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6 何の肩書きもなく② ソフィア視点 (終)
しおりを挟む「なるほど……お前の能力について聞いたことがある。彼女の魔力も記憶も、全て奪ったんだな……許せない」
「俺は、ただ彼女を愛しただけだ! ここで彼女だけを守って、大事にしている。邪魔するな!」
「……今の彼女が、幸せと言えるのか……?」
「……うるさいッ!」
彼らの話についていけない。
ただ、今の私になった原因はジュンにある……?
考えたいのに私の頭は、それを嫌がる。
「ソフィアはお前といても幸せじゃない。お前じゃ幸せにすることはできない。だから彼女を連れて行く」
「勝手に決めるな! ソフィア、こっちにおいで。残るだろう?」
ジュンは何もわからない私の面倒をみてくれた。
その恩はあるけれど、今の私に必要なのは……。
「私、もっと過去を知りたい。今のままは不安なの。……だから」
「ソフィア! 行くなっ……クソッ!」
次の瞬間、デヴィンと名乗った栗色の髪の彼の外套に包まれて、目の前が真っ暗になった。
たくましい腕が私を包み込み、それから、ドン、と押されるような圧力と大きな破裂音が聞こえた。
その後は私の耳に彼の力強い鼓動だけが届く。
「な、に……?」
彼の胸を押し、そっと外套から顔を出した。
あったはずの家も、長椅子も、あたり一帯の木々さえなくなっている。
なのに私も、抱きしめてくる彼も無傷だ。
おかしなことに、指輪が、とても熱い。
「魔女に助けられた、な……」
彼も指輪をじっと見つめていた。
「これは一体……。彼、は……?」
少し離れたところに飛ばされて、傷だらけで仰向けに倒れていた。起き上がることもできないらしい。
「俺に向けた攻撃がすべて自分に跳ね返ったのか……。近くにソフィアもいたのにこんな行動をとるなんて、信じられない」
私は呆然としたまま、ゆっくり近づいた。
攻撃性は感じられないけれど、守るようにデヴィンが私の前に立つから、そこから抜け出した。
指一本動かせなくなった彼が、焦点を合わせようと私を見上げる。
「どうしてこんなことを?」
「……ソフィア、本当に君を愛しただけなんだ。……だから、誰にも渡したくなかった。二人だけで幸せに、なりたくて。ごめんな……」
細く息を吐いて黒目を閉じる。
「でも、俺じゃダメなんだな……さよなら、ソフィア、早く行けよ。……もたもたしてると気が変わるかもしれないから。……それと、最後くらい、俺の名を呼べよ。ジュンだ」
時折、彼の目に後悔が見て取れたし、私の記憶が戻る方法がないか試していたのをなんとなく覚えていた。だから、私は。
「…………さよなら、ジュン。……私、デヴィンと行くね」
それから、私はデヴィンと隣国へ渡った。
彼は私に全てを包み隠さず教えてくれた。どうして別れたのかも。
彼はすでに王位継承権を返上していて、この国で商会を立ち上げたのだそう。
彼は私が別れると言った後、三ヶ月刻みで会いに来ていたらしいけど、私は一度も顔を見せず、この一年は忙しくしていて久しぶりの帰郷だったという。
戻って来てみれば、私が男と住んでいると聞いて、居ても立っても居られず会いに来たらしい。
「……以前の私は、嘘が嫌いだったんですね。今も、嘘という言葉は胸のあたりがモヤモヤします」
「それだけ嘘をつかれることはソフィアにとって譲れないことだったんだ。だから、俺は本当に商会を立ち上げた」
彼の話はとても楽しい。
今でも脚色された物語に聞こえる時もあるけれど、私の一部が埋まっていくようで嬉しくもある。
「そろそろ、言葉遣いも、もっと気楽にして欲しい」
「……それは、はい、気をつけ、るわ……」
彼こそ私が覚えていた名前の、本物のデヴィンだと、思える。
まだ、わからないことだらけでぴたりと嵌まることはないけれど、彼が仕事をしている間、私は書斎にある色々な種類のたくさんの本を読む。
彼はとても学ぶことが好きらしい。
だから、私の記憶が戻るような手がかりが少しでもありそうな本を見つけてくれる。
森の中の小さな家にいた時より、幅広い知識を得られて充実していると思う。
それに、ここで私を知っているのはデヴィンだけで、余計に気を回さなくていいのも肩の力が抜けていい。
「ソフィア、結婚しよう」
「…………」
この国の王妃様が平民であったと聞いても、彼は隣の国の王子様。
「そもそも母は、この国の生まれだし、こっちに戻ってきている。だから、なんとでもなる」
「なんとでも、なる、のなら……」
「結婚してくれる?」
「本当に私でいいなら」
「……もちろん」
彼が私をそっと包み込んだ。
私の過去は少しずつ彼が埋めてくれて、一緒にいることで過ごしてきた時間の思い出が増えた。
彼は、二人が一緒にいることで指輪がなんらかの力を発揮してるのかもしれないと言う。
私の祖母はそれだけ力のある魔女だったらしいから。
「この指輪は、ずっと外すことが、なかったの。……あるのが当たり前だったから」
そう言うと、そっと唇が重なった。
彼は時々、私の唇を奪う。
顔が熱くなって困惑する私を楽しそうに見つめる。
「どうか、僕と同じくらい好きになって欲しい」
「同じくらい、というのはわからないのだけど……」
そう言うと、ほんの少し私を抱きしめる腕に力がこもった。
「デヴィン、あなたを好ましく、思っています」
彼といると色々な感情が湧き上がる。
「今はそれでいい」
彼の瞳に映る私は笑みを浮かべていた。
「以前、幸せかと訊かれたけど……今の私は幸せ、よ」
このまま彼といたら、私は自分を取り戻せると、そう思った。
終
******
最後までお読みいただきありがとうございました。
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あああ〜すき!好きです!暗いけど、蝋燭の灯火みたいな仄かな明るさを感じる暗さ!すき!
ジュンとデヴィンの執着に一読者が勝手に違いを見つけるなら、
ジュンはソフィアの割れたかけらの片方で、デヴィンは時を経て擦り合わせた石の片方ってイメージになりました。
デヴィンとの恋はある意味一般的な恋人や夫婦の形、ジュンはより運命的な感じかな〜と。
でもかけらは更にかけたらもうピッタリとは番わないんですよね。隙間が…。
擦り合わせた石は少し離されてもそれをまた全く違う形にするにはまた時間がかかるわけで、かけてしまったソフィアは、時間をかけて擦り合わせた形の方にすっぽり安心して収まった…なんてしみじみ要らぬ考察をしてしまいました。
良きお話読めて幸せです。ありがとうございました!
うわあぁぁ〜!好きと言っていただけて嬉しいです!
いや、ほんと、これ暗いんですよねぇ。
一応救いがあるかなぁと思ってますが。。
読み込んでいただき感無量です〜🌟
石の表現、素敵ですね!
割れてしまったかけらは元に戻らないけれど……時間をかけて……3人と、それぞれの関係をうまく表してくださっているなぁ、と♪
いらぬどころか、ありがたい考察です♡
猫目さま、優しく温かいコメント、ありがとうございました〜🤗
完結、おめでとうございます。
ストーリーと、文章。その組み合わせによって、場の雰囲気、それぞれの心情を、しっかりと感じることができて。
常に見入っている。
そんな、世界(お話)でした。
あめ様。
投稿してくださり、ありがとうございました。
うわわぁ〜、どうしてこんなに暗くなってしまったのかと、出すのを迷った話なのです。
そのように言っていただけるなんて、恐れ多いです〜♡
ゆずさま、優しいコメントありがとうございました〜🤗
完結、お疲れ様でした🎉☕
(^-^✿) (_ _✿)(^-^✿) (_ _✿)うんうん
勇者でも王子でも、いいかも💓
二人とも、ヒロインちゃんを愛してるなら、どっちとでも幸せな気がするーー
だって、多分、両方、イケメンさんでしょう?♫🌷
ジュン・・・うん、私も、死んでないな、とは思ったです😅
彼も、素敵な女性を見つけて幸せになれるといいですね🌸
あら、どちらも大丈夫ですか(*゚艸゜*)💓
ジュンは……フツメン設定ですが、うん、きっと、多分能力を取り入れてイケメンになっていると、思います♪
ジュンNG派には、この世から消えてしまう未来もありな気がしますね。。
青空さま、ありがとうございました〜🤗