まいにち、晴れて

満奇

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坂本凪の回想

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俺は文高と二人兄弟で、父母を入れて4人家族だった。

 暴力とかそういうことがあったわけじゃないけど、家を出て、外の世界を知ってはじめてネグレクトも立派な虐待であると知って、あぁあれは虐待だったんだ・・・と思った。

 ただ、うちの場合、父母は弟の文高を溺愛し、俺だけに興味がなかった。優秀で外見もいい文高と俺の扱いは次第に差が大きくなって、家は俺にとって息苦し場所でしかなくなった。

 その息苦しさに拍車をかけていたのが、文高だ。

 両親は俺を空気みたいに扱っていて、それはもう慣れたものだったし、過干渉よりは良いかなと考えていたくらいだった。でも、文高は違った。溺愛されて育った文高は、両親に愛情を示してもらえない俺を下に見るようになる。1歳しか年の離れていない俺たちは、中学生にもなると文高の方が完全に身体が大きく力も強かったため、どれだけ理不尽な命令をされても、受け入れざるを得なかった。

 文高と両親は理想的な家族だ。

 あたたかくて優しくて素敵な家族。

 でも、その中に入れない俺はあたたかさの隣で冷たい場所にいる。その感覚は今でも失われていないし、消えることはないと思う。



 そして、決定的なことが起こったのが、俺が高2、文高が高1の夏だった。

 俺は男に恋してしまったのだ。

 この高校生のときの出来事もあって、辻に恋したとき、男に恋したことを受け入れられないという状態にはならなかった。ただ、俺は男が好きというわけではない。

 俺は、俺を肯定してくれる人を好きになってしまう。辻に惹かれた理由もそれだった。自分を認めてもらえない時間が長すぎ卑屈に育ってしまった俺は、俺という存在を受け入れてくれる人、さらに言うなら肯定してくれる人に恋をする。暗闇から救い出してくれる気がして、それを望んでいるわけではないのに、心は彼ら彼女らに近づきたがる。

 だから、好きになったのは高校生まではずっと女だった。男に恋してしまったのには驚いたが、冷静に分析すると自分は性別よりも、肯定とかそういうことを重視していると気づいた。



 ただ、恋しただけならよかった。けど、最悪なことに、それが文高に気付かれてしまった。同じ高校に通っていたせいもあると思う。きっと同級生を友情ではない目線で見つめていたからばれたんだろう。それからは、同級生に俺が恋慕していることを暴露すると脅して遊んでいた。

  

 苦しい時に支えてくれるだろう両親の愛もなく、実の弟に虐げられ、恋にも悩む心は限界を迎え、俺はひとつの決断を下す。

 それが大学進学を機に家を出ることだった。

 親族の中で唯一俺の見方をしてくれていた叔母に連絡をとり、算段を立てた。「叔母が学費くらい出さないと体面がわるいんじゃない?」と説得してくれて、金銭面はなんとかなったし、文高に知らせずに家を出ることができた。

 ただし、地元から遠く離れた大学ではなく、叔母と定期的に会える場所にしてしまったため、文高と再会してしまった。バイトもしていたし、もしかすると、この街の大学に進学しているのかもしれない。

 もっと細心の注意を払うべきだった。後悔しても、もう遅い。

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