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ルシファウス・グレイモアは英雄王である
しおりを挟むそもそも、ルシファウス様という名前を私は知らない。
例えばアレスやルーファスという名前は、古の英雄の名前だけれど、私の知る限り、王国史にはルシファウス様という人は出てこない。
これでも真面目に王妃教育を受けてきたのだから、私の知識は確かだという自信はある。
色々あって今はこんな私だけれど、ワイアット様に捨てられるまではそれなりに優秀だったのだから。
グレイモアというからには、王家の方なのだろう。
ワイアット様も、ワイアット・グレイモアという名だ。
王家の血筋のものだけがグレイモアを名乗ることができる。
つまり、ルシファウス様はワイアット様のご先祖様ということかしら。
ワイアット様とは髪や目の色は違うけれど、顔立ちはそういえばどことなく似ている気がする。
二人ともとてもお美しくていらっしゃる。
じっと見つめていると、ルーファスさんの顔にワイアット様が重なるような気がして、私はその妄想を打ち消した。
ワイアット様に恋をして、ルーファスさんのことを──好きかどうかはまだよくわからないけれど、こんな関係になっても悪く思っていないというのは、私はやっぱり面食いかもしれない疑惑が強くなってしまう。
そんなことはないはずだ。
愛や恋というのは、心と心のつながりであって、顔立ちは関係ない。
関係ないと思いたい。
そうじゃないと、私、顔がいいというだけで恋をしてしまう軽薄な女になってしまうもの。
「リュミ。そんなに、穴が開くほど見られると、つい襲いたくなってしまうな」
私は眠っているルーファスさんを眺めながら、ルシファウス様は一体どんな人だったのだろうと考えていた。
ベッドの上でぎゅっと抱かれているので、身動きが取れない。
昨日は──すごかった。
ぐちゃぐちゃに泣かされて、ひたすらに気持ちよかったことだけは覚えているのだけれど、途中で意識が飛んだらしくて、記憶は曖昧で朧げだった。
目覚めると、まだ私の中にルーファスさんが入っていることに気付いたので、じっとしているよりなかったのだ。
がっしりと体は抱きしめられているし、少し動くと、私の体の中にあるルーファスさんの自身の感触がして、動かないようにして息を潜めながら、考えごとをしていたというわけである。
「おはようございます、ルーファスさん。眠れたのですか?」
「あぁ。五百年ぶりの睡眠だ。眠るというのはいいものだな。眠っている間は何も考えないでいられる。それに、お前がいた。いい夢も見ることができた」
「いい夢、ですか」
ルーファスさんは笑いながら姿勢を変える。
私の上に覆いかぶさる形になって、私の頬や首筋に口付けながら、ゆるゆると腰を動かした。
「ん……っ、朝、から、だめ……っ」
「今が朝かどうかわからないだろう。よく眠ったからな。夕方かもしれないし、五百年の時が経って、屋敷の外が滅んでいるかもしれない」
「っ、ぁ、あ」
ルーファスさんは私の中に僅かに芯を持った肉杭を擦り付けるようにした。
中で硬く、太く立ち上がっていくのがわかり、私は眉を寄せる。
だってずっと、中に入っていたのだもの。
考え事をしていたのは、それについて考えないようにしていたからで。
意識をすると勝手に締め付けてしまって、気持ち良くなりそうになってしまうから。
だから、我慢していたのに。
「ぁ、あん、ん、ん……っ」
「濡れているな、リュミ。俺を咥えたまま、我慢していたのだろう。お前は本当に、愛らしいな」
「ちが……っ」
「屋敷の外の世界が滅んで、俺と二人きりだ。取り繕う必要がどこにある? 素直に欲しいといえば、もっとよくなれる」
「ルーファスさん、何か、したの……?」
ルーファスさんは口角を意地悪く吊り上げただけだった。
緩慢なぐらいにゆっくりと中を押し上げられて、奥の入り口を先端でなぞるように、ぐるりと掻き回される。
一気に体が熱を持ち、私は腰を跳ねさせた。
信じられないぐらいに深いところに、体の奥に、ルーファスさんが届いている。
奥を押し上げられると泣きたくなるような、逃げたくなるような快楽の坩堝の中に落とされるようで、はらはらと涙がこぼれる。
「あっ、あぁ、おく、ぐりぐりしたらやだぁ……っ」
「好きの間違いだろう。もう、細工をせずともすぐに気持ちよくなれるな。さんざん犯したからな、俺の形をすっかり覚えたようだ」
「わ、わたし、お話をしようと、思ってたのに……」
「話なら、今でもできる。少し、ゆっくりしよう。ほら、ゆっくり。いいところを、撫でてやろう」
「んぅぅ……っ」
最奥の気持ちいいところを、小刻みにとんとん突き上げていたルーファスさんは、気が変わったように熱杭をぎりぎりまで引き抜くと、最奥までの道を味わうようにしながら緩やかに動かし始める。
もどかしい刺激に私は、熱い吐息をついた。
「腰が揺れている。かわいいなぁ、リュミ。お前のお陰で機嫌がいいからな。今なら、なんでも答えてやろう」
「お話、これじゃ、できな……っ」
「頑張れ」
「ゃあん……っ、あ、ふ、ぁ……っ」
頑張れない。
だって、身体中がじんじんして、熱くて、癖になりそうなぐらいに気持ちがいいのだもの。
でも──。
「ルシ、ファ、さまぁ……」
「ん?」
「わたし、ルシ、ファウスさまを、知りません……っ、るーふぁすさんは、えいゆう、です。王国を、他国の侵略から、救った……」
「それが俺だろう」
「え……ぁ、あっ、だめ、そこ……っ」
愛液をぬらぬらと擦り付けながら、ルーファスさんは私の小さないやらしい突起を撫でる。
奥を激しく突いて欲しいのに、最奥にぴったりと先端を押しつけたまま、腰を動かすのをやめてしまった。
「ひん……っ、ぁ、やぁ……っ」
「ここに封じられたときに、俺の記録は抹消されたのだろう。しかし、出来事だけは残る。それは消えない。英雄王と呼ばれていた俺は、剣と魔導で他国からの侵略を退けたのだが──ルシファウスではなく、ルーファスという架空の騎士か何かの功績として、記録を残したのだろうな」
「るふぁ、さ……っ、やだ……」
「何が嫌だ?」
「っ、もお、つらいの……っ、いきたい、いかせてくださ……っ」
「はは……っ、愛らしいな、リュミ」
絶頂を迎える間際にするりと手が離れて、腰や腹を撫でられる。
曖昧な刺激が辛くて、私は両手を伸ばしておねだりをした。
私の中で熱く激っているのに、素知らぬ顔をしているルーファスさんが少し憎たらしかった。
私ぐらいでは、たいして気持ちよくないと言われているみたいで。
私は、必死なのに。
少しぐらいは私に夢中になって欲しいと、少し思う。
だって、それは、愛されているみたいだから。
腰を押さえつけられて、最奥を貫くように幾度も押し上げられる。
「ルーファス、さん……っ、る、ふぁ……あ、ああっ、いいの、いい、すき……っ」
「この体も顔も、お前の好みのようで何よりだ。お前があの王子に惚れていたというのが気に入らないが、あれの血も元を辿れば俺の血だからな」
「ん、ぁ、あ、ちがうの、わいあっとさまは、関係ない、です……っ」
「俺以外の男の名を呼ぶな。ひどくしそうになる」
もう十分、ひどくされている気がするけれど。
膝を抱えられて、体を折り畳むようにされる。
がつがつと、肉がぶつかるぐらいに激しく深く突き上げられて、これ以上ないぐらいに高みに、強引に連れていかれる。
「いぅ、うう……っ、あ、ひ……っ、ぁあああっ」
今が一体、いつなのか。
屋敷の外が滅んでいるのかどうかなんて、わからないし、どうでもいい。
与えられる快楽が全てになってしまったような感覚に身を委ねながら、私は悲鳴じみた泣き声をあげた。
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