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知らない街に飛ばされた俺は周辺を見渡した。近くに飲食店が開いているのを見つけて、俺はそこへ向かった。
お店の中はカウンター席と窓際にテーブル席が幾つかあった。店主は暇そうに新聞を読んでおり、客の姿はなかった。
「あの、すいません」
俺が声を掛けるまでその太った店主は気づきもしなかった。
新聞を降ろしこっちを見た。
「酷い顔だな」
そう言われて初めて俺は具合が悪いことに気づいた。まるで、軽い乗り物酔いにあった感じだ。
しかし、ストレートに客に対して肘をついたまま顔だけこっちを向けて話すあたり、接客ができた人とは思えなかった。だが、そんなことは今はどうでもいい。
「ここはどこなんだ?」
「なんだ、こんな時間から酔っ払ってるのか? そんな奴に酒は売らないぞ」
「頼む、教えてくれ。ここはどこだ?」
俺はカウンターに寄りかかりながら店のおっさんに聞いた。
「パーリアク」
おじさんは呆れながらそう答えた。
「それはこの地域の名か?」
「そうだよ、何言ってんだ?」
「新聞を少し見せてくれないか?」
「今読んでるところだぞ。それをお前が現れたんだろ」
俺はここで通じるか分からないが、カロンの国の貨幣を出してカウンターの上に置いた。
「この国の通貨じゃないな。金がないなら帰ってくれ」
(やはり、ここはカロンじゃないのか)
俺は指輪をはずし、今度はそれをカウンターに叩きつけるように置いた。
指輪を見て「正気か?」と言いながら指輪を受け取り、読み途中だった新聞を渡した。
俺は新聞を読んだ。だが、カロンではないこの国では言葉が違っていた。新聞には写真や地図が載っているのしか分からない。
俺は最初の一面を指差して店の人に聞いた。
「この記事、なんて書いてある?」
「なんだ、読めないのか?」
男はちょっと覗いてから俺を見て「アルビオリックスの大公様がこの辺に来訪するって話しだよ」と答えた。
「大公!?」
「悪いことは言わない。外には出ないようにした方がいい」
俺の嫌な予感が的中したようだ。
◇◆◇◆◇
俺は店を出ると、これからのことを考えた。
もし予想が当たっていれば、この国にいるのは危険だ。戦争から遠くへ行くにはどうしたらいいのか?
地図があると便利なのだが。しかし、ここの通貨は持っていない。
また、絵を描いてお金を稼ぐか? いや、そんな時間はない。
(とにかく歩こう)
俺は店を出て直ぐの道の左右を見た。自動車が通れる道に沿って左右両方とも似たような建物が並んでいる。
クソッ、どっちへ歩けばいいのかも分からない。
「おい」
突然、右の二の腕を掴まれた。
振り向くと、中年の男性が俺の腕を掴んでいた。
「何してる? 待ち合わせ場所を間違えてるぞ」
誰かと勘違いしているようだが、それを教える前に男は強引に引っ張って連れ出した。
そして、近くにとめてあった自動車の後部座席に座らされた。
なにがなんだか分からず、気づけば車は発進した。
本来なら抵抗すべきで、車に一緒に乗るべきではなかった。だが、あの場で断って、また一人になった俺があの場所から移動するのは無理だった。
ろくに前世で海外へ行って旅してきたわけでもないし、こういった見知らぬ土地での適応力はこの世界に来てかなり経ってもまだ未熟なままだった。
俺には誰かに頼る必要がある。例え勘違いであったとしても、この人に付いていくしかない。その後のことなんて知らない。アドリブでいくしかないのだから。
◇◆◇◆◇
自動車は細い道に入っていき、アパートの手前でとまった。
運転手が降りたので、自分も自動車を降りた。
男は何も言わずに建物の中に入っていく。
入口直ぐに突き抜けの内階段があり、各部屋のドアが閉まっている。
その上の方からは音楽が聞こえてくる。アメリカ人が好きそうな音楽だ。
男は無言のまま階段を登り始めた。俺はそのそばに付いていった。
建物の3階に到着すると、ドアの前でがたいのいい見張りの男性がドアを背に向けて立っていた。見張りだと思ったのは、俺達に気づいた男の目線が鋭かったからだ。
まずいと思ったのは、アパートに入っていく辺りからだったが、見張りの男を見てそれは確信になった。かと言ってやっぱり人違いでしたと言ってこの場から立去れるのかも不安だった。
結局、俺はなにもしないまま見張りの男が避けて中年男がドアを開けて入ると、俺はその中に入っていった。
土足のまま入っていくと、最初は廊下になっていて、どんどん奥へと入っていく。その途中には両サイドにそれぞれドアがあったが、どれも閉まっていて中の様子が分からない。
俺は目の前の男を見た。安っぽいスーツに黒く伸びた髪。背中姿は俺のよりはるかに大きい。
奥の部屋に入ると、そこには二人の青年と老人、そして壁には地図が貼られてあった。
俺が欲しかった地図だ。
その地図にはなにか色々と書かれており、赤い線で大通りの部分を引いてある。
「見つかったのか?」椅子に腰掛けていた老人が中年男に向かって聞いた。
白髪の老人にはシワがあり、腕は細くなっている。
老人以外の青年二人は立っていたままだった。
中年男はタバコを口にくわえライターに火をつけ、タバコを一度吸ってから老人の質問に答えた。
「待ち合わせ場所を間違えていやがった」
老人は自分の方を見た。
「本番もその調子で間違えるなよ」
自分より弱いであろう見た目でも貫禄のある威圧を俺は間近で受けた。
(この人、どういう生き方をしてきたんだ?)
「すいません」
俺はわけが分からないままとりあえず謝った。怒られてしまうとなんでか謝ってしまう癖があった。
「それじゃ、計画の確認だ。いいか、一度しか言わないからな」と、中年男はいきなり本題に入る。
「予定では大公はこの道を通っていくことになっている。車数台でその中に大公の乗っている車がある筈だ。お前達はその車を狙うんだ」
そう言いながら、手榴弾を3つテーブルの上に置いた。
「これを使え」
俺はとんでもないものに巻き込まれたと思った。だが、もしかするとこれで通報でもすれば、この計画は実行できなくなるのではないのか?
俺が転生されたのはこの事件を防ぐ為だったのか!?
お店の中はカウンター席と窓際にテーブル席が幾つかあった。店主は暇そうに新聞を読んでおり、客の姿はなかった。
「あの、すいません」
俺が声を掛けるまでその太った店主は気づきもしなかった。
新聞を降ろしこっちを見た。
「酷い顔だな」
そう言われて初めて俺は具合が悪いことに気づいた。まるで、軽い乗り物酔いにあった感じだ。
しかし、ストレートに客に対して肘をついたまま顔だけこっちを向けて話すあたり、接客ができた人とは思えなかった。だが、そんなことは今はどうでもいい。
「ここはどこなんだ?」
「なんだ、こんな時間から酔っ払ってるのか? そんな奴に酒は売らないぞ」
「頼む、教えてくれ。ここはどこだ?」
俺はカウンターに寄りかかりながら店のおっさんに聞いた。
「パーリアク」
おじさんは呆れながらそう答えた。
「それはこの地域の名か?」
「そうだよ、何言ってんだ?」
「新聞を少し見せてくれないか?」
「今読んでるところだぞ。それをお前が現れたんだろ」
俺はここで通じるか分からないが、カロンの国の貨幣を出してカウンターの上に置いた。
「この国の通貨じゃないな。金がないなら帰ってくれ」
(やはり、ここはカロンじゃないのか)
俺は指輪をはずし、今度はそれをカウンターに叩きつけるように置いた。
指輪を見て「正気か?」と言いながら指輪を受け取り、読み途中だった新聞を渡した。
俺は新聞を読んだ。だが、カロンではないこの国では言葉が違っていた。新聞には写真や地図が載っているのしか分からない。
俺は最初の一面を指差して店の人に聞いた。
「この記事、なんて書いてある?」
「なんだ、読めないのか?」
男はちょっと覗いてから俺を見て「アルビオリックスの大公様がこの辺に来訪するって話しだよ」と答えた。
「大公!?」
「悪いことは言わない。外には出ないようにした方がいい」
俺の嫌な予感が的中したようだ。
◇◆◇◆◇
俺は店を出ると、これからのことを考えた。
もし予想が当たっていれば、この国にいるのは危険だ。戦争から遠くへ行くにはどうしたらいいのか?
地図があると便利なのだが。しかし、ここの通貨は持っていない。
また、絵を描いてお金を稼ぐか? いや、そんな時間はない。
(とにかく歩こう)
俺は店を出て直ぐの道の左右を見た。自動車が通れる道に沿って左右両方とも似たような建物が並んでいる。
クソッ、どっちへ歩けばいいのかも分からない。
「おい」
突然、右の二の腕を掴まれた。
振り向くと、中年の男性が俺の腕を掴んでいた。
「何してる? 待ち合わせ場所を間違えてるぞ」
誰かと勘違いしているようだが、それを教える前に男は強引に引っ張って連れ出した。
そして、近くにとめてあった自動車の後部座席に座らされた。
なにがなんだか分からず、気づけば車は発進した。
本来なら抵抗すべきで、車に一緒に乗るべきではなかった。だが、あの場で断って、また一人になった俺があの場所から移動するのは無理だった。
ろくに前世で海外へ行って旅してきたわけでもないし、こういった見知らぬ土地での適応力はこの世界に来てかなり経ってもまだ未熟なままだった。
俺には誰かに頼る必要がある。例え勘違いであったとしても、この人に付いていくしかない。その後のことなんて知らない。アドリブでいくしかないのだから。
◇◆◇◆◇
自動車は細い道に入っていき、アパートの手前でとまった。
運転手が降りたので、自分も自動車を降りた。
男は何も言わずに建物の中に入っていく。
入口直ぐに突き抜けの内階段があり、各部屋のドアが閉まっている。
その上の方からは音楽が聞こえてくる。アメリカ人が好きそうな音楽だ。
男は無言のまま階段を登り始めた。俺はそのそばに付いていった。
建物の3階に到着すると、ドアの前でがたいのいい見張りの男性がドアを背に向けて立っていた。見張りだと思ったのは、俺達に気づいた男の目線が鋭かったからだ。
まずいと思ったのは、アパートに入っていく辺りからだったが、見張りの男を見てそれは確信になった。かと言ってやっぱり人違いでしたと言ってこの場から立去れるのかも不安だった。
結局、俺はなにもしないまま見張りの男が避けて中年男がドアを開けて入ると、俺はその中に入っていった。
土足のまま入っていくと、最初は廊下になっていて、どんどん奥へと入っていく。その途中には両サイドにそれぞれドアがあったが、どれも閉まっていて中の様子が分からない。
俺は目の前の男を見た。安っぽいスーツに黒く伸びた髪。背中姿は俺のよりはるかに大きい。
奥の部屋に入ると、そこには二人の青年と老人、そして壁には地図が貼られてあった。
俺が欲しかった地図だ。
その地図にはなにか色々と書かれており、赤い線で大通りの部分を引いてある。
「見つかったのか?」椅子に腰掛けていた老人が中年男に向かって聞いた。
白髪の老人にはシワがあり、腕は細くなっている。
老人以外の青年二人は立っていたままだった。
中年男はタバコを口にくわえライターに火をつけ、タバコを一度吸ってから老人の質問に答えた。
「待ち合わせ場所を間違えていやがった」
老人は自分の方を見た。
「本番もその調子で間違えるなよ」
自分より弱いであろう見た目でも貫禄のある威圧を俺は間近で受けた。
(この人、どういう生き方をしてきたんだ?)
「すいません」
俺はわけが分からないままとりあえず謝った。怒られてしまうとなんでか謝ってしまう癖があった。
「それじゃ、計画の確認だ。いいか、一度しか言わないからな」と、中年男はいきなり本題に入る。
「予定では大公はこの道を通っていくことになっている。車数台でその中に大公の乗っている車がある筈だ。お前達はその車を狙うんだ」
そう言いながら、手榴弾を3つテーブルの上に置いた。
「これを使え」
俺はとんでもないものに巻き込まれたと思った。だが、もしかするとこれで通報でもすれば、この計画は実行できなくなるのではないのか?
俺が転生されたのはこの事件を防ぐ為だったのか!?
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