ハロウィントリップ!〜異世界で獣人騎士に溺愛された話〜

のらねことすていぬ

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6. 足りない



「……っ、すまない。平気か?吐き出してくれ」
「ぅん、ん」

 全部、口で受け止めた……と思ったら、彼は一瞬で俺の口から抜き出していたみたいだった。地面にびしゃりと零される。それでも量の多い粘つくそれをなんとか嚥下して、ようやく息をつく。

 見上げると、はぁと濃いため息をつく男と目が合った。凄絶な色気に当てられてクラクラする。普通だったら、これでさっぱりした相手に料金をもらってさようならなんだけど……。

「……お兄さん元気だね」
「まだ足りない」

 そうだろう。彼の物は一度出したというのが信じられない位に硬いままだ。獣人は精力的にも逞しい人が多いみたいで、今までのお客さんにも一回じゃあ収まらない人はいた。そんな時はもう一回抜いてあげてたんだけど……この人、今までのお客さんより元気だな。もう一回で済むんだろうか。これもサービスのうちだと手を伸ばすが、逆にその手を大きな掌に捕まえられた。

「俺も触っていいか?」
「いいですよ、頭以外なら」

 小っちゃくても男の体だし、ごつごつしてて楽しくないだろうけど、俺の体を弄って興奮するお客さんもいることはいた。太い腕に軽々と引き上げられて抱き込まれる。彼の服が汚れるなんてことも忘れて、ほんのり香るさわやかな匂いを吸い込んだ。


「……口付けは?」
「いい、ですけど……」


 いいですけど、あなたの精液飲んだばっかりですよ、と続けたかった言葉は彼の口に吸い込まれていった。唇が、驚くほど繊細にそっと合わされる。熱い舌に唇をたどられて思わず背筋が震えた。あっという間に咥内に潜り込んできた舌にぺちゃぺちゃと音がするくらい口の中をかき回されて、息継ぎもできないくらいだ。

 キスするだけでこんなに気持ちいいなんて。脳みそがクラクラして溶けそうだ。唇に気を取られている間に、いつの間にか大きな手が胸元に潜り込んできていた。服の上から指で何度も胸の突起を弄ばれ、腰の奥にじわりとした快感が伝わる。

「っぁ!」

 思わず発してしまう嬌声までも飲み込まれて、熱い掌が下肢をたどる。下肢をさすられると恥ずかしいくらいあっという間に固くなった。服の上から爪先で虐められ、まずい、と首を必死に振った。

「ん、はぁ、あ、ちょ、ちょっと、」
「どうかしたか?」
「……っ、なんか、おれ、へん……!」
「変?」

 コクコクと頷いて距離を取ろうとするが、その間にも首筋に吸い付かれてますます快感が煽られる。時折甘噛みされて当たる牙すら今は刺激にしかならない。

「ん、っや、やばい……、でそう……!」

「でそう? 服の上から触っただけなのにか?」


 驚いたように言われて、恥ずかしさに唇を噛んで睨みつける。これだけキスも愛撫も上手いような経験豊富な男には分からないだろう。

「……可愛いな」
「っひぁ!」

 あっさりと俺のズボンに手を差し込んだ男は、もう先走りで濡れている陰茎を掴む。掌で扱かれて、強すぎる刺激にがくがくと膝が震えて力が入らない。

「やっぱりここじゃ満足できない。近くに馬車を待たせてある。宿へ行ってもいいか?」

 低い声でそう囁かれて、俺は宿に行ったらどうなるかなんてことも考えずに頷いていた。

















 力の抜けた体を抱えられて、馬車に連れ込まれる。煽られるだけ煽られた体をぐったりと男に預けた。宿を告げる慣れた様子に、今まで何人の男女が彼の毒牙にかかったんだろうか……なんて勝手な妄想をしてしまった。毒牙というのは失礼だろうか。多少強引なところもあるけど、彼は一貫して俺の嫌がることも痛いこともしないし、むしろ欲されていると勘違いしてしまうほど情熱的だ。

「遅くなったが……俺の名前はアズラーク・イサウロスという。お前は?」
「んっあ、ぁあ、そ、こで話すな!」

 乗り込んだ馬車は驚くほど上等なものだったが、彼の膝の上で悪戯されて乗り心地どころじゃない。上着をはだけさせられて唇と舌で乳首を責められて、こんなところでやめろ、と手を突っぱねる。馬車に乗り込むときだって、ぼろきれのような俺を見て従者さんが目を丸くしていた。その馬車の中で厭らしいことなんて……と頭を振るのに、彼、アズラークは意に介していないようだ。


「すまん。だがこんなに可愛いものを見せつけられて、触るなというほうが無理だろう。」
「ひ、ぁあ、やぁ……!」

 音を立てて吸い上げられて声が我慢できない。もう一方の乳首も指先でつままれ、鋭い刺激に息が乱れる。快感が胸の先から股間にきゅうと流れていく。

「名前は?」
「んっ……、サタ、」
「サタ? 変わった名前だな。……出身は?」
「ん、や、やぁ、……!もうやだ……ぁ!」


 もうダメだ。胸だけしか触られていないのに我慢できない。もっと決定的な刺激が欲しい。頭の中がぐずぐずに煮え立って気持ち良くて蕩けそうだ。なのに尋問みたいにあれこれ聞かれて俺は首を横に振る。

 いつの間にか目的地に着いたらしい馬車から降ろされると、やたらと豪奢な建物がそびえたっていた。幸いなことに馬車は裏口に停められているみたいで人気はないけど、それでもこの宿の格式が高いのが分かる。

 予想していた『連れ込み宿』とずいぶん違う気がする。というか、ここの料金のほうが俺の料金より高いんじゃないか?これはなにかの間違えじゃないかとシャツを引っ張る。快感に浮足立っていた心が急速に冷えていく。

「……まさか、ここ?」
「嫌だったか?」
「いや、嫌っていうか……」

 金は持ってそうだと思ってたけど、いつもこんなところ使ってるのか。たしかにここに連れてこられて喜ばない女はいないだろう。

「これなら大丈夫だ」

俺みたいな奴の顔を見られたらまずいと思ったのか、俺を頭からすっぽりマントでくるむ。これならいかにもスラム街の住人らしい汚い服も隠れる。貧弱で地味な俺の顔や体も。

「まあその方がいいと思うけど……て言うか、チェックインもしないなんて、どんだけ慣れてんだよ……」


 自分で言ったことにちょっと傷ついて、俺はマントの中で身を固くする。こんなところでますます住んでる世界の違いを見せられるなら、あの汚い路地裏のほうがマシだった気すらする。こんな極上のホテルで極上の男とのひと時を楽しまないなんてバカだ……そう思いながらも、唇を噛みしめた。


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