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領地で新婚生活編
18 父様達が帰って来た?
しおりを挟む「予定より早く戻ることになったが、困ったことはないか?」
父様の言葉に、僕は不満を隠せない!
まだしばらく二人きりで蜜月生活を過ごせると思っていたのに‼︎
「……とりあえず、対処できることはやりました。父様達ももっと! ゆっくりされて! よかったんですが……」
「フフフ……、そうだね。そうしたかったがね。マーラの両親に会ったからあなたたち二人の様子も気になったし、やることもあってね。その後どうなったか気にならないか?」
「……気になりません」
忘れてたし、近づいてこなければ別にどうでもいい。
「そうか……今はまだ謹慎させているけどね、マーラが商家の資産を相当使い込んで伯爵家にまで借金取りがやって来ているんだ」
やっぱりか。
「それで……マーラが帰った日に、うちに寝かせてあった個性的なドレスを着て帰ったんだって?」
「はい、そうです……母様のものなのに勝手に渡してごめんなさいっ!」
「いや、あれは私達の結婚祝いに新進気鋭の仕立て屋がぜひ作りたいと勝手に作って送ってきたものだから手放せてよかったよ」
父様に怒られるんじゃないかとドキドキしちゃったよ!
「それで……金を回収しようとやってきた異国の商人が、あのドレスをまとったマーラを気に入ってね。彼女に新作の街着を着てもらって宣伝させたいから、借金の肩代わりをしてもいいと言ってるんだ。まぁ、マーラは異国で平民として働くことになって、働いた分から借金を差し引くことになりそうだけど」
「いつも新しい服を着ることができて、意外と幸せかもしれませんね」
「……私が見た街着は紫色の四角い布地二枚を縫いあわせたもので、胸の前に口を開けた虎の顔があったよ……赤い生地にドラゴンとかね」
「斬新ですね」
「熱い国で刺繍が盛んらしくてね。マーラは離縁したとはいえ、借金が大きすぎて商家と伯爵家で話し合いが必要なんだ」
「……そうですか」
残念。蜜月が終わりだ。マーラのやつめ!
帰る日にあんなわけのわからないドレス着ちゃうから‼︎
「二週間ほど、色々調整するために私達もここに滞在するが、その後一月ほど領地を離れるよ。……任せて大丈夫かな?」
「はい、父様! そういうことでしたら、僕耐えます! あ、いえ、頑張ります」
「……よろしく、頼むよ」
ほんのちょっと父様が苦笑いしたけど、蜜月がまるまる一月味わえると思ったら、乗り切れるよ、僕は!
久しぶりに四人での晩餐。
「母様、母様の侯爵教育すばらしいですね。アンジーはもうすでに完っぺきな女主人になれますよ!」
「そうでしょう……この私が教えたのですから」
すました顔で答える母様。
「まだまだお義母様には到底及びません……日々努力しているところです……」
「……あなたは優秀よ。もう少し肩の力を抜きなさい」
アンジーの言葉に母様が優しく答える。
「はい、ありがとうございます……」
「ヴァル、あなたがしっかり、支えるのですよ」
「はい、もちろんです、母様! 僕、アンジーのこと一生守りますから!」
「……当然よ。……そうしなさい」
うん、なんかちょっと母様が笑ったみたいだけど、父様の顔を見るのはやめておこう。
なんだか視線を感じるけど。
怖い、怖い。
僕、だだの息子だからね。
僕が結婚してからの方が、父様の態度がわかりやすいのは、僕が成長したからなのかな?
二週間ね、二週間。
王都にいる時と変わらないと思えば……。
それなら、アンジーをいっぱい愛でよう~っと!
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