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領地で新婚生活編

17 新しい菓子職人とは

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「なんて、すてきなの……」

 アンジーが顔を赤らめて、ため息をついた。

「さすが、異国で学んだだけあって斬新だし、今日のデザートは美しすぎて食べるのがもったいないわ」
「…………ウン、ソウダネ」

 なんだろう、このもやもやした気持ち。
 アンジーが、おいしく食べる姿はかわいくて愛しくて大好きなんだけどね!
 とろけるような顔をさせているのが、僕じゃないのがなんだか悔しい。
 いつになくおかしなことを思っているのはわかってるんだけど!

「……恐れ入ります」

 すました顔で菓子職人が答えているけど、ね。
 有能、有能なのは認める‼︎
 でもとにかく、悔しい!

 アンジーが一度お礼を言いたいって言うから呼んだけど、会わなきゃよかった!
 職人としての腕も確かで、端正な顔。
 がんこ職人の孫とは思えない洗練された雰囲気を持っている。

 アンジーがポーッとしてるのも気になる!
 まぁ、デザートに対してだけど。

「あの……小説の中に出てきたお菓子なのだけど、あなたにわかるかしら?」
「……どのようなものでしょうか?」

 落ち着いた低い声が安心感を誘うなぁ! じゃなくて。

「異国の修道院で、卵の黄身を使った小さなタルトっていう、パイ……?」
「はい、わかります。卵のタルトですね。生地がサクサクで中身が卵と牛乳で作ったとろりとしたクリーム、ですよね?」
「……はい! 多分それだと思います。実物を見たことがないので……もし、作ってもらえるのなら……食べたい、です。……いいかな、ヴァル?」
「もちろん! 用意できる?」
「はい、準備の時間をいただきたいので、明後日のお茶の時間でいかがでしょうか?」

 アンジーを見るとすごく嬉しそうな顔をしているから、僕は頷いた。

「よろしく頼む」

 悔しいけど、アンジーの喜ぶ顔が見たいからね!







「夢みたい! とっても、おいしい!」

 菓子職人の用意した卵のタルトを小さく切ってアンジーの口元へ運ぶ。

 かわいい。
 こんなかわいい顔を引き出すなんて、すごい菓子職人だ。
 
 うん。目の前にいなければ、腹が立たないってわかった。
 僕、アンジーの視線を独り占めにしたいってことなのかも?

「はい、ヴァルも」

 アンジーが僕にも食べさせてくれる。

「あ、おいしい」

 サクッとした生地とほどよい甘さの卵のクリームが絶妙!
 さすが! やるなぁ‼︎

 認めるよ、アンジーのために、寛大にならなくちゃ。

「ね? 彼女の才能、素晴らしいね」
「本当だね。うちに来てくれてよかった」

 さすががんこ職人の孫だ。
 末長く、おばあちゃんになるまでうちで働いてほしい‼︎
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