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「できるとこからヤってみる」っていう開拓精神 ③
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「ちょっとばかし時間が空いちまったなぁ。あの約束さ、続けてくれてたか秋介──?」
あの約束だとか、なんか意味深で重そうな言葉を選んでるが。内容はどうしようもない下ネタだった。
「……ああ、一応はな。あたりまえだが毎日はやってねーけどよ?」
何のことかというと前に大智が持ってきた「なんとかプラグとかローションとか」をあいつは、オレにぜんぶ預けて帰ったわけだ。こいつが言うには「せっかく一時的に広がってもほっとけば狭くなって、また受け入れられなくなる」っていう理屈らしく、つまり「あの時点で受け入れられたサイズ」のモノは定期的にケツに入れて維持しておいて欲しいとのことだった。
泣きたくなるほどバカバカしい約束だが、こいつは一応はオレの恋人なんだし、今となっては別にサイズアップさえしなけりゃ風呂にでも入ったときにひそかにケツに「プラグ=イン」したままでいたり、場合によってはそのままオナったりもする。まあ超がつくほど後ろめたいし、クッソ恥ずかしいんだが。
あたりまえだが母親がいるときなんかはさすがにやんなかったし、部屋に「こういうの」があるのが万が一でも見つかったら死にたくなるので、施錠できる引き出しのなかにすべては隠してある。まあオレは部屋の掃除とか片付けはけっこう徹底してるほうだから、母さんが勝手に入ってくるなんてことは基本的にはないんだが。
「そんで。どんな感じだ、今──?」
「どうとか言われてもな、まあ変わんねーよ、あんまり。いったん入っちまえば違和感も痛みもないし」
「なんかキモチかったりとか、ちんこ勃ったりとかしなかったんか?」
そこで一瞬だけ、言葉に詰まった。実は別に快感とかではないけど、言葉にしにくい妙な感覚はあって。プラグが奥までずるっと入っちまうとなぜかちんこは半勃ちにはなる。そのままバスタブに腰掛けてボケーっとしてたら先走りまでがちょっと出ちまってるのが見えて、我ながらちょっと焦ったことはあった。あれ? もしかしてオレ「そっちの才能が実はあった」のかなって。
まあそんなことを馬鹿正直に大智に報告する義務はない。
「や。べつにねーよ?」
「ホントか? まあいいや」
今日もすでに、オレは風呂場でケツの準備は済んでいる。なんか慣れちまってるのが怖い。
こういう日は大智もいちど家に帰ってシャワーを浴びてからうちに来るのが習慣化していた。その間にオレは「そういう準備」を済ませておくっていう流れだ。
ちなみに今、すでにオレたちは下着一枚だけでベッドの上で抱き合っている。最近は寒くなってきたしな──って、そんな言い訳が脳裏をかすめた。エアコンの暖房は、ついさっき切ったところだ。
「なぁ秋介、おれ実はちょっとだけ驚いてんだよ」
「は。なにがだ?」
大智は、困ってるんだか嬉しいんだかよくわからない妙な顔を見せる。
「おれは一応、おまえに好きだって言っただろ。そのあとすぐセックス連呼しておまえを困らせたけどさ。なんか暗黙的におまえはおれを受け入れて、おまえらしくもなくおれの言うことも聞いてくれてるのが意外でさ」
まあ、確かにそれもそうかもな。なし崩し的にこんな関係をオレは許しちまってるけど、オレのほうから「好きだ」とかこいつに言ったことはなかった。それこそタイミングを逃してるわけで、今さら言えることでもないだろうが。
「あのサイズを、わりと習慣的にケツに入れてたんならたぶん、おまえが思う以上にけっこう準備は整いつつあると思うんだよ」
「……あのさ、会話の脈絡とか考えろよ。文脈がまったくつながってねーのと、それから今のオレがおまえのクソ巨根を受け入れられるかって話ならそれ、とんでもないファンタジーだからな。先に言っとくぞ」
「おれもさ、秋介がキモチよくもなれないのに無理やりケツに挿れようとは思ってなかったんだよ、最初に抱き合ったあの日からさ」
本当か? 最初に「セックス」ってセリフがこいつの口から出たときは、明らかに犯されると思ったぞオレは。
「そんでな。今回はこれ、試させて欲しいんだよ」
大智は長い腕を伸ばして、バッグからなんか見慣れない形状のモノを取り出した。オレはこれまで、そのバッグから学生らしい道具が出てきたのは一度も見たことねーぞ。本当に大丈夫なのかこいつは。
というか見るからになんか怪しい形状だ。二重になった輪っかからつながってカーブし、円錐形というか紡錘形というのか微妙な形のものが黒く、艶のないマットブラックで反り上がっていた。
はい。すごくイヤな予感がします。
「これ、試してみようぜ。見れば分かると思うけどそんな太いわけでもねーからさ」
まあ、冷静に直径だけ見れば最近、風呂場で入れてたプラグの最も太い箇所と同程度なのかもしれないけど、さ。
「……なんか把握したぞ。これ、電動式とかで実は動くんじゃねーか!?」
「うん、そう」
「アホなことを当然のことみたいに言うんじゃねーッ!!」
これはもう本格的に「性玩具」ってヤツだろう。おまえがバスケ部とかで忙しくてバイトなんかしてなかった、ってことくらいはオレも知ってるぞ。小遣いかお年玉かわからんが、そうやってもらった金をこんなヤベーアイテム買うのに使ってんじゃねーよ!
「おまえがコレに何の反応も示さねーようなら、おれもこれ以上の開発とかあきらめるよ。結局は、最終的におれのちんこが入ったとしても何もキモチよくなんないんだと思うからさ──?」
「あー、なんかオレもう疲れたよパトラッシュ……」
「こういう場面でいちいちその名前出すのはよくないと思うぜ?」
メタな発言はやめろ、このポンコツ巨神兵が。
「……もういいわ、知らん、好きにしろ」
何となくしか見た目からは用途はわかんねーけど、たぶんリング部分をちんこに装着して、反り上がった紡錘形の部位がケツに入って来るんだろうとは予想がつく。ぱっと見ではそんなにデカいわけでもなく、凶悪な効果はないんじゃないかと考えた──オレはその判断を、深くはげしく後悔することになるのだが。
「じゃあ脱がすぞ。それから、両膝を腕で抱えあげてケツこっちに向けろ、秋介」
「へいへい」
なんか、こういう姿勢とらされるのにも、ケツ見られるのにも慣れてきちまっている自分が怖い。そしていつも以上にマジな顔をしている大智もちょっと怖かった。
ダブルリングの大きい方はちんこの付け根に、小さい方は亀頭の雁首のほうに合わせて装着される。締め付けられる快感に、その時点でなんかイヤな予感は強まるが、ちんこは素直に半勃ちになった。大智はというと、その先端の「棒状の部分」にいつもよりも入念に、多めにローションを塗り込めつつ、オレのケツに指を伸ばしてきた。
「ま、待てよ指は──ッ」
「入り口だけだよ、ガマンしろ」
ケツ穴、わずか数センチにも満たないところだと思うが、大智の人差し指がローションに滑って入ってくる。そしてぐるりと回って入口部分を濡らした。これまでで一番、緊張と隠しきれない興奮が大智の顔には見えている。
シリコンなのかゴムなのか、はっきりはわからないがダブルリングからつながる「ある一箇所」は会陰部、つまりケツ穴と睾丸の間にぴたりと収まって、それがまた未知の快感をもたらしていた。そして先端部を大智はやけに慎重にオレのケツにあてがってくる。今回のコレは、今までのモノとは違って先端部がいちばん太い構造になっているから、実はやっぱり無理なんじゃねーかと今さらになって思った。
「……いつも通りな。目ぇ閉じて深呼吸だけしてろ、秋介」
みしみしと、本当にわずかずつ入ってこようとする異物に対する反発はこれまでで最も強い。目を閉じて、深く呼吸をしていても進展もないような気がしていた。
「なぁ大智、これさすがにムリなん──ッ!」
つい目を開いたオレは、すぐ真正面で獣のように笑う大智の姿を見てしまい、その瞬間にプラグ部分は一気に奥まで、ずぶっと侵入した。幸い長さのあるモノじゃないので衝撃はさほどでもなかったが、今さらになって気づく。こんな複雑な造形をしたモノが、ただ挿入するだけの器具で、電動でただ動くだけのはずがないっていう事実に。
オレは両足をベッドに下ろして、いつものようにこの違和感が落ち着くのを待とうとした。ただ、装着されたダブルリングはちんこを上向けに引っ張り、なにより睾丸の直下にあるなんか丸く突起した部分が食い込んできていて、それも何だか未知の快感らしきものを誘導した。
息を整えようとしているオレから身を離し立ち上がった大智は、バッグからなにか小さな円形の物体を取り出す。
「秋介。最初は弱くからスタートすっからさ?」
震動。くっそ、これが電動式というのは予想がついたが、だけど実態はそれ以上にずっと精巧に造られている。オレは大智の手にあるリモコンに命運を握られちまったわけだ。
「う。ぁ、あァ……!」
ケツの中で震えるそれは、奥へ奥へと導かれて、すぐに何か違和感と圧迫感を強く感じる部位に当たった。会陰部、睾丸下にあるやわらかな突起も同時に震動していて、これはもうダイレクトに快感だった。
「前立腺に当たってんだろ──? そこって『感じるタイプ』と『そうでもないタイプ』がいるみたいなんだけどさ。秋介、おまえは前者だったみてーだなァ」
「あ。ゥ、なんで──ッ」
「だっておまえ、ガチ勃起してんじゃん。ペニスバンドが締め付けるから『余計にいろいろやべー』ぞ、それ」
確かに雁首と根本まで震動は伝わって余計に刺激は強くなる。そしてプラグ先端部分は角度をつけてより深く入り込み、前立腺──? あたりに直接、震動を押し付けるようになっていた。
予想外の展開に思考回路が追いつかず、ただ天井ばかりを向いているオレの視界に、どこか暗い優越感のような表情を浮かべた大智が見下ろしてくるのが見えていた。
「秋介、これまだ『レベル1』なんだよ実はな。ちょっと上げていこーぜ?」
「ん、ぐッ──!」
ケツに受け容れちまってるプラグが、かすかに前後運動を始めた。絶妙な部分を連続して突かれる快感に、オレの視界はやや定まらなくなってる。睾丸下の部位もわずかに蠢きながら震動を強くしていき、ペニスバンドも根本のほうを引っ張りながら震動を伝えてきた。
思考がまとまらない。状況が把握できない──ただ、今のオレは快楽に流されて弛緩した表情をしているんだろう。その証拠に、欲情したらしい大智はリモコンを手にしたままオレの唇を塞いで舌を入れてきた。
「秋介、おまえ予想外にエロいよ──マジですっげぇ……」
「あ、うァ、ッう」
大智がリモコンを操作し、また動きのパターンを変えたようだ。震動自体にリズムが付加されて、前立腺を突く動きのモーメントが強くなった。これは、──このままだとヤバい、普通にこのままイッちまいそうだ。
「た、たいち……」
「どうしたよ。秋介」
「ヤバいってこれ、いったん、止めてくれ、でないとオレ……」
「でないと、どうなっちまうって──?」
クソ、こいつ止める気なんてねぇな──小心者と見せかけて本性はとんでもねえドS野郎かよチクショー。
「なあ、いまの秋介、マジでエロいわ──マジで犯してぇよ……」
それに反発は感じても言葉が出てこない。たぶん大智はまたリモコンで刺激レベルを上げやがった。どうなってんだよクソ、マジで視線が定まらないし途中からはバカみてーに口も半開きのままだ。
「うォ、やべイク──!」
「イケよ。マジでたまんねえ秋介、おまえヤベえってエロ過ぎるわ……」
快感が脳内で白熱した。射精はしてるっぽいが、なんか飛ぶってよりドロドロ流れ出してるみたいだ。ちんこが跳ねようとしてもリングに引っ張られて天を向き、射精の快感はプラグを押し出そうとするが根本のバンドからつながるそれは、押し出す圧力と拮抗して震動しながら不規則に出そうになったり入ったりをまた繰り返している。
リモコンをわざとらしく手にして、勃起を見せつけるようにしてベッド脇に立ち尽くす大智は、ひどく野性味の強い酷薄な表情を見せて口許を歪めていた。ただし、長い射精が終わり、荒い息だけをくりかえし吐くようになったころにはリモコンで電源を止めて、それからひどくやさしく、広く包み込むようにしてオレを強く抱き締めたのだが……。
あの約束だとか、なんか意味深で重そうな言葉を選んでるが。内容はどうしようもない下ネタだった。
「……ああ、一応はな。あたりまえだが毎日はやってねーけどよ?」
何のことかというと前に大智が持ってきた「なんとかプラグとかローションとか」をあいつは、オレにぜんぶ預けて帰ったわけだ。こいつが言うには「せっかく一時的に広がってもほっとけば狭くなって、また受け入れられなくなる」っていう理屈らしく、つまり「あの時点で受け入れられたサイズ」のモノは定期的にケツに入れて維持しておいて欲しいとのことだった。
泣きたくなるほどバカバカしい約束だが、こいつは一応はオレの恋人なんだし、今となっては別にサイズアップさえしなけりゃ風呂にでも入ったときにひそかにケツに「プラグ=イン」したままでいたり、場合によってはそのままオナったりもする。まあ超がつくほど後ろめたいし、クッソ恥ずかしいんだが。
あたりまえだが母親がいるときなんかはさすがにやんなかったし、部屋に「こういうの」があるのが万が一でも見つかったら死にたくなるので、施錠できる引き出しのなかにすべては隠してある。まあオレは部屋の掃除とか片付けはけっこう徹底してるほうだから、母さんが勝手に入ってくるなんてことは基本的にはないんだが。
「そんで。どんな感じだ、今──?」
「どうとか言われてもな、まあ変わんねーよ、あんまり。いったん入っちまえば違和感も痛みもないし」
「なんかキモチかったりとか、ちんこ勃ったりとかしなかったんか?」
そこで一瞬だけ、言葉に詰まった。実は別に快感とかではないけど、言葉にしにくい妙な感覚はあって。プラグが奥までずるっと入っちまうとなぜかちんこは半勃ちにはなる。そのままバスタブに腰掛けてボケーっとしてたら先走りまでがちょっと出ちまってるのが見えて、我ながらちょっと焦ったことはあった。あれ? もしかしてオレ「そっちの才能が実はあった」のかなって。
まあそんなことを馬鹿正直に大智に報告する義務はない。
「や。べつにねーよ?」
「ホントか? まあいいや」
今日もすでに、オレは風呂場でケツの準備は済んでいる。なんか慣れちまってるのが怖い。
こういう日は大智もいちど家に帰ってシャワーを浴びてからうちに来るのが習慣化していた。その間にオレは「そういう準備」を済ませておくっていう流れだ。
ちなみに今、すでにオレたちは下着一枚だけでベッドの上で抱き合っている。最近は寒くなってきたしな──って、そんな言い訳が脳裏をかすめた。エアコンの暖房は、ついさっき切ったところだ。
「なぁ秋介、おれ実はちょっとだけ驚いてんだよ」
「は。なにがだ?」
大智は、困ってるんだか嬉しいんだかよくわからない妙な顔を見せる。
「おれは一応、おまえに好きだって言っただろ。そのあとすぐセックス連呼しておまえを困らせたけどさ。なんか暗黙的におまえはおれを受け入れて、おまえらしくもなくおれの言うことも聞いてくれてるのが意外でさ」
まあ、確かにそれもそうかもな。なし崩し的にこんな関係をオレは許しちまってるけど、オレのほうから「好きだ」とかこいつに言ったことはなかった。それこそタイミングを逃してるわけで、今さら言えることでもないだろうが。
「あのサイズを、わりと習慣的にケツに入れてたんならたぶん、おまえが思う以上にけっこう準備は整いつつあると思うんだよ」
「……あのさ、会話の脈絡とか考えろよ。文脈がまったくつながってねーのと、それから今のオレがおまえのクソ巨根を受け入れられるかって話ならそれ、とんでもないファンタジーだからな。先に言っとくぞ」
「おれもさ、秋介がキモチよくもなれないのに無理やりケツに挿れようとは思ってなかったんだよ、最初に抱き合ったあの日からさ」
本当か? 最初に「セックス」ってセリフがこいつの口から出たときは、明らかに犯されると思ったぞオレは。
「そんでな。今回はこれ、試させて欲しいんだよ」
大智は長い腕を伸ばして、バッグからなんか見慣れない形状のモノを取り出した。オレはこれまで、そのバッグから学生らしい道具が出てきたのは一度も見たことねーぞ。本当に大丈夫なのかこいつは。
というか見るからになんか怪しい形状だ。二重になった輪っかからつながってカーブし、円錐形というか紡錘形というのか微妙な形のものが黒く、艶のないマットブラックで反り上がっていた。
はい。すごくイヤな予感がします。
「これ、試してみようぜ。見れば分かると思うけどそんな太いわけでもねーからさ」
まあ、冷静に直径だけ見れば最近、風呂場で入れてたプラグの最も太い箇所と同程度なのかもしれないけど、さ。
「……なんか把握したぞ。これ、電動式とかで実は動くんじゃねーか!?」
「うん、そう」
「アホなことを当然のことみたいに言うんじゃねーッ!!」
これはもう本格的に「性玩具」ってヤツだろう。おまえがバスケ部とかで忙しくてバイトなんかしてなかった、ってことくらいはオレも知ってるぞ。小遣いかお年玉かわからんが、そうやってもらった金をこんなヤベーアイテム買うのに使ってんじゃねーよ!
「おまえがコレに何の反応も示さねーようなら、おれもこれ以上の開発とかあきらめるよ。結局は、最終的におれのちんこが入ったとしても何もキモチよくなんないんだと思うからさ──?」
「あー、なんかオレもう疲れたよパトラッシュ……」
「こういう場面でいちいちその名前出すのはよくないと思うぜ?」
メタな発言はやめろ、このポンコツ巨神兵が。
「……もういいわ、知らん、好きにしろ」
何となくしか見た目からは用途はわかんねーけど、たぶんリング部分をちんこに装着して、反り上がった紡錘形の部位がケツに入って来るんだろうとは予想がつく。ぱっと見ではそんなにデカいわけでもなく、凶悪な効果はないんじゃないかと考えた──オレはその判断を、深くはげしく後悔することになるのだが。
「じゃあ脱がすぞ。それから、両膝を腕で抱えあげてケツこっちに向けろ、秋介」
「へいへい」
なんか、こういう姿勢とらされるのにも、ケツ見られるのにも慣れてきちまっている自分が怖い。そしていつも以上にマジな顔をしている大智もちょっと怖かった。
ダブルリングの大きい方はちんこの付け根に、小さい方は亀頭の雁首のほうに合わせて装着される。締め付けられる快感に、その時点でなんかイヤな予感は強まるが、ちんこは素直に半勃ちになった。大智はというと、その先端の「棒状の部分」にいつもよりも入念に、多めにローションを塗り込めつつ、オレのケツに指を伸ばしてきた。
「ま、待てよ指は──ッ」
「入り口だけだよ、ガマンしろ」
ケツ穴、わずか数センチにも満たないところだと思うが、大智の人差し指がローションに滑って入ってくる。そしてぐるりと回って入口部分を濡らした。これまでで一番、緊張と隠しきれない興奮が大智の顔には見えている。
シリコンなのかゴムなのか、はっきりはわからないがダブルリングからつながる「ある一箇所」は会陰部、つまりケツ穴と睾丸の間にぴたりと収まって、それがまた未知の快感をもたらしていた。そして先端部を大智はやけに慎重にオレのケツにあてがってくる。今回のコレは、今までのモノとは違って先端部がいちばん太い構造になっているから、実はやっぱり無理なんじゃねーかと今さらになって思った。
「……いつも通りな。目ぇ閉じて深呼吸だけしてろ、秋介」
みしみしと、本当にわずかずつ入ってこようとする異物に対する反発はこれまでで最も強い。目を閉じて、深く呼吸をしていても進展もないような気がしていた。
「なぁ大智、これさすがにムリなん──ッ!」
つい目を開いたオレは、すぐ真正面で獣のように笑う大智の姿を見てしまい、その瞬間にプラグ部分は一気に奥まで、ずぶっと侵入した。幸い長さのあるモノじゃないので衝撃はさほどでもなかったが、今さらになって気づく。こんな複雑な造形をしたモノが、ただ挿入するだけの器具で、電動でただ動くだけのはずがないっていう事実に。
オレは両足をベッドに下ろして、いつものようにこの違和感が落ち着くのを待とうとした。ただ、装着されたダブルリングはちんこを上向けに引っ張り、なにより睾丸の直下にあるなんか丸く突起した部分が食い込んできていて、それも何だか未知の快感らしきものを誘導した。
息を整えようとしているオレから身を離し立ち上がった大智は、バッグからなにか小さな円形の物体を取り出す。
「秋介。最初は弱くからスタートすっからさ?」
震動。くっそ、これが電動式というのは予想がついたが、だけど実態はそれ以上にずっと精巧に造られている。オレは大智の手にあるリモコンに命運を握られちまったわけだ。
「う。ぁ、あァ……!」
ケツの中で震えるそれは、奥へ奥へと導かれて、すぐに何か違和感と圧迫感を強く感じる部位に当たった。会陰部、睾丸下にあるやわらかな突起も同時に震動していて、これはもうダイレクトに快感だった。
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「あ。ゥ、なんで──ッ」
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確かに雁首と根本まで震動は伝わって余計に刺激は強くなる。そしてプラグ先端部分は角度をつけてより深く入り込み、前立腺──? あたりに直接、震動を押し付けるようになっていた。
予想外の展開に思考回路が追いつかず、ただ天井ばかりを向いているオレの視界に、どこか暗い優越感のような表情を浮かべた大智が見下ろしてくるのが見えていた。
「秋介、これまだ『レベル1』なんだよ実はな。ちょっと上げていこーぜ?」
「ん、ぐッ──!」
ケツに受け容れちまってるプラグが、かすかに前後運動を始めた。絶妙な部分を連続して突かれる快感に、オレの視界はやや定まらなくなってる。睾丸下の部位もわずかに蠢きながら震動を強くしていき、ペニスバンドも根本のほうを引っ張りながら震動を伝えてきた。
思考がまとまらない。状況が把握できない──ただ、今のオレは快楽に流されて弛緩した表情をしているんだろう。その証拠に、欲情したらしい大智はリモコンを手にしたままオレの唇を塞いで舌を入れてきた。
「秋介、おまえ予想外にエロいよ──マジですっげぇ……」
「あ、うァ、ッう」
大智がリモコンを操作し、また動きのパターンを変えたようだ。震動自体にリズムが付加されて、前立腺を突く動きのモーメントが強くなった。これは、──このままだとヤバい、普通にこのままイッちまいそうだ。
「た、たいち……」
「どうしたよ。秋介」
「ヤバいってこれ、いったん、止めてくれ、でないとオレ……」
「でないと、どうなっちまうって──?」
クソ、こいつ止める気なんてねぇな──小心者と見せかけて本性はとんでもねえドS野郎かよチクショー。
「なあ、いまの秋介、マジでエロいわ──マジで犯してぇよ……」
それに反発は感じても言葉が出てこない。たぶん大智はまたリモコンで刺激レベルを上げやがった。どうなってんだよクソ、マジで視線が定まらないし途中からはバカみてーに口も半開きのままだ。
「うォ、やべイク──!」
「イケよ。マジでたまんねえ秋介、おまえヤベえってエロ過ぎるわ……」
快感が脳内で白熱した。射精はしてるっぽいが、なんか飛ぶってよりドロドロ流れ出してるみたいだ。ちんこが跳ねようとしてもリングに引っ張られて天を向き、射精の快感はプラグを押し出そうとするが根本のバンドからつながるそれは、押し出す圧力と拮抗して震動しながら不規則に出そうになったり入ったりをまた繰り返している。
リモコンをわざとらしく手にして、勃起を見せつけるようにしてベッド脇に立ち尽くす大智は、ひどく野性味の強い酷薄な表情を見せて口許を歪めていた。ただし、長い射精が終わり、荒い息だけをくりかえし吐くようになったころにはリモコンで電源を止めて、それからひどくやさしく、広く包み込むようにしてオレを強く抱き締めたのだが……。
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