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1 私達は幼馴染
しおりを挟む「きゃー‼︎ また、ルーが倒れた!」
「大丈夫。私がついているから、みんなは遊んできていいよ」
「……本当? いつもありがとう、サラ」
私の幼馴染のルーは偏食で、ハリネズミ獣人で幼い頃はふらりと倒れることが多かった。
気を失うと、ハリネズミの姿になるから、私の膝の上に乗せて、目が覚めるまでそばにいる。
小さなハリネズミになってしまうのは可愛くて独り占めにしたくて。
ずっと見ていても飽きないし、私が守らなきゃって、思ってきた。
だけど、お互いに十六歳になって、ルーは背も伸びたし体力もついて倒れることもほとんどなくなったし……格好よくなった。
ルーがキラキラして見えて、目で追いかけることが多くなったし、私はルーに対してお姉さんみたいな気持ちじゃなくて、男の子として好きなんだって思っている。
クラスの女の子がルーに近づくと、何だか胸がもやもやするんだもの。
それと、なんだか最近私達の関係が変わってきたみたい。
ルーは私を見かけるとすぐ駆け寄ってくる。
「サラ、夜食何が食べたい?」
「あのね、気持ちは嬉しいけど太っちゃうからいらないわ」
真剣な顔して私の両肩をがしっと掴む。
「そんなわけないよ! こんなにガリガリでっ……やっぱりちゃんと食べてないんでしょ? 僕には嘘つかないで!」
「……ガリガリ」
後ろで友達が吹き出した。
私は太ってはいないけど、痩せてもいない。
恥ずかしくなってルーを睨む。
「本当に、しっかり食べてるよ。だって、ほら、お弁当だって……」
少し前に私のお父さんが再婚して、新しくお義母さんとお義兄さんとお義姉さんができた。
お義母さんが作ってくれたお弁当を見て、ルーが目を潤ませる。
「そんなちっちゃくて! 野菜ばっかりの弁当なんて、嫌がらせじゃないかっ!」
「えっと、それは違うの……」
ルーがこってりした夜食やデザートを食べさせるから、昼食は服屋さんで働くお義姉さんと同じあっさりしたお弁当にしてもらっている。
これまでは通いのお手伝いさんに用意してもらっていたけど、お義母さんが作らせて欲しいって言うからお願いした。
好物も聞いてくれたし、お父さんとお義兄さんのはしっかりお肉が入っていて、言えば私のにも入れてくれるはず。
だから嫌がらせなんかじゃないし、優しい味付けでおいしい。
「これのどこが……いじめられてない? 大丈夫?」
「うん、みんな優しいよ」
苦労して私を育ててくれたお父さんが幸せそうにしているのは嬉しいし、お義母さんも優しくしてくれる。
私より五つ年上のお義兄さんは来月から一人暮らしをするのが決まっているし、四つ年上のお義姉さんは船乗りの恋人が帰ってきたら結婚するって、幸せそうに笑っていた。
一緒に暮らせるのはほんのわずかだから、みんな今を大事にして楽しく暮らしている。
「……サラは我慢強いから……。わかった、今夜はサラの好きなものばかり用意するからねっ」
そう言って私が説明する前に走り去った。
「……あいかわらず、話を聞かないよね」
私の後ろで友達が笑って言うから、振り向いて、はぁっ、と息を吐いた。
「親が再婚してから過保護になっちゃったんだよね」
「過保護……ねぇ。というより、なんていうか……」
ヒョウ獣人の友達に給餌、だなんて言われたけど。
親鳥が雛鳥に食べさせるみたいに、私のこと家族と思っているのかな。
人間の私にはちょっと獣人の感覚がわからない時もあるけど、普段の生活で困ることはないし、人間と獣人の混合クラスで和気あいあいとしてる。
「給餌、かぁ……やっぱり、過保護だよね」
友達がなんともいえない笑顔を浮かべていたけど、私はこうなってしまったいきさつを思い返した。
今から半年前。
お父さんにつき合っている女性がいるから紹介したいと言われた。
同じ職場で働いていて三年、つき合い始めて三ヶ月になるって。
『おめでとう、いつ結婚するの?』
お母さんは私を産んだ後すぐ亡くなったから、母親に憧れがある。
それにお父さんが初めて私に紹介した女の人だから特別だと思ったし、反対する理由はなかった。
そういうわけで顔合わせをして、一ヶ月前に再婚、それから同居を始めた。
隣に住むルーにはその都度話していたのだけど、成人しているお義兄さんとお義姉さんとも同居すると思ってなかったらしくて。
『……サラは今流行りの小説は読んでないの?』
『え?』
『義理の家族にいじめられる物語だよ! クラスで回し読みしたのに、知らないの?』
『えっとね……私最後でいいって言ったんだ。もうあらすじ聞いちゃってるし』
父親が再婚して、義母と義姉にいじめられる娘の話で、義兄と恋に落ちて結ばれる話らしい。
んん?
配役は揃っているけど……。
『知ってるなら! 大変なことになる!』
『あの、あれは物語で、みんな優しいよ』
それに、私はルーが好きだって自覚してるし、お義兄さんは大人過ぎて、お父さんが二人いるみたいだし恋することなんてないんだけど。
『はじめはそうやって騙すんだ! まっったく、血が繋がっていないんだよ? それにサラは女の子なんだからね!』
『うん。でも、本当に……』
それでルーが半泣きになって言った。
『……僕ってものがありながら、一つ屋根の下で、他の男と暮らすなんて!』
えっと? お義兄さんのこと?
『騙されてる! 男はみんな、狼なんだ‼︎ これからは僕が守るよ!』
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