探偵主人公

アズ

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13章 見える

01 依頼

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 かつては無人島だった島には開発事業が行われ、今では無人では全くなくなっていた。発電所に労働者や店などちょっとした町が出来上がり、そこの収入源を次の開発事業の費用に回し、更に開発を進め発展させていく。基本、代理人がいるのでその人にほとんど任せ、自分はその代理人からの定期的な報告と、必要な書類のサインをし、あとはのんびりたまに事件を解決するだけで、気づけば莫大な収入を得るのだ。これが現実世界でも起こったらいいなとは思うが、そこは現実と空想の境界線なのだろう。それでも、同じゲームをしているプレイヤーからは自分を羨ましく思う者もいるようで、何度か自分に接触しフレンドになって近づけられないかと企むやからが増えた。無論、自分達も利益にあやかりたいという魂胆であるのは見え透いており、いちいちそれに反応する必要もないのだ。したがって、私は居留守を使い絶対に会わないようにしている。
 因みに私の屋敷には自分が許可した来客者でなければ入ることは出来ない仕組みとなっている。よく現れるのはホランド警部にマーニー。まぁ、警部以外の警察もやってくるが、最近はリッター刑事に会うことはほとんどない。今頃、リッター刑事はどうしているんだろうか? かわりに別の者が出入りするようになった。前回のクエストでまさか少年が自分に弟子入りをしたのだ。名をトム・イェール。彼のことはトムと呼ぶことにしている。
 彼は何かと私に沢山質問をしてくる。探偵として必要なことや、何をしたらいいのかとか。子どもだから沢山質問してくるのは分かるが、私の一人の落ち着いたあの時間が恋しくなる。
 しかし、それも時間の問題だ。
 書斎のテーブルの上には図面がある。弟子も出来たことだし、そろそろ探偵事務所も造ってもいいかもと考えて受注していた。
 既に作業にとりかかっており、あとは完成を待つだけだ。事務所は屋敷のそばに設置することにし、今後は私に依頼する人はそこへ向かうことになる。弟子にはその受付をさせ、私はその間屋敷にいるという考えだ。そもそも依頼人が私の屋敷に入って来ていたのをずっと問題にせず放置していた私がいけなかったのだが。
 すると、階段を走って駆け上がる騒がしい音がした。直ぐに誰か分かった。
 書斎に入ってきたのは、トムだった。
「トム、何度も言いますが階段を走らないようお願いしますよ」
「すいません、先生。でも、お客さんが来たんです」
「依頼人が来たとしても走る必要はありませんよ。依頼人だって少しは待ってくれるでしょう」
 ジークはそう言ってから、トムと一緒に下の階へと降りた。
 応接間でその依頼人とやらに挨拶をお互いすると、二人は椅子に座った。トムは「お飲み物をご用意します」と言って一旦引き下がった。
「お子さんですか? 随分礼儀正しいですね」
 お世辞だ。階段を走って駆け上がる子どもが礼儀正しいわけがない。
 依頼人をよく見ると、目は大きく華奢で赤いマニキュアをしている。若い女性だ。年は20代だろう。
「いいえ。あれは私の子ではないんです。弟子でして。と言ってもさせてやれることは雑用くらいですが。それより、私にご用とのことですが?」
「ええ。実は事件を解決して欲しいんです」
「事件? それは強盗? 誘拐? まさか殺人?」
「ええ、殺人です」
「すみませんがお名前を訊いても?」
「イヴリン・モラーヌ」
「では、モラーヌ。殺人事件を解決して欲しいということなんですね?」
「はい。殺されたのは彼氏で、彼とは結婚予定でした」
「それはそれは……お悔やみ申し上げます。それで、予定ということは既に告白は終えていると?」
「いえ、多分そうなるだろうと」
「ああ、なる程。それで、どのようにして彼は亡くなられたんですか?」
「その前に幾つかの不幸が彼に起きまして」
「聞きましょう」
「最初は家の玄関のシャンデリアが落ちて、下にいたリュー・メレディスが下敷きになりまして。幸い怪我だけで済んだのですが、家のシャンデリアが普通落ちると思いますか? 私は今すぐ彼に教会へ行くべきだって言ったんです。でも、彼は本気で信じてもらえなくて大袈裟だよって言うんです。頭を咄嗟に庇った腕を骨折したのにですよ!」
「つまり、事故だったと?」
「え?」
「確認ですよ。それで、事故だったんですか?」
「ええ……それ以外にあります?」
「例えばですが、どうしてシャンデリアが落ちたのか調べようとはしましたか? その結果が知りたいのです」
「いいえ。特にそこまで頭は回りませんでしたけど、何か問題でも?」
「どうか、機嫌を悪くしないで下さいね? あなたなシャンデリアは落ちる筈はないと仰ったんです。確かにあれが落ちるくらいならシャンデリアがある家は無くなっているでしょう。その考えは間違っていません。しかし、事実としてシャンデリアは落ちたんです。だとすれば、シャンデリアは落とされたと疑いませんか? もしくは何らかの原因があったかもしれない。それを全く気にしなかったんですか?」
「どうやら私は自分が思った程頭が賢くなかったみたいね。でも、分かるかしら? 好きな人が家の中で死ぬかもしれない直面だったのよ。私はパニックになったわ。あなたは私の話しを聞いても冷静にそうやって的確に指摘できるんでしょうが、私にはとても……私が相談を受ける側なら同情くらいはするわ」
「ええ……大変失礼しました」
「分かってもらえて良かったわ」
「しかしですよ、シャンデリアが急に落ちたというのは気になります。あなたもそこは気にされている。しかし、私とあなたとでは決定的にものの見方が違うようだ。あなたはこれを不幸な事故だと見ている。だから、彼に教会に行きお祓いをしてもらうよう説得したわけです。しかし、私はこの時から殺人の計画は行われたと見ている。しかし、問題があります。それにはシャンデリアの状態が知りたいのです」
「彼が新しいものにかえて、その落ちたシャンデリアはその時にダメになったので彼が処分して今はないと思います」
「彼も事故だと思ったわけですね?」
「その時はそう思いました。だって、あなたの考えではまるで犯人が私達の家にいたことになるじゃないですか。それ以外に考えられます?」
「まさに、あなたの仰ることを想像しました」
「まさか!」
「しかし、そのまさかだと思いますが? でなければ偶然シャンデリアが落ち、そこに偶然彼がその下にいた。とんでもない偶然ですね! まるで偶然と簡単に説明が出来ないくらいに。そう、だからこそあなたはこの異常さに察知できたんです。しかし、せっかく気づいたのにあなたは警察にではなく教会を頼ろうとした。それは何故ですか?」
「きっと信じてもらえないわ」
「教えて下さい」
「私、幽霊が見えるの」
「幽霊?」
「やっぱり彼と同じ! 男の人は決まって信じようとはしない。それは見間違いだ、勘違いだ、夢だとか言うんでしょ?」
「そうは言いません。あなたが見たものが何なのかを具体的に教えてもらえませんか?」
「え? ええ……いいですよ。私が見たのは小さな光よ。夜にだけ見えるの。外からそれは見えたわ。まるで火の玉のようなオレンジ色をしていたわ」
「光……」
「私の家系は代々そういうものが見えるみたいなの。でも、決まって何故か女性だけよ。私の母も、おばも幽霊を見ているわ。それぞれ、見た内容は違うけれど」
 ジークは顎を擦りながら次の質問をした。
「いつからその光を見るようになりましたか?」
「光は私が実家を出て彼の家に移り住んだ時からね」
「では、光はその時から」
「光はね」
「光以外もあるんですか?」
「ええ。私の実家ではね。本当は実家が呪われてるんじゃないかって思ったんだけど、移り住んでもまだ変なものを見るんだから、やはり血筋なのかしらねぇ」
「しかし、私が思うにそれはランタンではありませんか?」
「ランタン?」
「外からあなた達の様子を見ていたとか? 誰かに狙われていた。だから、不幸が起きた。しかし、それこそその人物が仕組んだ殺人の始まりだった」
「いやいや違うわ。あり得ませんよ。だって、見たのは二階の寝室よ? 地上からは離れているのにどうやって二階からそのランタンの明かりが見えるのよ」
「二階だったんですか?」
「ええ。それで、私が驚いて彼を起こしている間にその光はどこかへ消えてしまったの。彼も見ていたらきっと私の言うことを信じた筈よ」
「なる程。これは想像したのよりずっと難しいようですね」
「ええ! まさにあなたの言う通り警察はこの話しを聞いただけで頭がパニックになっていたわ。頭を抱えまるでニワトリのように情けない声をあげてね」
「それは冗談ですよね?」
「ジョークって言って下さいよ。ジョークはお嫌い?」
「あなたの大事な彼氏が亡くなったというのにジョークが言える元気がおありなんですね?」
「あら、失礼な方! これ程無礼だとは思いませんでしたよ。ジョークというより愚痴だったかしら。警察に対するね。確かに、シャンデリアが落ちた時は疑いもしませんでしたよ。予告があったわけでもないんですから。でも、次の不幸で流石の私達も誰かに狙われていることぐらいは気づきましたよ。いや、あなたからしてみれはま、ようやく気づいた鈍感な私達に見えるのかしら?」
「申し訳ありません、モラーヌ。どうか続けて下さい」
「宜しい。それで次に起こったことですけど、約一ヶ月後に彼が外に一人で出掛けている最中、彼の運転する車が急にブレーキが効かなくなりまして、死にかけたんです。彼はブレーキペダルを何度も踏んでも車は止まらなかったそうです。それで運転席のドアを開けて茂みのある場所に飛んで脱出したんです。車は近くの木に衝突し車は燃えました。それっから彼は車を運転するのをやめたんです」
「誰かが車に細工したとか?」
「私も彼もそう思い警察に相談しました」
「因みに車の整備は彼が?」
「ええ。私は車のことは全く」
「彼が最後に車の整備をしたのはいつか分かりますか?」
「多分、三ヶ月前です」
「では、事件前までは車は問題なかったんですね?」
「はい、ありませんでしたよ。なんなら私なんて事件の三日前に彼の車に乗っていたんですから」
「なる程。因みに事件前だと最後に乗ったのはいつになりますか?」
「事件前日の夕方前までになります」
「では、犯人が細工が出来るとしたらそれ以降になりますね。車は因みにどこにいつもとめてあるんですか?」
「車は家の横になります。そこから見える窓は風呂場にある小さな窓と、キッチン側の窓、二階は彼の仕事部屋になりますわね」
「では、夜になればほとんど見られることはないんですね」
「そうなりますね」
「それで、実際車のブレーキは壊されていたんですか?」
「警察の調べでは壊されてあったと。そう言えば……確か、光が見えたのは事件の2日か3日前だったような」
「それは確かですか?」
「だいたい近かったと思います」
「なる程! それで、その後は何がありましたか?」
「その後です。彼は……大好きな彼があんなことになるなんて」
 すると、彼女は思い出し涙を流し始めた。
 ジークはそっとハンカチを渡した。
「ありがとうございます。私……あなたに色々と酷いことを言ってしまったわ……」
「いえ、お気になさらず」
「そうよね。お互い様よね」
 モラーヌは涙を拭うと赤くなった目をして話しの続きをしだした。
「その後です。彼が殺されたのは」
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