もっと傲慢でいてください、殿下。──わたしのために。

ふまさ

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 国王と正妃が結婚してから三年。子どもが授からなかった国王は、一人の側妃を迎え入れた。そうして生まれたのが、デクスターだった。

 けれどそれから三年後に、正妃がイライジャを産み、まもなく亡くなってしまった。正妃を愛していた国王は、デクスターを顧みることなく、イライジャだけに愛情を注いだ。

 イライジャは王妃のたった一人の息子であり、国王の寵愛を受けているのは、誰の目にも明らかだった。次期国王は、イライジャで決まりだろう。そんな空気が王宮に漂うなか、デクスターの母親は病に伏せ、デクスターが五歳のときに、息を引き取った。

 そうしてデクスターは、広い王宮の中、一人きりなってしまった。


 クラリスとデクスターが出逢ったのは、クラリスが七歳。デクスターが十歳。国王主催のパーティーが開かれていたときだった。

 出席は義務づけられているものの、貴族が声をかけるのは、イライジャばかり。自分はここにいる必要はないと、デクスターはパーティーを抜け出した。

 王宮の中庭に来ると、一人の女の子がいた。それが、クラリスだった。迷子になったというその子は、不安そうな顔で、クラリスの服の端を握ってきた。

 おいていかないで。そう呟きながら。

(……そうか。この子は、僕が側妃の子だってこと、知らないんだ)

 そのことが、何だかたまらなく嬉しくて、目の奥が熱くなった。必死に涙をこらえ、大丈夫だよ、と答える。

 するとクラリスは、安心したように、ふっと笑った。それがとても可愛くて、デクスターはドキドキした。

 手を繋いで、パーティー会場である広間に二人で戻った。父親であるリンドバーグ公爵を見つけたクラリスが、デクスターの手を握ったまま歩き出そうとしたのに気付いたデクスターは、慌てた。

「あ、あの」

「たすけてもらったおんじんを、おとうさまにしょうかいします!」

 キラキラした瞳で、クラリスが笑う。デクスターは、ごめん、とこぶしを握りながら謝罪した。

「……僕は、パーティーに戻りたくないんだ」

 どうして。そうたずねられるかと身構えたデクスターだったが。

「そうですか。わかりました」

 一瞬の間のあと、クラリスは呆気ないほど簡単に納得してくれた。

「では、あの。ここではないところなら、もうすこしおはなししてくれますか?」

 照れたように小さく問うてくるクラリスに、デクスターは、もちろん、と、心からの笑みを浮かべた。
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