もっと傲慢でいてください、殿下。──わたしのために。

ふまさ

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「──少しは落ち着いた?」

 デクスターがクラリスの頭を撫でながらたずねるが、四年分の涙は、そう簡単には止まってはくれず。

「……わたし、デクスター様に愛する人ができていたらって……ずっと不安で……っ」

 デクスターは目を瞠った。まさかそんなことを考えていたとは、夢にも思っていなかったから。

「クラリス。わたしはね、王宮できみの姿を見かけるたび、思っていたんだ。きみを攫って、二人で逃げてしまいたいとね」

「……やはり。そんなに、お辛かったのですね」

「違うよ。そうじゃない。辛かったのは、きみだろう? 見かけるたびに顔から感情がなくなって、痩せていくきみを見ていたら、胸が締め付けられて……他の女性を気にしている余裕なんて、とてもじゃないがなかったよ」 

 デクスターが、そっとクラリスの両頬を包んだ。クラリスの瞳から、ますます涙が零れる。

「……わ、わたし、頑張って子を生みますから……」

「うん?」

 ひくっ。しゃくりあげながら、クラリスは続けた。

「そ、側妃は、つくらないで……っ」

 はは。小さく笑いながら、デクスターはクラリスに顔を近付け「もちろん。最初から、そのつもりだよ」と、口付けをした。


 二年後。クラリスが学園を卒業すると同時に二人は結婚し、デクスターは父親から、王位を継承した。

 早すぎる、との意見はなく。むしろこれは、みなの総意によるものだった。国王──いや、元国王のデイヴは一人、納得していなかったが、逆らえるはずもなく。

「くそっ。あいつら、手のひらを返しよって」

 自室で一人、昼間から酒をあおるデイヴ。退位してから半月経ったいまも、臣下たちへの怒りは消えない。

「ふん、まあいいさ。これで私は自由の身だ。供を連れ、旅に出るのもまた一興」

 テーブルにコップを置き、デイヴは席を立った。窓に近付き、空を仰ぐ。

 コンコン。コンコン。
 扉がノックされた。誰だ、と問う前に扉が開かれ、デイヴはぴくりと不快に片眉を動かした。

 兵によって左右に開けられた扉から入室してきたのは、デクスターとクラリスだった。


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