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3 周りは味方
しおりを挟む私の涙を見て、ルーがおろおろした。
「どうして、泣くの? やっぱりいじめられてるの? 誰? 僕にまかせてよ!」
ルーが自分の袖を掴んで私の目元をゴシゴシ拭う。
「……っ、痛い……」
「あっ、ごめん! ルーを泣かせるやつなんて、許せない!」
乙女心がわからないのは、目の前にいるルーなのに!
「ルーのばかぁ! もう帰って」
「え? ええ!」
ものすごく驚いた顔して、どこまで鈍いんだろう。
「ルーが、太れとか! 私のことなんだと思ってるの? もう帰って……夜食ももう持ってこないで」
「待って、待って! なんでそうなるの⁉︎」
トントン。
「サラ?」
部屋の扉が叩かれて、お義兄さんの声が聞こえた。
「はい、もう寝ます! うるさくしてごめんなさい」
私が扉越しに言うと、
「いや……もし、困っているなら開けてほしい」
「大丈夫です。本当に、本当にもう寝るから……おやすみなさい」
そう声をかけてから、ルーに出ていくように手を振った。
するとぽむっと、ハリネズミの姿に変わる。
「……わかった。おやすみ」
お義兄さんの足音が遠ざかるのが聞こえて、ホッと息を吐いた。
「ルー、もう帰って。おやすみ」
「……これって、まるで……僕が当て馬みたいだ……。ごめん、サラ。おやすみ」
しょんぼりして後退りする。
そのままルーは小さな体で窓からするりと飛び降りた。
彼の言ってる意味がよくわからなかったけど、それどころじゃない。
ハリネズミになっちゃったから、夜食を全部置いていったんだもの。
「デザート……まるまる残ってる」
私の大好きなミルクレープ。
ところどころに薄くスライスしたイチゴが挟んである。
クレープ一枚を焼くのはそれほど大変じゃないけど、何枚も何枚も焼いて、クリームもはさむのだからすごく手間がかかってると思う。
しかもイチゴまで……。
朝食にみんなで一切れずつ食べるのが一番いいってわかるのに、ルーが私のために作ってくれたから独り占めしたい。
思わずフォークを刺して大きく切って口に運んだ。
「おいしい……こんなの、食べすぎて太っちゃうよ。明日吹き出物ができたらルーのせいなんだから」
私は黙々と、皿が空っぽになるまで食べ尽くした。
翌朝の私は、腹痛と気持ち悪さで学校を休んだ。
夜中にこってりしたものを大量に食べてはいけないんだって体で学んだ。
仕事が休みだったお義姉さんが、迎えに来たルーに伝えてくれてお皿も洗って渡してくれたみたい。
「お義姉さん、ありがとう」
「喧嘩して、やけ食いしちゃったの?」
午後になってだいぶ落ち着いてきたから、用意してくれた胃腸に優しいハーブティーをちびちび飲みながら、おしゃべりした。
「喧嘩、なのかな? ルーは私が太ったほうがいいって。でも、太った子が特別好きなわけじゃないみたい。よくわからなくて……でも私はルーが好きだから可愛く思われたいのに」
「……毎晩せっせと食べ物を運んでくるのは太らせたいってだけじゃないと思うけどな」
やっぱり隣の部屋だから匂いもしたのかな。
「獣人の感覚は、私達とちょっと違うかもね……じゃあ。明日いつもと違う服で学校に行ってみたら? 私が選んであげる。あとでどんな反応されたか教えて?」
お義姉さんが自分の部屋からいくつか服や小物を持って来た。
「これあげるから、明日はこれ着てみたら?」
「……大人っぽすぎないかな?」
落ち着いた色味で、自分では選んだことのないタイプで柔らかく体に添うデザイン。
「こういうの、似合うと思っていたの。サラはとっても可愛いんだから自信持って」
「おはよう」
「……なんか違う」
翌朝迎えに来たルーが私をじっと見る。
さすがにお義姉さんの見立ては正しかった。
これまで選んでいた服が子どもっぽかった気さえしたくらいに。
それに合わせてハーフアップにしてくれたのだけど、髪の分量と結んだ位置が違うからいつもと違って見える。
「そうかも」
「…………」
ルーが無言で私の手をつなぎ、歩き始めた。
おとといのことがやっぱりわだかまりとして残っているみたい。
でも私からその話をするのも嫌で。
無言のまま学校へ行き、友達に可愛いとか、どこの服だとか髪型どうなってるのかとか話しているうちにルーは離れていった。
「…………ねぇ、すっごい見てるけど」
友達が私に耳打ちする。
「誰が?」
「……んー、まぁいいや……ノエ! ちょっと来て」
友達がクラスメイトに声をかけると、なぜかその周りにいた男の子達も寄って来た。
私のとっていない授業について二人が話している間、男の子達が私に話しかける。
「サラ、商会会長の授業とってるだろ? 昨日新しい課題が出されたんだけど、俺達と組まない? 結構範囲が広いから、グループでやっていいって言われてる。どう?」
「いいよ」
女の子はほとんど受けてない授業だし、断る意味もない。
「よかった。じゃあ、放課後に」
「だめーーっ! サラ、他の男とデートなんてダメだよ!」
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