すれ違わない二人の結婚生活

能登原あめ

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領地で新婚生活編

10 帰る場所を間違えている 3

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「あら、甘いものなんて食べるの? まぁ、ふふっ……」

 やった!
 追い出すきっかけができた!

「食べないならマーラはその辺歩いてくればいい。僕は可愛いアンジーとお茶を楽しむから」
「……お茶はいただくわ。甘いものはやめておくけど」
「無理しなくていいよ。動いていたほうが何も考えなくていいんじゃない?」

 マーラがいたらアンジーに食べさせてあげられないし、かわいい笑顔を堪能できないじゃないか。
 
「……お茶は気分転換になるから……」

 アンジーが控えめに口を出す。
 マーラなんかに優しさを発揮しなくていいんだよ?
 アンジーは寛大で慈悲深くて、やっぱり天使なんだなぁ!

「ありがとう、本当にできた奥様ね。私に足りなかった部分だわ……っ」

 アンジーと一緒に、マカロンをいくつか選んで分け合うことにした。
 それからマーラのつまらない自慢話に適当に相槌をうちながらお茶を飲んだ。
 一体、なんだ。この時間は。

「……ちょっと失礼するわね」

 アンジーが、お花摘みに立った。
 この際だから、はっきりさせたい。

「マーラ、早く戻って新しい相手を探したほうがいいんじゃないか?」

 どうせ商会の金、使い込んだんだよね?
 昔っから男に貢がせていた記憶しかない。
 ジョンの兄たちが何人餌食になったことか。

 いっそのこと、戻ってきたカーターと結婚したらいいんじゃないかな?
 うん、お似合い。お似合い……だけど尻拭いするのは嫌だな。
 やっぱり、無難に次は歳とった金持ち男爵とか。

「…………」
「マーラハ、キレイダカラ、スグツギガ、ミツカルヨ」

 まぁ、アンジーほどかわいくないし、性格も悪いけどね。
 なるべく遠くで結婚してほしい。

「……それなら、……それなら!」

 いきなりマーラが抱きついてきた。
 ぶわっとキツイ香水を吸い込んで一瞬固まった僕の膝に乗る。
 
「ヴァル、私を愛人にして。あの子とは違って私はいろんなことして楽しませてあげるから」
「無理! くっさ‼︎」

 マーラの腕をはがそうと掴むと、わざと体を押しつけてくる。
 しつこい!
 僕の俺が縮こまって隠れてるぞ‼︎

「いい思いさせてあげるって、言ってるじゃない!」
「僕はアンジーしか無理なんだ! 離れろ! むーりー!」
「……い、や♡ 本当は、私のこと、昔から、好きでしょう?」

 急に態度を変えて、ねっとりした声でささやいた。
 全身にぶわっと鳥肌が立つ。
 キモチワルイ。

「……何してるの?」

 アンジーの冷たい声が響く。
 
「アンジー、これはっ!」
「大丈夫、信じてるから」

 僕に笑いかけてから、マーラをじっと見つめた。

 母様の教育の賜物!
 クールアンジーの登場だ‼︎
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