43 / 44
新しい家族編
5 僕達のその後 (終)
しおりを挟む「とうさま、わたし、大きくなったらとうさまとけっこんしたい!」
今年六歳になる僕達の大切な娘は、とても明るくてニコニコしている。
出産時に不運が重なって、ほんの少し足を引きずって歩くエヴァ。
僕はその笑顔を守るためになんでも、しちゃうんだ。
いや。僕だけじゃない。
みんなそうだ。
だけど、叱らなくてはならない時は心の中で涙が出る。
とにかくかわいい。
小さくて軽い体を抱き上げて目線を合わせた。
「エヴァ、大好きだよ。エヴァの気持ち、すごく嬉しい! だけどね、父様は母様のことをとてもとても愛しているから、結婚はできないんだ。ごめんね。……エヴァにはすてきな相手が見つかるように父様も協力するからね」
僕にとってアンジーみたいな相手が娘にもできればいいけど、お嫁に行かないでずっと家にいたらいいとも思う。
アンジーに言ったら、娘の望むようにしてあげたいって微笑んでいた。
エヴァさえ望めば、ずっと近くで守ってあげるんだけどな!
幼いながらも神妙な顔で頷くエヴァの頬にキスをすると、後ろで息子達がささやき合う。
「父様、相変わらずだね」
「ブレないなぁ」
十二歳のイーサンと十一歳のローガン。
続けて授かったやんちゃな息子達は僕達にたくさんの幸せを運んできた。
当時はちょっと、いやだいぶ夫婦の時間が減ったし、一緒にアンジー争奪戦を繰り広げたわけだけど。
アンジーはやっぱり女神様だから僕にも子供達にも愛情をいっぱい与えてくれるんだ。
だから僕も息子達も安心していっぱい愛を返した。
最近になって、子ども達も自分の世界を持つようになったから、アンジーを独り占めする時間が増えている。
「エヴァ、兄様達と遊んでおいで? 母様はどこだい?」
息子達が娘の両側に立って、当たり前のように手を繋ぐ。
その平和の象徴のような光景に、僕はいつだって和む。
油断すると、涙が出そうになるんだ。
アンジーにそっくりの息子達も、僕に似た娘もかわいくて愛しくてしかたない。
とにかく丸ごと愛しい。
みんな宝だ。
「……母様は部屋にいらっしゃるけど……」
「そうか。いい天気だから、今日は散歩に適しているな、うん。……そろそろりんごが食べれるかもしれないね」
「わぁ~! りんごがたべれるの?」
嬉しそうに笑う娘と、何か言いたげな表情の息子達に笑顔を返す。
「食べれるかどうか、確かめておいで。……ほら、いってらっしゃい。楽しんでおいで。だけど、エヴァに無理させてはいけないよ」
「……はい、いってきます」
子ども達といえども、アンジーとの時間は譲れないのだ。
「アンジー、ちょっといい?」
椅子に座って何やら手仕事をする僕の愛しい大切な妻にいそいそと近づく。
三人子供を産んで、まるで絵画に描かれる女神のような豊満な体つきも僕好みで美しい。
アンジーは恥ずかしがるけど、今だってものすごく綺麗なんだ。
だからついつい長い時間寝室にこもりたくなる。
「どうしたの? 子供達がみんな外に出て行ったけど」
「気持ちのいい天気だから、散歩のついでにりんご畑に向かったよ」
お目付役もいるし、幼い頃みたいに川によろけて落ちたり、蜂の巣を突いたりしないだろう。
今は二人ともエヴァを守るし、アンジーに似て、思慮深いところが育ちつつある素晴らしい息子達だ。
毎日驚くことばかりだしアンジーとの時間は新婚当時より減ったけど、息子達を寄宿学校に入れなくてよかったと思う。
それを上回る幸せがあるし、これからはもっと二人の時間が増えていくはずだ。
「今ね、ヴァルのハンカチに刺繍していたの。どうかな?」
僕の名前と、これは伝説の生き物かな?
「ありがとう! すごくうれしいよ! これはドラゴン?」
「ええ……、ヴァルらしいかな、と思って」
どのあたりが?
ちらりと下半身を見てしまう僕に、アンジーがくすりと笑った。
「だって、いつも私達を守ってくれるから……ヴァルのおかげで私、とっても幸せだもの」
「僕も! アンジーのおかげで、いつだって幸せだよ! これからだって、未来永劫幸せにすると誓う」
僕の妻、いつまでたっても愛しい!
全部、全部大好きだ!
終
******
最後までお読みいただきありがとうごさいました。
性格もヴァル似のエヴァが主役の『私が好きと言ったら抱きしめるあなたは、好きと言ってくれない。』がこちらのその後となっております。
2
あなたにおすすめの小説
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
醜女の私と政略結婚した旦那様の様子がおかしい
サトウミ
恋愛
この国一番の醜女である私と結婚したイバン様。眉目秀麗で数多の女性と浮き名を流した彼は、不祥事を起こしたせいで私なんかと結婚することになってしまった。それでも真面目な彼は、必死に私を愛そうと努力してくださる。
──無駄な努力だ。
こんな色白で目と胸の大きい女を、愛せるはずがない。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる