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新しい家族編
3 幸せが増える。
しおりを挟むアンジーの体調が安定した後、僕達はクッションをたくさん敷き詰めた乗り心地のいい馬車でゆっくり、ゆっくり時間をかけて領地に戻った。
アンジーの食べていないとつらいという状態も落ち着いて、安心したのだけど、僕はつい胸ポケットに人参をさしてしまう。
主に今は僕のおやつになっている気がするけど、まぁ、いい。
アンジーのお腹が大きくなってきて、手を当てるとポコっと蹴ってくるんだ。
いや、足じゃないな。
きっと僕の手にタッチしてくれているんだ。
だよね?
そう考えると愛しくてたまらない。
ここにいるよって。
起きてるよ、聞いてるよって、教えてくれるんだから。
だから僕はたくさん話しかける。
あなたのことは、父様とかわいくて優しい母様が守るからお腹の中ですくすく育つんだよって。
産まれてきたら、してあげたいことがいっぱいあるんだよって。
まずは、母様の次に抱っこさせてねって。
「……ごめんなさい、それは難しいかもしれないわ……産婆さんが……」
アンジーが申し訳なさそうに言う。
そっか。
忘れていたけど、そうだよね。
出産する時は、神聖な空間に男は入れないんだった。
「わかった……それなら、母様の次に父様と呼んでほしいな」
アンジーが何か言いたそうだったけど。
産まれたては泣くだけだってわかってるよ、僕だって。
「いつか……おしゃべりできるようになったら、父様って呼んでね。……あなたが産まれてくるのが、本当に楽しみでしかたないんだ」
僕の手の上にアンジーが両手を重ねる。
「ヴァル……私、ヴァルと結婚できてよかった。この子はヴァルが父親でとても幸せだわ」
「そう思ってもらえたらいいな。……この子だってアンジーが母親で幸せだって、すでにお腹の中でわかっていると思うよ!」
僕の言葉に反応するように、ポコっとお腹の中から返事があった。
「ほら、頷いてる。……僕もそう思う! とっても、素直ないい子だね。楽しみだなぁ……」
アンジーが僕の手首を掴んで引き寄せる。
そのまま自然と愛しい妻を抱きしめた。
すると、二人の間でお腹が動く。
「すごく元気な子みたい。ヴァルに似たら嬉しいな」
「僕はアンジーに似たほうがかわいいと思うけど……どんな子だってかわいいに決まっているよ」
前回は二人きりで甘い新婚生活気分を味わいたくてそうしたけど、今回は毎日変化していく最愛の妻と、その大きくなっていくお腹の様子を目に焼きつけながら過ごしている。
大きなお腹で歩きづらそうにするアンジーの姿も、すっごくかわいいんだ。
もちろん手をつなぐよ!
仰向けで眠れないの、って横向きになる愛しい妻を後ろからそっと抱きしめて眠るのも好き。
アンジーと二人きりで過ごせるのもあと少し。
今この瞬間も幸せで、領地での生活はゆったりと時間が流れた。
そして、冬の寒さが緩んだ日、急に産気づいたアンジーが健やかな男の子を産んだ。
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