが、それもこれも明日を迎えるためと必死に我慢したのに。
「……もう、どうすればいいの……っ」
寝台の上で頭を抱え、丸まるエノーラ。少しして、侍女が部屋を訪れてきた。ああ、同じだわ。ますますエノーラは落ち込み、涙をこぼした。
「エノーラお嬢様……」
許しを得て部屋に入ってきた侍女が近付いてくる。きっと、どうしたのですかと聞かれるだろう。でも、答えられるわけがない。だって、きっと信じてくれない。
「……お話しは、奥様からうかがいました。ご立派でしたね、エノーラお嬢様」
優しく、慈しむような、六歳年上の侍女の声音。エノーラは呆然としながら、ゆっくりと顔を上げた。
「え……?」
「すみません。昨夜、屋敷に戻られたエノーラお嬢様が、いくら奥様たちが起こしても目を覚まされなくて。とても疲れているようで……ヴォルフ伯爵のお屋敷で何があったのかどうしても気になって、聞いてしまいました」
目を丸くするエノーラに、侍女が慌てる。
「あ、あの。とてもデリケートなお話しなのに、いくら何でも失礼でしたね。申し訳ありませんっ」
頭を下げる侍女の服の袖を、エノーラは軽く引っ張った。
「……今日は、何月何日ですか?」
「え? 今日は、ですね」
侍女が困惑しながら答えた日付に、エノーラは目を見開きながら、またぼろぼろと涙を流しはじめた。
「お、お嬢様? どうされたのですか? 今日が何か?」
エノーラは寝台からおりると、侍女に飛び付いた。ふふ。泣きながら、エノーラが笑う。
──良かった。わたしは間違っていなかった。
ミッチェルを失った悲しみなど忘れ、エノーラはただ、明日を迎えられたことに歓喜した。
──ということは。
「……また、戻ってしまった」
エノーラが絶望する。あれだけ、あれだけ自分なりに頑張ったのに。正直、ミッチェルに対して腹の立つことも何度かあったが、それもこれも明日を迎えるためと必死に我慢したのに。
「……もう、どうすればいいの……っ」
寝台の上で頭を抱え、丸まるエノーラ。少しして、侍女が部屋を訪れてきた。ああ、同じだわ。ますますエノーラは落ち込み、涙をこぼした。
「エノーラお嬢様……」
許しを得て部屋に入ってきた侍女が近付いてくる。きっと、どうしたのですかと聞かれるだろう。でも、答えられるわけがない。だって、きっと信じてくれない。
「……お話しは、奥様からうかがいました。ご立派でしたね、エノーラお嬢様」
優しく、慈しむような、六歳年上の侍女の声音。エノーラは呆然としながら、ゆっくりと顔を上げた。
「え……?」
「すみません。昨夜、屋敷に戻られたエノーラお嬢様が、いくら奥様たちが起こしても目を覚まされなくて。とても疲れているようで……ヴォルフ伯爵のお屋敷で何があったのかどうしても気になって、聞いてしまいました」
目を丸くするエノーラに、侍女が慌てる。
「あ、あの。とてもデリケートなお話しなのに、いくら何でも失礼でしたね。申し訳ありませんっ」
頭を下げる侍女の服の袖を、エノーラは軽く引っ張った。
「……今日は、何月何日ですか?」
「え? 今日は、ですね」
侍女が困惑しながら答えた日付に、エノーラは目を見開きながら、またぼろぼろと涙を流しはじめた。
「お、お嬢様? どうされたのですか? 今日が何か?」
エノーラは寝台からおりると、侍女に飛び付いた。ふふ。泣きながら、エノーラが笑う。
──良かった。わたしは間違っていなかった。
ミッチェルを失った悲しみなど忘れ、エノーラはただ、明日を迎えられたことに歓喜した。
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