すれ違わない二人の結婚生活

能登原あめ

文字の大きさ
20 / 44
領地で新婚生活編

18 父様達が帰って来た?

しおりを挟む


「予定より早く戻ることになったが、困ったことはないか?」

 父様の言葉に、僕は不満を隠せない!
 まだしばらく二人きりで蜜月生活を過ごせると思っていたのに‼︎

「……とりあえず、対処できることはやりました。父様達ももっと! ゆっくりされて! よかったんですが……」
「フフフ……、そうだね。そうしたかったがね。マーラの両親に会ったからあなたたち二人の様子も気になったし、やることもあってね。その後どうなったか気にならないか?」
「……気になりません」

 忘れてたし、近づいてこなければ別にどうでもいい。

「そうか……今はまだ謹慎させているけどね、マーラが商家の資産を相当使い込んで伯爵家にまで借金取りがやって来ているんだ」

 やっぱりか。

「それで……マーラが帰った日に、うちに寝かせてあった個性的なドレスを着て帰ったんだって?」
「はい、そうです……母様のものなのに勝手に渡してごめんなさいっ!」
「いや、あれは私達の結婚祝いに新進気鋭の仕立て屋がぜひ作りたいと勝手に作って送ってきたものだから手放せてよかったよ」

 父様に怒られるんじゃないかとドキドキしちゃったよ!

「それで……金を回収しようとやってきた異国の商人が、あのドレスをまとったマーラを気に入ってね。彼女に新作の街着を着てもらって宣伝させたいから、借金の肩代わりをしてもいいと言ってるんだ。まぁ、マーラは異国で平民として働くことになって、働いた分から借金を差し引くことになりそうだけど」

「いつも新しい服を着ることができて、意外と幸せかもしれませんね」
「……私が見た街着は紫色の四角い布地二枚を縫いあわせたもので、胸の前に口を開けた虎の顔があったよ……赤い生地にドラゴンとかね」

「斬新ですね」
「熱い国で刺繍が盛んらしくてね。マーラは離縁したとはいえ、借金が大きすぎて商家と伯爵家で話し合いが必要なんだ」
「……そうですか」
 
 残念。蜜月が終わりだ。マーラのやつめ!
 帰る日にあんなわけのわからないドレス着ちゃうから‼︎

「二週間ほど、色々調整するために私達もここに滞在するが、その後一月ほど領地を離れるよ。……任せて大丈夫かな?」
「はい、父様! そういうことでしたら、僕耐えます! あ、いえ、頑張ります」
「……よろしく、頼むよ」

 ほんのちょっと父様が苦笑いしたけど、蜜月がまるまる一月味わえると思ったら、乗り切れるよ、僕は!

 




 久しぶりに四人での晩餐。

「母様、母様の侯爵教育すばらしいですね。アンジーはもうすでに完っぺきな女主人になれますよ!」
「そうでしょう……この私が教えたのですから」

 すました顔で答える母様。

「まだまだお義母様には到底及びません……日々努力しているところです……」
「……あなたは優秀よ。もう少し肩の力を抜きなさい」

 アンジーの言葉に母様が優しく答える。

「はい、ありがとうございます……」
「ヴァル、あなたがしっかり、支えるのですよ」
「はい、もちろんです、母様! 僕、アンジーのこと一生守りますから!」
「……当然よ。……そうしなさい」

 うん、なんかちょっと母様が笑ったみたいだけど、父様の顔を見るのはやめておこう。
 なんだか視線を感じるけど。
 怖い、怖い。

 僕、だだの息子だからね。
 僕が結婚してからの方が、父様の態度がわかりやすいのは、僕が成長したからなのかな?

 二週間ね、二週間。
 王都にいる時と変わらないと思えば……。
 それなら、アンジーをいっぱい愛でよう~っと!
しおりを挟む
感想 195

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

冷徹社長は幼馴染の私にだけ甘い

森本イチカ
恋愛
妹じゃなくて、女として見て欲しい。 14歳年下の凛子は幼馴染の優にずっと片想いしていた。 やっと社会人になり、社長である優と少しでも近づけたと思っていた矢先、優がお見合いをしている事を知る凛子。 女としてみて欲しくて迫るが拒まれてーー ★短編ですが長編に変更可能です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

なくなって気付く愛

戒月冷音
恋愛
生まれて死ぬまで…意味があるのかしら?

処理中です...