すれ違わない二人の結婚生活

能登原あめ

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領地で新婚生活編

11 帰る場所を間違えている 4

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「まず、ヴァルから離れてくださいませ」

 マーラが大人しく離れてホッとした。
 いつもは穏やかで優しいアンジーのキリッとした表情に、惚れ直す!
 直すってなに?
 ますます惚れちゃう。
 格好いいぃ!

 気持ちを立て直したらしいマーラがふぅっと息を吐いてから話し出した。

「アンジー……これ以上隠しておけないから話すけど、ヴァルはね、昔から私のことを好きだったの」
「それはない」

 僕が即答すると、アンジーの口元が一瞬緩んだ。

「……もう、すっきりさせましょう? アンジー、あなたの妻という座を狙ってはいないわ。私は影でヴァルを支え」
「いらない、いらない」
「……ごほん、はっきり言うわよ? 私ヴァルの愛人に」
「なるわけないよ。アンジーさえいればいい。アンジーしか愛せないし、もういい加減にしたら?」

 僕の言葉にマーラが俯いてドレスを握る。

「マーラさんは、子どもと会えなくて寂しいんだと思っていました……でも、そうじゃないんですね」

 アンジーが静かに話す。

「私、お義母様に教えていただいたいい修道院を知ってますの。そちらでゆっくりされたらいかが?」

 それいい!

「いいね! マーラ、そうしなよ! 今すぐ連れてってあげるから!」

 僕が興奮気味に言うと、泣きそうな顔をしたマーラが実家に帰ると言った。

「そう? 多分明日にも迎えは来るけど……僕はアンジーの案を全力で推すよ!」
「マーラさん、遠慮なさらずともいいのですよ?」

 母様みたいに冷たく笑うアンジーに、僕が何度も力強く頷いていると、マーラが小さな声でごめんなさいと言った。









 部屋に戻った後、アンジーにすぐにお風呂に入るように言われた。
 確かにへんな臭いと胸元に口紅がついていて。

「アンジー、ごめん。僕はアンジーのものなのに」
「……お互いお風呂に入ったら、ゆっくり話そう?」
「うん、説明したい」
「ヴァル、わかってるから」

 何度も身体を洗ってすんすんニオイを嗅いで確認してから出ると、僕の部屋でアンジーが待っていた。

「アンジー! 待たせちゃった?」
「ううん、ヴァルのほうがお風呂が長いって知ってるから」
「そ、そう⁉︎」

 駆け寄って抱きしめる。
 あぁ、やっぱりアンジーは甘くていい匂い。
 珍しくアンジーが僕の腕の中で深呼吸している。

「さっきは、彼女の臭いがしていやだったの。……今は好きなヴァルの匂い」

 かわいい!
 ぎゅって抱きしめちゃう。
 
「ちゃんと聞こえていたから……ヴァルが私だけだって、彼女に離れろって言ってたの、聞こえたから……」
「うん、それは本当のことだから……今日のアンジーは格好よかった! もっともっと好きになったよ。アンジー、愛してる‼︎」
「うん……お義母様に教えてもらったことが、役立ってよかった。……ヴァルを取られたくなかったの。……私も、愛してる」

 きゅぅん。
 僕の妻、可愛すぎる‼︎









 翌日迎えに来たマーラの両親に、困ったらいい修道院を紹介すると伝えて送り出した。
 ずいぶんとマーラが大人しかった。
 なぜかあの古いようで前衛的な黄色と紫のドレスを着ていたからかなぁ!
 誰も強制してないはずだけど、反省してるように見せたかったのかも。

 そして僕たちは平穏を取り戻した。
 そうであって欲しい!
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