すれ違わない二人の結婚生活

能登原あめ

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領地で新婚生活編

9 帰る場所を間違えている 2

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「ヴァル、ここにいる間のドレスが足りないの」

 僕とアンジーで朝食を取り終えた頃、だらしない姿のマーラが現れた。
 ベッドから出てきたばかりみたいで寝間着の上に薄物を羽織っているだけ。

 そんな姿で人前に出ちゃう?
 もしアンジーだったら、ベッドに連れていって、誘ってるのかなってしばらくそこで過ごすけどね!

 ん?
 まさか、誘ってるつもり?
 僕、嫌い。
 新婚夫婦の前でそういう態度信じられない!
 
「あんなに大きな荷物を持ってきたのに?」
「思ったよりここは涼しくて……」
「じゃあ、重ね着すればいいよ」

 今にもアンジーが服を貸すって言いそうだったから、慌てて続けた。

「母様の服を貸すよ。……用意させるから部屋に戻って」

 見苦しいからね。

 思い通りにならなくてマーラがイラッとした表情を一瞬浮かべたけど、わかったわって笑顔で出て行った。

 うん、一日も早く出て行ってほしいな。
 
「……アンジー、今日は町にでも行こうか?」
「いいの?」
「うん、いろいろ見て回って、僕の妻を見せびらかしたい」
「町は行ってみたいけど、目立つのは恥ずかしい……」

「アンジーがそういうなら……秘密のお忍びデートにしよう」
「秘密なの? 夫婦なのに?」
「うん。アンジーを僕が独り占めにしたいから」

 ちょっと赤くなって頷くアンジーがかわいくて、ベッドに戻りたくなったけどそれはまたの機会にする!






 うん。
 やっぱり邪魔だ。

「マーラさんは赤がお好きなの?」
「ええ、こっくりとした深みのある色が好きよ。……あなたにはまだ早いわね」

 どろどろした血のような色はアンジーには似合わない。

「アンジーはこっち、可憐な淡い色が似合うよ」

 二人で出かけるはずが、なぜか馬車の前でマーラが待っていて、当たり前のように乗り込んだ。
 母様のドレスじゃなくて、自前だし。

 うちの使用人、なんかすごいドレス数着出してたんだけどな。
 母様が着てるのを見たことがない、赤い身頃に緑のスカートのドレスや黄色と紫の組み合わせのドレスは、マーラに似合ったかもしれないのに。

 それから僕は好きなところで降ろすって言ったけど、子供のことを思い出すのがつらいから気を紛らわせたいと涙を浮かべたものだから、アンジーが一緒に行きましょうって誘った。

 アンジーの優しさにつけこんで、なんてやつだ!
 昨日のうちになんとかしろって彼女の親に手紙は送ったからすぐに引き取りに来るはず。
 
 しかも、なぜかマーラのドレスも買う雰囲気になってるけど、請求書は親にまわすから、余計に怒られるといいよ!

「ヴァルもこういうのはどう? 大人っぽくていいと思うわ。だって、もう……大人の男だものね?」

 マーラがさりげなくお揃いのものを選んでくるが、余計なお世話だ。
 お揃いにするならアンジーとじゃなきゃ。

「いらない。じゃあ、ここを出たらお茶にしよう」

 さっきの通り会計を済ませて、僕たちは店を出た。
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