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ひめはじめ(飛馬始め)  南

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「はい、乗って」

 仰向けに寝転んだ川上にさらっと言われた。
 馬乗りになれって?
 まだ昼間だよ?
 色々してきたけど、それはちょっと丸見えで恥ずかしい。

「……やらなきゃ、だめ?」

 正月早々なんでこんなことに?
 






 年末年始を実家で過ごして、ちょっと早く川上のうちへ。
 実家で外していたペアリングは右手につけている。
 川上の指にも同じものを見つけてうれしくなった。

「なんだか今日は部屋が片づいてるね」
「さすがに大掃除したよ」

 それに南にくつろいで欲しいから、と川上が続ける。

「新年早々、汚いのもいやでしょ」
「うん、まあ。だけど、もともとそこまで汚くなかったよね」

 もしかしたら、うちのほうが散らかっているかも。
 安全面を考慮して駅近で、エントランスにロックがあるマンションだけど、予算の関係で狭いワンルーム。
 ロフトで寝てるから、飲みすぎた夜は梯子を登れない時もあるし、川上とあのせまい空間にいる想像ができない。
 絶対、呼べない。
 行きたいとも言われてないけど。
 川上の家のほうが会社に近いし、便利なのもある。
 そんなことを考えていたら、後ろから抱きしめられた。

「久しぶりにあったのにぼんやりしてる。会いたかったのは俺だけ?」
「私も会いたかったよ……はぁ….こうしてると落ち着くね」
「俺は昂ぶるけどね」

 顔だけ振り返ると唇が重なる。
 川上の肉厚の舌が歯列をなぞって開けという。

「んぅ……」
「は……かわい……」

 身体の向きを変えると、舌が忍び込んできて絡み合う。
 これから、二人で初買いに行くのに。
 そう思って身体を離そうとした。

「かいもの、いこ?」
「明日じゃ……だめ?」
「カップ、ラーメン、じゃ……いや」

 基本的に川上の家にはカップ麺とビール、ゼリー飲料しかない。
 ネットで箱買いしちゃうらしい。
 あとは食べたいものを買ってくるか食べてくると言う。
 一応、フライパンとやかんと片手鍋が一つ。
 最近はパスタとソースの買い置きをしてくれていたから、家で一緒に食事をする時はパスタが多かった。
 でも、今日はソースも材料もない。
 
 しかたない、といったん強く抱きしめてから腕が解かれた。
 なんだか、ちょっと寂しいと思うなんて、矛盾している。

「……疲れてる?大丈夫だったら早めに行こ?」
「うん、さくっと終わらせてゆっくりしたいな」

 

 



 駅の反対側にあるスーパーまで向かう。
 これも、川上が買い物しなくなった原因かも、と思いながらたまたま目に入った看板に固まる。
 
「どうした、南?」
「えっと……まぁ、いっかな……」

 休みに入ってすぐに借りたレンタルコミック二十冊、返してない。
 本は紙で読みたいし、休みに一気読みするのが好き。
 ジャンルは少女漫画を中心になんでも読む。
 実家に帰る前に返そうと思っていたのに、これじゃあ、セールで借りた意味がない。
 延滞料金つくけど、今から戻ると一緒にいる時間が少なくなるし。
 だけど、川上が何度も聞いてくるから仕方なく答えた。

「じゃあ、先に南の家に行こっか。それ返却してから買い物しよう。….気になるでしょ?」
「いいの? わざわざごめん。……ありがとう」
「南の部屋、楽しみだな」
「期待しないで? 狭いし散らかってるから」

 






 玄関を開けたら正面に下着が干してあるのが見えた。
 
「川上、五分待って?」

 扉を閉めようとすると川上に抱きこまれてするっと二人で部屋に入る。

「だって、もう見ちゃったし、もっと見たいし」
「さすがにちょっと恥ずかしい」
「今さらだよ」

 頭のてっぺんにキスを受け、渋々上がってもらう。
 玄関開けると廊下にキッチンがあって、向かいにユニットバス。
 今朝、ここから二時間弱の実家から戻って洗濯して部屋干しにした。
 急いで支度したから部屋をつなぐ扉を開けっぱなしで出かけたらしい。
 今日はそれほど散らかってないのが救い。
 とりあえず、ハンガーを端に移動して目隠しにタオルをかけた。
 川上には酔い潰れた時に使う、ごろ寝マットを座布団代わりに渡す。

「座ってて? 何か飲む?」
「何もいらないから準備してきて?慌てなくていいからね」
 
 コミックは袋に入れてロフトに置きっぱなしだったから、梯子で取りに行く。
 返却が明日まででほっとした。

「上で寝るんだ?」

 川上が立ち上がって覗き込む。

「あ……なんか、やばい……色々想像する」

 梯子を降る途中で、川上がウエストを抑えた。

「っ! なに?」
「スカートで梯子とか、無防備すぎ」

 そのまま、床に下ろされて抱きしめられた。
 
「新年早々、南らし過ぎる」
「んんっ」

 口づけられたと思ったらあっという間に服を脱がされ身体に触れられて蕩けてしまう。

「ふとん……ロフトなのっ」
「うん、ここでいい。……今度、上で不自由な思いをしながら抱いてみたいけど」

 川上がぱぱっと服を脱いで、どこからか取り出した避妊具を装着してごろ寝マットの上に仰向けになる。
 川上のアレが天を向いている。
 どこを見たらいいの?

「はい、乗って」

 昼間に、お互い裸でお酒に酔っているわけでもなくて。
 恥ずかし過ぎて涙目になる。

「……やらなきゃ、だめ?」
「南が下だと身体が痛いと思う。じゃあ、目をつぶってるから、おいで」
「……わかった」

 そっと近づいて川上の腹に手を置いた。
 せっかくだから小さな乳首に触れてみる。
 指で往復してこすったら立ち上がる。
 あ、楽しいかも。
 もう片方もこすっていると、川上から声がかかる。

「南……焦らしすぎ」
「ん。ごめん、ね?」

 太ももにまたがって、アレを握る。
 上下に何回かこすってから、はぁっと息を吐いた。
 蜜口に当てて少しずつ受け入れた。
 いつも何度もイかされてから挿入されるから、ちょっと違和感ある。
 あぁ、でも、気持ちいいかも。
 川上の腹に手を置いて上下に動いて馴染ませながら全てを受け入れた。
 顔を上げると、川上と目が合う。

「川、上?」

 いつからみてたの?

「大好き」

 そう言われて考えるのをやめた。

「キス、して?」

 身体を倒してお互いの呼吸を奪い合うように唇を重ねる。
 川上の手が尻を撫でさらに密着するように強く押しつけてきた。

「んっ……好き……川上も、キスも……」
「可愛すぎて、困る……俺をどうしたいの……南、好きだよ」
「動ける、かな….これ、慣れてなくて」

 身体を起こして胸のあたりに手を置いて腰を上下させる。

「手、貸して?」

 右手の指輪に口づけてから、両手を恋人つなぎで握られた。
 そのまま下から突き上げられて腰が跳ねる。

「ああっ!」
「かわい……おっぱいが揺れておいしそう。……腰浮かせて?」

 川上の言葉どおりに素直に腰をあげる。

「俺のが入ってるのが丸見えだ。南、下見て?」
「やだっ」

 そう言われて腰を落とすと中で動いて快感を拾う。

「んんーっ……」

 ぺたりと川上に抱きついて言った。

「そんなこと言われたら動けないっ」
「こっち向いて?」

 唇を重ねながら下から何度も突き上げられる。

「あぁ、もう、抱き潰したいけど、帰ってちゃんとベッドで愛し合いたい」

 背骨に沿って指先で撫でられ思わず背を逸らす。
 すると当たる角度が変わって、一気に絶頂に押し上げられた。
 川上は眉間にしわを寄せ、思い切り揺さぶる。

「だめっ、立てなく……なっちゃうっ」
「その時はっ、タクシー、使おうっ」
「やあぁーっ……」

 がくがくと震え、川上の剛直を締め上げる。

「ぅわっ……」

 次の瞬間、欲望を放った。
 お互い抱きしめあって荒く息を吐く。

「今夜ここに泊まらない? 食べ物はあるよ?」
「明日はうちに来てくれる?」
「いいよ。荷物も置いてきちゃったしね。返却したら買い物して帰ろうか」
「わかった……明日帰ろう。物足りないからもうちょっといい?」
「でも、ベッドで……って言ってたよ? 明日ね?」
「それなら、かわりにキスして」

 川上のキスは、気持ち良くてキスだけじゃすまないのを忘れてた。
 身体が熱くなってもっとしたくなる。
 大きく息を吐いてぎゅうっと抱きしめた。

「川上……朝イチで帰ろう、ね」

 


 

 


 
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