20 / 21
おまけ 小話
after story 日本で清算することになりました 4
しおりを挟む* シーヴァー回です。
******
「浦野の彼氏、イケメン過ぎるわ。しかもベタ惚れ? 結婚の話でてる?」
「あー、はい。でも、内緒で……」
「週末もデート?」
「そう、ですね……久しぶりに近場で水族館でも行こうかなぁ、と」
「式場探しとかそういうんじゃないの?」
「家族だけで食事会だけで……その、実は彼の国に行くんです」
「あぁ、それでこんなに慌ただしく辞めるわけね。……がんばってね!」
「はい、ありがとうございます」
そんな会話を安達さんとした月曜日。
恋愛脳の2人に聞かれていたことに気づかずにいて。
私もとうとう来週の月曜日が最後の出勤日になる。
ブラックだなんだと文句を言いつつ、3年くらいお世話になったのかな。
安達さんがいなかったら、こんなに続かなかったと思う。
「…………」
「シーヴァー?」
「リオナの国はすごいね。感動して声が出なかったよ」
シーヴァーの手をぎゅっと握って見上げると、思い切り抱きしめられた。
「シーヴァー、ここではだめだよ」
薄暗いとはいえ水族館で。
金髪のシーヴァーは一見欧米人に見えるからハグくらい見逃してもらえるかもしれないけど、私には辛い。
混雑してるわけではないけど、目立ってる気がするから。
「そうなの? リオナをせっかく独り占めできるのに……」
ちょっと不満そうだけど、手を繋いでその場を離れる。
2人きりになれるところ、ね。
カラオケや漫画喫茶の個室はちょっと違う気がするし、カップルばかりのデートコースにすればよかったのかも。
水族館、夕方からにすればよかったのかなとか。
日本の方があの世界より断然治安がいいしね。
「……リオナ? ごめんね? なんか難しい顔してるけど、僕何かした?」
「してない、してない……夜のデートのほうがいちゃいちゃできてよかったかなって考えただけ。私も2人きりでデートできて嬉しいよ」
「……大好きだよ、リオナ」
そう言って私の頬にキスをする。
「シーヴァー、また背が伸びた?」
「そうかも? リオナを包み込めて嬉しい。多分まだ大きくなるかも」
「……そっか、楽しみだね……シーヴァー好きだよ」
誰かに聞かれたら恥ずかしいから小声で言うと、なに? ってシーヴァーが私に近づく。
「だから、……シーヴァーが大好き」
「リオナっ……」
ぎゅっと抱きしめられて、まだここは水族館なんだって思い出す。
「シーヴァー……今はまだだめ」
誰にも邪魔されないって幸せだな。
でもすぐにバカップル化しちゃって困る。
こうなったら二人でいちゃいちゃできるところに行くのもいいかも。
出口に向かおうと、シーヴァーの腕から抜け出して驚いた。
近い。近すぎる。
「こんにちは、浦野さん。奇遇ですね~」
鈴木と田中の恋愛脳コンビが1メートルも離れていないところに立っていた。
ありえない。
偶然にも程がある。
「……奇遇だね……。今日は2人で珍しいね」
「あ、2人で買い物してたんですけどぉ、疲れたので休憩しようと思ってここに来たんですぅ」
「そうなんです! ここにきたら面白いものが観れるじゃないですかぁ! それで、そちらの方は浦野さんの……?」
じろじろとシーヴァーを見るから隠したくなるけど、首を傾げて私を見るから渋々紹介した。
「彼は私の……」
「彼氏さんですね。はじめまして! 私立ち上がった、同じ職場でいつも浦野さんにお世話になってます」
「ハジメマシテ……ソウデスカ」
あれ? なぜかカタコトっぽくなっている。
「かっこいいですねぇ、こちらにご兄弟とかお友達とか……」
「彼はもうすぐ国に帰っちゃうから、こっちに友達はいないよ」
ものすごくじろじろ見てくるから居心地が悪い!
コンパとか無理だから!
自分の夫たちを呼んで合コンとかなんかものすごくシュールだから。
「そうなんですね……残念です。……お邪魔しちゃ悪いのでまた月曜日に‼︎」
去っていく二人から視線を外し、シーヴァーを見上げる。
「この世界の女の子ってなんだか……向こうの男たちみたいだね。……肉食獣の匂いがしたよ。……怖いな。……リオナと出会えてよかった」
ものすごく勘違いしてるけど、とりあえずそのままでいっか。
彼氏扱いされたことも今気にしてないみたいだし、後でフォローしよう。
「シーヴァー、私も行ったことのない場所があるんだけど、二人になれる場所なんだ。行ってみない?」
正直、戸惑った。
入ったことのない休憩につかえるホテルのパネルの前でカップルがいちゃいちゃしながら部屋を選んでいた。
2人が私たちの気配に気づいて慌てて部屋を選んでエレベーターに乗り込むまでなんとも言えない時間が流れたけど、やり方がわかってよかった!
シーヴァーにちゃんと説明しないで連れてきたけど、もしかして苦手だったらどうしよう。
黙っているけどなんとなくわかっているのかな。
パネルにいろんな部屋のタイプが載っているわけだし。
シーヴァーが興味を示して指差した部屋にして2人で向かった。
「リオナ……ここって、連れ込み宿?」
あー、あっちではそういうのか。
「えーと、まぁ、そうなのかな? いやだった?」
「……驚いたけど……リオナと2人きりになれて嬉しい。きれいなところだし……」
「そうだね……私も初めて入ったよ。シーヴァーとは初めてのことばかりだね」
そういうと嬉しそうに私を抱きしめた。
「あのね、さっきちゃんと紹介できなかったけど、私の大好きな人だって言いたかったんだよ」
「リオナ……気にしなくていいのに。でも嬉しい」
部屋に入り、二人でベッドに倒れ込んで脱がし合う。
シーヴァーに触れられると愛されてるなってすごく感じて気がはやる。
「シーヴァー、今すぐ欲しい」
「リオナっ‼︎」
お互いにはだけた状態で忙しなく身体をつなげた。
ただそれだけでアレをしゃぶるように内壁が動く。
「~~っ! シーヴぁ……」
「リオナっ、そんなに締めないでっ……」
奥に押しつけたまま、シーヴァーが深呼吸する。
「はぁ……この部屋明日の朝まで?」
「えーと、三時間くらいかな」
「足りないよ、それじゃ……ひさしぶりだからリオナのこと感じたい」
まぁ、そうなるよね。
だから、私は彼の腰に足を絡めた。
「朝までここにいてもいいし、落ち着いたら部屋に戻ってもいいからね」
「んっ……ずっとつながっていたいよ……」
「うん、いいよ」
まいっか。
このまま延長することになりそう。
0
あなたにおすすめの小説
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
彼女が望むなら
mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。
リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる