21 / 25
21
しおりを挟む
それからクラリスは、宰相たちにいくつかの質問をされた。影からの報告と照らし合わせているだろうそれらの問いは、数時間を要した。けれど疲れはまったく感じず、むしろクラリスの心は、踊っていた。
その後の会議にクラリスが呼ばれることはなかったが、リンドバーグ公爵は、全てに出席していた。漏れ聞く内容から、事は順調に進んでいるようだったが、学園でのイライジャの様子に、何ら変化はなく。
クラリスは緩む口元を隠すのに必死だった。イライジャがそれを知る日は、いつだろう。
明日かしら。それとも明後日?
そしてついに、その日は来た。
顔を見るだけでも不快だ。そう言って、リンドバーグ公爵も、コルホネン公爵も、その場に顔を出すことはなかった。本来、クラリスにも出席の義務はなかったし、両親にも止められたが、行かないわけにはいかなかった。
全てはこの日のために、生きてきたのだから。
謁見の間で、兵によって床に押し付けられたイライジャが喚き散らす。本当に、イライジャはお終いなんだわ。実感し、涙が溢れた。
そして。父親から事前に知らされていた通り、国王はみなの前で、こう宣言した。
「次期国王は、私の側妃の息子、デクスターとする。異論のある者は前に出よ」
──ああ。ようやっと。
「きみには是非とも、デクスターの婚約者となってほしいのだ」
国王の言葉に、心が震えた。これは夢じゃないかと、本気で疑った。デクスターの顔が、まともに見れない。すぐ傍にいるのに。
「今後のことについて、話しがしたい。少し時間をもらえるだろうか」
四年ぶりに聞いた愛しい声音に、クラリスの胸が熱くなる。と、同時に怖くなった。
いま他人行儀な理由は、承知している。それでもクラリスは、不安だった。他に愛する人ができた。側妃に迎えたい。そう言われる覚悟もしながら、前を歩くデクスターに付いていく。
(……叶うなら、抱き締めてもらいたい)
背を見詰め、願う。贅沢だろうか。デクスターを次期国王とまわりが認めてくれただけで充分だと。そう思うべきなのか。
「クラリス」
名を呼ばれた。びくっと肩が揺れる。まだわからない。続く言葉が謝罪なら、きっと──。
「──おいで、クラリス」
想いが溢れた。その声色だけで、わかってしまったから。
「……デクスター様っ」
その後の会議にクラリスが呼ばれることはなかったが、リンドバーグ公爵は、全てに出席していた。漏れ聞く内容から、事は順調に進んでいるようだったが、学園でのイライジャの様子に、何ら変化はなく。
クラリスは緩む口元を隠すのに必死だった。イライジャがそれを知る日は、いつだろう。
明日かしら。それとも明後日?
そしてついに、その日は来た。
顔を見るだけでも不快だ。そう言って、リンドバーグ公爵も、コルホネン公爵も、その場に顔を出すことはなかった。本来、クラリスにも出席の義務はなかったし、両親にも止められたが、行かないわけにはいかなかった。
全てはこの日のために、生きてきたのだから。
謁見の間で、兵によって床に押し付けられたイライジャが喚き散らす。本当に、イライジャはお終いなんだわ。実感し、涙が溢れた。
そして。父親から事前に知らされていた通り、国王はみなの前で、こう宣言した。
「次期国王は、私の側妃の息子、デクスターとする。異論のある者は前に出よ」
──ああ。ようやっと。
「きみには是非とも、デクスターの婚約者となってほしいのだ」
国王の言葉に、心が震えた。これは夢じゃないかと、本気で疑った。デクスターの顔が、まともに見れない。すぐ傍にいるのに。
「今後のことについて、話しがしたい。少し時間をもらえるだろうか」
四年ぶりに聞いた愛しい声音に、クラリスの胸が熱くなる。と、同時に怖くなった。
いま他人行儀な理由は、承知している。それでもクラリスは、不安だった。他に愛する人ができた。側妃に迎えたい。そう言われる覚悟もしながら、前を歩くデクスターに付いていく。
(……叶うなら、抱き締めてもらいたい)
背を見詰め、願う。贅沢だろうか。デクスターを次期国王とまわりが認めてくれただけで充分だと。そう思うべきなのか。
「クラリス」
名を呼ばれた。びくっと肩が揺れる。まだわからない。続く言葉が謝罪なら、きっと──。
「──おいで、クラリス」
想いが溢れた。その声色だけで、わかってしまったから。
「……デクスター様っ」
456
あなたにおすすめの小説
旦那様に「君を愛する気はない」と言い放たれたので、「逃げるのですね?」と言い返したら甘い溺愛が始まりました。
海咲雪
恋愛
結婚式当日、私レシール・リディーアとその夫となるセルト・クルーシアは初めて顔を合わせた。
「君を愛する気はない」
そう旦那様に言い放たれても涙もこぼれなければ、悲しくもなかった。
だからハッキリと私は述べた。たった一文を。
「逃げるのですね?」
誰がどう見ても不敬だが、今は夫と二人きり。
「レシールと向き合って私に何の得がある?」
「可愛い妻がなびくかもしれませんわよ?」
「レシール・リディーア、覚悟していろ」
それは甘い溺愛生活の始まりの言葉。
[登場人物]
レシール・リディーア・・・リディーア公爵家長女。
×
セルト・クルーシア・・・クルーシア公爵家長男。
あの、初夜の延期はできますか?
木嶋うめ香
恋愛
「申し訳ないが、延期をお願いできないだろうか。その、いつまでとは今はいえないのだが」
私シュテフイーナ・バウワーは今日ギュスターヴ・エリンケスと結婚し、シュテフイーナ・エリンケスになった。
結婚祝の宴を終え、侍女とメイド達に準備された私は、ベッドの端に座り緊張しつつ夫のギュスターヴが来るのを待っていた。
けれど、夜も更け体が冷え切っても夫は寝室には姿を見せず、明け方朝告げ鶏が鳴く頃に漸く現れたと思ったら、私の前に跪き、彼は泣きそうな顔でそう言ったのだ。
「私と夫婦になるつもりが無いから永久に延期するということですか? それとも何か理由があり延期するだけでしょうか?」
なぜこの人私に求婚したのだろう。
困惑と悲しみを隠し尋ねる。
婚約期間は三ヶ月と短かったが、それでも頻繁に会っていたし、会えない時は手紙や花束が送られてきた。
関係は良好だと感じていたのは、私だけだったのだろうか。
ボツネタ供養の短編です。
十話程度で終わります。
ガネス公爵令嬢の変身
くびのほきょう
恋愛
1年前に現れたお父様と同じ赤い目をした美しいご令嬢。その令嬢に夢中な幼なじみの王子様に恋をしていたのだと気づいた公爵令嬢のお話。
※「小説家になろう」へも投稿しています
あなたに嘘を一つ、つきました
小蝶
恋愛
ユカリナは夫ディランと政略結婚して5年がたつ。まだまだ戦乱の世にあるこの国の騎士である夫は、今日も戦地で命をかけて戦っているはずだった。彼が戦地に赴いて3年。まだ戦争は終わっていないが、勝利と言う戦況が見えてきたと噂される頃、夫は帰って来た。隣に可愛らしい女性をつれて。そして私には何も告げぬまま、3日後には結婚式を挙げた。第2夫人となったシェリーを寵愛する夫。だから、私は愛するあなたに嘘を一つ、つきました…
最後の方にしか主人公目線がない迷作となりました。読みづらかったらご指摘ください。今さらどうにもなりませんが、努力します(`・ω・́)ゞ
【完結】私の事は気にせずに、そのままイチャイチャお続け下さいませ ~私も婚約解消を目指して頑張りますから~
山葵
恋愛
ガルス侯爵家の令嬢である わたくしミモルザには、婚約者がいる。
この国の宰相である父を持つ、リブルート侯爵家嫡男レイライン様。
父同様、優秀…と期待されたが、顔は良いが頭はイマイチだった。
顔が良いから、女性にモテる。
わたくしはと言えば、頭は、まぁ優秀な方になるけれど、顔は中の上位!?
自分に釣り合わないと思っているレイラインは、ミモルザの見ているのを知っていて今日も美しい顔の令嬢とイチャイチャする。
*沢山の方に読んで頂き、ありがとうございます。m(_ _)m
真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください
LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。
伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。
真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。
(他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…)
(1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)
【完結】野蛮な辺境の令嬢ですので。
❄️冬は つとめて
恋愛
『』カクヨムにも、投稿しています。
その日は国王主催の舞踏会で、アルテミスは兄のエスコートで会場入りをした。兄が離れたその隙に、とんでもない事が起こるとは彼女は思いもよらなかった。
それは、婚約破棄&女の戦い?
女性として見れない私は、もう不要な様です〜俺の事は忘れて幸せになって欲しい。と言われたのでそうする事にした結果〜
流雲青人
恋愛
子爵令嬢のプレセアは目の前に広がる光景に静かに涙を零した。
偶然にも居合わせてしまったのだ。
学園の裏庭で、婚約者がプレセアの友人へと告白している場面に。
そして後日、婚約者に呼び出され告げられた。
「君を女性として見ることが出来ない」
幼馴染であり、共に過ごして来た時間はとても長い。
その中でどうやら彼はプレセアを友人以上として見れなくなってしまったらしい。
「俺の事は忘れて幸せになって欲しい。君は幸せになるべき人だから」
大切な二人だからこそ、清く身を引いて、大好きな人と友人の恋を応援したい。
そう思っている筈なのに、恋心がその気持ちを邪魔してきて...。
※
ゆるふわ設定です。
完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる