魔女は甘い果実に囚われて。

mari

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魔女は酷く甘い果実を欲する。

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ーーーーーー

ーーー



「・・・・」

「・・・・」

じーーーー。

(・・・・っ。)


「・・・あぁ。もうっっ、、」

もうずっと、こっちに向かってくる1本の矢

「何してるの、、。ヴィオ、、!てか、、近いっ、」

彼ーヴィオライドの視線が刺さる。

一向にそれる気配がないそれは、まるで視姦されているような錯覚にも陥るほど熱いものだ。
もうなれたはずのそれに、始めは気にせず無視していられた。
いつも浴びていればそうなる。
でも、だ。
今回は限界だった。

ー横に振り向くとすぐに目に入るのはいつも見ているあの綺麗な青色の瞳。

彼の色。

「ーなに?」

そう満面の笑顔で聞いてくるヴィオライド。

「っ、」

ー甘い。甘すぎる。

心臓が高鳴る音と共に、その笑顔に見惚れそうになってしまう。

さすが美貌の王子様とでもいうべきか。

いや。

彼だから、と言った方が正解だろう。

「ーって!違うっ。なぁに?じゃないわよっ
いい加減はなれーてー!」

いい加減少しでも引き離そうと力を入れてみるも、相手はさすがの男。ビクともしない。

「いーやーだーよっ。」

逆により近づかれる始末だ。

しかも、
「ソニアがいいって言ったんだけど?」
とかいって、腰に回されてる手も離れようとしない。

私が仕事コレをするのに邪魔にはなっていないところがまたずるいと思う。

(邪魔になってたら文句でも言ってやれるというのに)

もうずっとこの体勢、一体いつまで続ければいいのか。

「いつまで続けるつもり、、?」

「そーだなぁ、、ソニアがソレ、終わらせてくれるまでかなぁ?」

少なくとも、という彼。

(コレが終わるまで、、って。。ちょっ!)

顔が青ざめる。

タイムリミットとされたそれの量は、まだいつ終わるかもわからないくらいの大量さ。

それが終わるまで、となると、それは下手をするとこの私にくっついてる彼がいつも帰る時間にまでかかるのではないかとすら思える量。

彼が帰る時間までの時間を考えると、自分がこの状態にいつまで耐えられるかが危うい。

しかし、コレも終わらせなければならないことだ。

しかし、ヴィオライドに「ー嫌なのか?」と聞かれても、肯定は出来ないのだ。

ー嫌ではないから。そこも憎らしいとすら思えるのだけど、嫌ではないから仕方がないという。

でも、恥ずかしいから離して欲しい。切実に。

しかし、私の意思とは反対に一向に離れる気のないこの男。しかも、より近づこうとすらしている。これ以上近づいてどうするつもりだっ!、

ただでさえ近いというのに、話すたびに囁くようにいってくるからもう顔が熱くて仕方がない。

こんな顔、見られたくないのに隠すことも出来ないしっ、。

「ーゃっ、。」

ー首に何か柔らかな感触が触れた。

これって・・っ!


「ソニア、、顔、真っ赤。」


クスッと色気たっぷりに笑う彼。

「・・・っ!!ヴィオっ、、」

面白がられてるとしか思えない。


この甘さも、どうにかならないものかと感じる今日このごろ。・・ーいや、、ずっとだわ。

他ではそんなことないのに何なの?この変わりようは。

こんな姿他で見られたらヤバイでしょうけど。

ちらっと目線をそちらをみてみると


「・・・っ、ヴィオ。」

・・目、つぶってて。

我慢しきれずそう頼むも

「む・り。諦めて

  ー俺に、じっくり見られててよ。」

ね?


なんて、いうものだから、、もうなんとも言えない。

何を言っても無駄なことは昔からわかってる。
でも・・

(うー、、)


ーあぁ、もう!

まず、なんでこんなことになったのかだ。


ことの始まりは今から数時間前。
ヴィオライドがいつものように、私の家に来てすぐの時間ころのことだった。

  
       *


昨日は仕事が忙しすぎたらしく、珍しく来なかったヴィオライド。

今日は疲れたような顔をして、私の家に来た。
「あら、今日も来たの?」と、いつもと似たような言葉セリフを吐く。

いつもならそれに笑いながら返すヴィオライドもどれだけ疲れていたのか分からないが(むしろこの時点でヤバイかもと思うほどなのはたしかだけど)何も言わなかった。

そして

「ふぅぇっ、、!?」
 
突然ソニアに抱きついたヴィオライド。

思わず変な悲鳴をあげてしまった。

いきなりの事で驚いたが、一体何があったのか、あまり疲れた様子の見せない彼がこんな様子になるほどのことだ。よほどのことなのだろうと、そう思ったソニアは抱きしめられるという恥ずかしい状態を受け入れることにした。

それでヴィオライドの心が少しでも楽になるのなら。と、そう思ったからだ。

しかし思えば、これがまずかったのかもしれない。


「ヴィオ、、どうしたの、、?」

ソニアは心配していた、いつもとは少し違うヴィオライドを。

ヴィオライドはまだソニアを抱きしめる。

(ーちなみにソニアからヴィオライドの顔はみえていない。)

数分間ヴィオライドの腕にソニアは抱かれたままだったが、静かな空気に耐えきれなくなったのか、はたまたその状態が恥ずかしくなってきてしまったのか、ソニアは(やっと)その腕を解いてもらおうとして「そういえば」思い出したかのように言った。

「今日はヴィオの相手できないんだった。」

「・・ーえ。」

一瞬、珍しく声が低くなったように感じた。

「それ、どういうこと?」

(・・・・気のせい?)

ヴィオライドの声色はいつもどうりだ。

「久しぶりに結構大きな仕事が入ったのよ。。そこまで難しいのじゃあないんだけど・・」 

今回の依頼は昔からの知り合いからの依頼。
私が“ あの”魔女だと知っても優しいままでいてくれた人。

だから、どれだけ大変でも早く届けたかった。

「ーそうか。わかった。」

それなら仕方ないかーと少し不貞腐れたかのような顔を見せてくる彼。

(ふふっ、、)

「ーありがとう。」


でも。という声が続く。

「ソニアの近くにいるのはいいだろ?」

ー悪戯めいた声。

(・・・・)

「ー・・ええ。いいわ。」

少し、顔が引きつってしまったのは見ないことにしていただきたい。

ヴィオライドがあの顔をしている時はなにかしようとしている時とかが多い。

ーなにか嫌な予感がしたが、

「あと、別に少しくっつくのもいいよな?」

例えば、背中にくっつくのとか?というので、そのくらいはいいかとそれも許可してしまった。



ーこの数時間後。

私はこの発言を後悔することになる。

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