ヒロインの要請で悪役令嬢を演じます?

能登原あめ

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番外編

帰ってきた悪役令嬢 ※微?

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* カロリーナ視点。本編の一年後くらいの話になります。カロリーナが国を出てから五年後くらいです。








******


 きっかけは第三王子の弟からの手紙。


 第六王女のフレイアが宰相令息のグレイソンと結婚した?
 政略とは思えないくらい仲良し?
 マジか。第二弾の攻略対象と。それはそれは。

 フレイアはヤンデレ相手で大丈夫かな……?
 監禁されてないなら、きっとうまくやってるんだろう。

 気になっていた男爵令嬢のリリアンは騎士団長令息ワイアットと婚約?
 なるほど。
 ヒロインは騎士団令息ルートに乗ったのか。
 悪役令嬢のカロリーナは断罪されない、確定した。
 そもそも悪いことは何もしてないんだけどね。

 弟の目が節穴じゃなければ、二組とも幸せそうにみえるらしい。
 そうは言っても妹、本当は不憫じゃない?

 時折手紙を手に取りゲーム内容を思い出して考えこむ私が、ライアンの目には、里心がついたようにみえたらしい。

 一年後に戴冠式が決まり、今しか里帰りはできないよと家族で私の故郷にやって来た。ライアンそっくりの一人娘と。
 二度と戻るつもりなかったけどね。


 いや、あのね。
 この国に来ると、震えるよ。
 武者震いかな。
 びくびくしなくても大丈夫だって何度も自分に言い聞かせる。

 ライアンに肩を抱かれて、嬉しくて震えていると勘違いされる。
 彼は私が前世を覚えているって知らないからしかたないけど。

 私たちの三歳になる娘に先に夕ご飯を食べさせて、たくさんハグして、元気をいっぱいもらった後は乳母にまかせた。

 
 今夜は内輪で晩餐会。
 国王夫妻両親は歳をとったけれど、相変わらず元気そう。
 王太子夫妻は三人の子どもに恵まれて落ち着いたように見える。
 第三王子の弟も婚約者と一緒で、初々しい感じ。
 第七王女は体調不良とのことでここにはいない。
 それから……そう。
 
 弟からの手紙で知っていたけど、実物カップルを目にすると感動する。
 もちろん単体では知っていたからね。

「久しぶりね、フレイア。元気そう……でよかったわ。……そうそう、結婚おめでとう」

 第六王女のフレイアと宰相令息の夫妻。
 元気そう、とか言ったけど、あっきらかに睡眠不足じゃない?
 言えないけど。

 でも、まぁ、二人で見つめあって仲良さそうに笑っているからいっか。
 政略結婚って聞いたけど、お互いが想い合っているように見える。

 うん、愛が芽生えたなら大丈夫かな。
 困っていそうだったら攻略という知恵を授けようかと思ったけどね、今さらか。

「姉様こそ、お元気そうでよかった。しばらくこちらにいるんでしょう? よかったら、ご都合の良い時にお茶でもいかが?」
「ええ、いいわね」
「グレイソン、いいかしら? せっかくだから女同士でおしゃべりしたいわ」
「……ええ、どうぞ。楽しんで下さい」

 なるほど。
 ちゃんと、伺ってあなたを気にしてるって意思表示してる。
 ヤンデレ化を抑えているんだ。
 素なのかな。
 私もライアンに視線を向ける。

「ライアン、いいわよね?」
「もちろん、楽しんで」

 やっぱり私の旦那様が一番素敵。








 これ、コーラだよね?
 どゆこと?
 ちょっと薬っぽいというか、ドクターなんちゃらみたいなクセがあるけど。

「……オイシイ、ワネ」

 フレイアの邸宅に、友達のリリアンも招かれていて女三人和やかなお茶会が始まった。
 さすがヒロイン、可愛いわ。

「こちらもいかがですか?」

 ジンジャーエール?
 ハーブなのかな、薬っぽい味もするけど。

「私たち、飲み物の研究をしておりますの。カロリーナ様の国ではどんなものがありますの?」
「そうね、コーラはないけど、松葉サイダーというのがあって……」

 おっと、口が滑った。

「…………やっぱりカロリーナ様も転生者なんですね?」
「……もしかして、二人も?」

 やっぱりというかね、コーラ出された時点でちょっと思った。
 なるほど、それぞれ推しと結ばれたなら気にしなくていいわ。

「私はワイアット様推しだったので、フレイア様にイベントを手伝ってもらいました」
「……私は前世は覚えていたけど、ゲームの世界とは知らなくて驚いたわ」

 え、かわいそう。
 罪悪感はんぱない。
 制作サイドとして。

「カロリーナ様はやっぱり断罪を恐れて国外へ?」
「……ええ、まぁ。それで……二人は幸せなの?」

 なにその満面の笑み。
 
「フレイア様、旦那様がお戻りです」

 侍女に声をかけられて彼女が立ち上がる。

「今日は早いわね……お迎えしてくるのでゆっくりしていてね」
「……どうぞ、ごゆっくり」

 よくあることのようでリリアンがさらりと答える。
 扉が閉まったところで、彼女が私に言った。

「しばらく戻ってこないと思います。……あの、お迎ええっちというかで」

 マジか。
 仕事がんばったからねぎらって、的な?

「なので、もう一杯頂いたら、帰り支度をしましょうか」
「そうね、長居して監禁されたら困るものね」
「そうなんですよぉ、ところで松葉サイダーってことは松葉があるんですね? うらやましいです。こっちではローズマリーでサイダーを作って、コーラの素と割ることにしました」

「なるほど。だから、コーラが薬っぽいんだ……。嫁ぎ先は島国でね、ゆずっぽいのもあるし、よければ新婚旅行にどう? 米もあるし、醤油に近いものもあるから」
「それは最高ですね! ぜひ、……ぶっ!」

 リリアンが吹き出した。
 吹き出す人なんて初めて見たけど。

「ゆっくり、後ろを振り返ってください。ちょっと、もう、早く帰りましょうか」

 窓越しに、庭園の木の下でフレイア夫婦が濃厚なキスをしているのが見えた。
 木々が生い茂っているから、周りからは隠れているのだろうな。
 こちらからは丸見えだけどね。

 グレイソンがそのまま、スカートをめくり上げ片足を腰に絡ませる。
 フレイアはのけぞった後、しがみついた。
 もう、なにが行われているか一目瞭然で。

「ファンディスク……」
「絶対、こっちが気づいてるってわかってやってますよね? え? ファンディスク?」
「うん、ダウンロード版の、グレイソン溺愛編。やってない?」
「やってません、ワイアット妄愛編しか。うわぁ……」

 妄愛編やってんのか。
 でろんでろんになるやつじゃん。

「……言伝頼んで帰りましょうか」

 これまで事後に何食わぬ顔で会ってたリリアンってすごい。
 私には無理だ。
 溺愛されてるようだし、近くにリリアンもいるから、フレイアの心配は余計なお世話かもしれないと思った。

 どうか、末長くお幸せに。
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