総攻めなんて私には無理!

能登原あめ

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おまけ 小話

after story 日本で清算することになりました 4

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* シーヴァー回です。







******


「浦野の彼氏、イケメン過ぎるわ。しかもベタ惚れ? 結婚の話でてる?」
「あー、はい。でも、内緒で……」
「週末もデート?」
「そう、ですね……久しぶりに近場で水族館でも行こうかなぁ、と」
「式場探しとかそういうんじゃないの?」
「家族だけで食事会だけで……その、実は彼の国に行くんです」
「あぁ、それでこんなに慌ただしく辞めるわけね。……がんばってね!」
「はい、ありがとうございます」

 そんな会話を安達さんとした月曜日。
 恋愛脳の2人に聞かれていたことに気づかずにいて。
 私もとうとう来週の月曜日が最後の出勤日になる。

 ブラックだなんだと文句を言いつつ、3年くらいお世話になったのかな。
 安達さんがいなかったら、こんなに続かなかったと思う。
 






「…………」
「シーヴァー?」
「リオナの国はすごいね。感動して声が出なかったよ」

 シーヴァーの手をぎゅっと握って見上げると、思い切り抱きしめられた。

「シーヴァー、ここではだめだよ」

 薄暗いとはいえ水族館で。
 金髪のシーヴァーは一見欧米人に見えるからハグくらい見逃してもらえるかもしれないけど、私には辛い。
 混雑してるわけではないけど、目立ってる気がするから。

「そうなの? リオナをせっかく独り占めできるのに……」

 ちょっと不満そうだけど、手を繋いでその場を離れる。
 2人きりになれるところ、ね。
 カラオケや漫画喫茶の個室はちょっと違う気がするし、カップルばかりのデートコースにすればよかったのかも。

 水族館、夕方からにすればよかったのかなとか。
 日本の方があの世界より断然治安がいいしね。

「……リオナ? ごめんね? なんか難しい顔してるけど、僕何かした?」
「してない、してない……夜のデートのほうがいちゃいちゃできてよかったかなって考えただけ。私も2人きりでデートできて嬉しいよ」
「……大好きだよ、リオナ」

 そう言って私の頬にキスをする。

「シーヴァー、また背が伸びた?」
「そうかも? リオナを包み込めて嬉しい。多分まだ大きくなるかも」
「……そっか、楽しみだね……シーヴァー好きだよ」

 誰かに聞かれたら恥ずかしいから小声で言うと、なに? ってシーヴァーが私に近づく。

「だから、……シーヴァーが大好き」
「リオナっ……」

 ぎゅっと抱きしめられて、まだここは水族館なんだって思い出す。
 
「シーヴァー……今はまだだめ」

 誰にも邪魔されないって幸せだな。
 でもすぐにバカップル化しちゃって困る。
 こうなったら二人でいちゃいちゃできるところに行くのもいいかも。
 出口に向かおうと、シーヴァーの腕から抜け出して驚いた。
 近い。近すぎる。

「こんにちは、浦野さん。奇遇ですね~」

 鈴木と田中の恋愛脳コンビが1メートルも離れていないところに立っていた。
 ありえない。
 偶然にも程がある。

「……奇遇だね……。今日は2人で珍しいね」
「あ、2人で買い物してたんですけどぉ、疲れたので休憩しようと思ってここに来たんですぅ」
「そうなんです! ここにきたら面白いものが観れるじゃないですかぁ! それで、そちらの方は浦野さんの……?」

 じろじろとシーヴァーを見るから隠したくなるけど、首を傾げて私を見るから渋々紹介した。

「彼は私の……」
「彼氏さんですね。はじめまして! 私立ち上がった、同じ職場でいつも浦野さんにお世話になってます」
「ハジメマシテ……ソウデスカ」

 あれ? なぜかカタコトっぽくなっている。

「かっこいいですねぇ、こちらにご兄弟とかお友達とか……」
「彼はもうすぐ国に帰っちゃうから、こっちに友達はいないよ」

 ものすごくじろじろ見てくるから居心地が悪い!
 コンパとか無理だから!
 自分の夫たちを呼んで合コンとかなんかものすごくシュールだから。

「そうなんですね……残念です。……お邪魔しちゃ悪いのでまた月曜日に‼︎」

 去っていく二人から視線を外し、シーヴァーを見上げる。

「この世界の女の子ってなんだか……向こうの男たちみたいだね。……肉食獣の匂いがしたよ。……怖いな。……リオナと出会えてよかった」

 ものすごく勘違いしてるけど、とりあえずそのままでいっか。
 彼氏扱いされたことも今気にしてないみたいだし、後でフォローしよう。

「シーヴァー、私も行ったことのない場所があるんだけど、二人になれる場所なんだ。行ってみない?」








 正直、戸惑った。
 入ったことのない休憩につかえるホテルのパネルの前でカップルがいちゃいちゃしながら部屋を選んでいた。
 2人が私たちの気配に気づいて慌てて部屋を選んでエレベーターに乗り込むまでなんとも言えない時間が流れたけど、やり方がわかってよかった!

 シーヴァーにちゃんと説明しないで連れてきたけど、もしかして苦手だったらどうしよう。
 黙っているけどなんとなくわかっているのかな。
 パネルにいろんな部屋のタイプが載っているわけだし。

 シーヴァーが興味を示して指差した部屋にして2人で向かった。

「リオナ……ここって、連れ込み宿?」

 あー、あっちではそういうのか。

「えーと、まぁ、そうなのかな? いやだった?」
「……驚いたけど……リオナと2人きりになれて嬉しい。きれいなところだし……」
「そうだね……私も初めて入ったよ。シーヴァーとは初めてのことばかりだね」

 そういうと嬉しそうに私を抱きしめた。

「あのね、さっきちゃんと紹介できなかったけど、私の大好きな人だって言いたかったんだよ」
「リオナ……気にしなくていいのに。でも嬉しい」

 部屋に入り、二人でベッドに倒れ込んで脱がし合う。
 シーヴァーに触れられると愛されてるなってすごく感じて気がはやる。

「シーヴァー、今すぐ欲しい」
「リオナっ‼︎」

 お互いにはだけた状態で忙しなく身体をつなげた。
 ただそれだけでアレをしゃぶるように内壁が動く。

「~~っ! シーヴぁ……」
「リオナっ、そんなに締めないでっ……」

 奥に押しつけたまま、シーヴァーが深呼吸する。

「はぁ……この部屋明日の朝まで?」
「えーと、三時間くらいかな」
「足りないよ、それじゃ……ひさしぶりだからリオナのこと感じたい」

 まぁ、そうなるよね。
 だから、私は彼の腰に足を絡めた。

「朝までここにいてもいいし、落ち着いたら部屋に戻ってもいいからね」
「んっ……ずっとつながっていたいよ……」
「うん、いいよ」

 まいっか。
 このまま延長することになりそう。
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