すれ違わない二人の結婚生活

能登原あめ

文字の大きさ
21 / 44
領地で新婚生活編

19 真夜中の本にまつわるお話

しおりを挟む


 今日の話は、紳士向け。
 というのも、父様から男同士の話だと教わったから。

 まず、『紳士向け閨事指南書全四巻』について話そうと思う。
 ここで聞いたことは、どうか、次世代の紳士に伝えたら墓場まで持っていってほしい。

 

 
 指南書が四冊に分けられたのは、父様の時代。

 まず、『夕方の本』
 十歳の誕生日に枕元に置かれる、いわゆる性教育的な本。

 そして、僕の愛読書『夜の本』
 初級~中級者向けの愛を深める性技の本。

 この二冊は一般的だし、父様が言うには、夜の本をマスターすればあとは想像と応用で問題ないらしい。
 僕の体感と経験からもそうだと思う……僕はまだまだ修業中だけどね。

 そして、自分の考えの及ばないことを試したい人やさらなる極みを目指す人向けに出されたのが、伝説となっている『真夜中の本』 

 なんでもブランコに二人で乗る、とかよくわからないことが書いてあるらしい。
 あれは子どもの遊具じゃないのかな。
 父様はふふって笑って、そのうち必要になるかもしれないよと言った。

 それから、さらに希少本だという『明け方の本』 

 真夜中の本が物足りなくなった者、もしくは一風変わった嗜好の人向けとなっているらしい。
 例えば、鞭をつかって相手をいたぶりお互いを高める、とか。
 
 意味がわからない。
 そんなの使ったらアンジーの白い柔肌が傷ついて僕は泣きたくなると思う。
 その傷を舐める?
 ダメダメ!
 痛そう……考えただけで震える。

 逆に、アンジーが僕に鞭をふるう? クールアンジーってこと?

 あぁ、蔑まれた視線で見られたら、僕死んじゃう!
 なんか、想像したらちょっとドキドキしたけど!

 僕はアンジーをめちゃくちゃに甘やかして、とろけさせて、いっぱい愛を注ぎたいんだ。
 この本は……手に入れたら一度読むだけに留めておこう。うん。
 頭の片隅に入れておくだけだから、それだけ。うん。
 試したりなんかしないんだから! うん。


 ここまで話して気づいた人もいると思う。
 僕、アンジーに夜の本、見せちゃったんだよね!
 全部じゃないけど。

 父様に、僕の話じゃないんだけど~、奥さんに見られた友達がいるって伝えたら仕方ないなって、秘密にするよう伝えた後は女性向けの指南書の一つ上の段階の本を渡したらどうか?と言った。

 アンジーも持ってるはずだって言った父様に、母様は何も教えてないんだって伝えたら、ものすごく驚いていた。
 だから母様からアンジーに渡すよう伝えておくと言っていた。

 もちろん、アンジーに対して一つも不満はないよ?
 ただ、その本にはちょっと興味がある。
 父様から、見ていいと言われない限り開いてはいけない、それより二人で読む夢と現実の狭間の夜の三部作というものもある、と気になることも言っていた。

 それから数日後、アンジーの私室に新しい本が並んだ。





 貴女に役立つティータイムの献立集

 おやつのじかん 何も知らないお嬢様へ
 甘いデザート 初級~中級者向け
 熱いデザート 上級者向け
 冷たいデザート 変化を求める時に


 タイトルがなんだかおかしいけど、これだよね?
 母様、太っ腹!
 アンジーは最初から四冊も⁉︎ 
 開けてみたいけど我慢‼︎
 
 僕も早く残りの二冊が欲しくなっちゃった!
しおりを挟む
感想 195

あなたにおすすめの小説

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」 お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。 綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。 今はもう、私に微笑みかける事はありません。 貴方の笑顔は別の方のもの。 私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。 私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。 ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか? ―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。 ※ゆるゆる設定です。 ※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」 ※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

醜女の私と政略結婚した旦那様の様子がおかしい

サトウミ
恋愛
この国一番の醜女である私と結婚したイバン様。眉目秀麗で数多の女性と浮き名を流した彼は、不祥事を起こしたせいで私なんかと結婚することになってしまった。それでも真面目な彼は、必死に私を愛そうと努力してくださる。 ──無駄な努力だ。 こんな色白で目と胸の大きい女を、愛せるはずがない。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

処理中です...