異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈

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#97 リオンの家庭の事情。その1

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 朝食が終わり、壱はまずサユリとともに川に向かう。米の種籾たねもみのチェックである。

 着くと、リオン以外が全員来ていた。

「おはようございます」

「おはようカピ」

「おはようございます」

「おはようっす!」

「おはようございますー」

「リオンがまだなんすよ。珍しいっすよね。時間にはいつも正確なのに」

「ねー。何かあったのかなー。お家の事?」

「あー、あー確かそうか、あれがあったっすね」

 ナイルの台詞に、ジェンが頷く。

「そうですね。リオンが来たら聞いて見る事にしましょうか」

 壱の知らない、だが村では周知の事情がある様だ。だが詮索は良く無いだろう。

 壱が黙っていると、ガイが気付き苦笑する。

「村人全員が知っている事なので、黙っている必要は無いと思うんですが、イチくんは店長さんから聞かれた方が良いかも知れませんね。イチくんも知っておいた方が良いと思うので」

「うん、解りました」

 何か深刻な理由があるのだろうか。壱は眼を伏せる。

 その時、リオンが走ってやって来た。

「す、すいません、はぁ、遅くなって、はぁ」

 息を切らしながら謝るリオン。物凄く久しぶりにリオンの声を聞いた気がする。

「大丈夫ですよ。俺たち聞いた方が良いですか?」

「いや。いつもと変わらないから」

 リオンは神妙な顔で首を振った。

「けど、イチさんには聞いておいて貰わないと。うちの事情なんですが、村人みんなが知ってる事なので」

「あ、はい。解りました」

 どうやら茂造より前に、本人から聞く事になりそうだ。

「では、まずは種の様子ですね。大丈夫です。流されてはいません」

 見ると、石に繋がれた種籾の袋は昨日と同じ場所で、川の流れに揺られていた。石も動いていない様だ。

 壱は袋を引き上げて、中を見て見る。水に浸し始めて3日目。変化はまだ無いだろうが。

 準備が終わると、種籾が水分をたっぷり含んで、白い芽が顔を出す。そうなれば土に埋められるのだが。

 てのひらに乗せて見る。やはりまだ変化は無かった。しかしもみの中ではきっと変わり始めている筈だ。壱は種籾を袋に戻し、また川に入れた。流水にさらされて、ゆらりと揺れる。

「じゃあ、リオンの話を聞きましょう。イチくん、時間大丈夫ですか?」

「はい。大丈夫だと思います。じいちゃん、店長に言って来ますね。あ、食堂のフロア借りましょうか?」

「それは助かりますが、開店準備とかあるんじゃ無いですか?」

「端のテーブルを使って、その後自分たちで掃除をすれば。じゃあ行きましょうか」

 壱たちは連なって食堂に向かう。到着すると、裏口から顔を覗かす。既に仕込みは始まっていた。

「カリル、サント、おはよう」

「おはよう!」

 サントは小さく頷く。

「じいちゃんあのさ、リオンの家で何かあったらしくて。話聞かせてくれるって言ってくれてるから、昼の仕込み少し抜けて良いかな」

「おお、そうか。解ったぞい」

「で、フロアの端のテーブル借りて良い? 後で自分たちで掃除するから」

「構わんぞい」

「ありがとう」

 忙しい時に、こうもすんなりお許しが貰えるとは、やはりリオンの事は深刻なのだろうか。

 壱たちは表に回り、食堂のドアを開ける。フロアではマユリたちが掃除中だった。

「おはよう。ごめん、端のテーブル借りるね。使った後の掃除は俺らでするから」

「あ、イチ、おはよー!」

「あらぁ、おはよう。どうしたの米農家さんたちがぞろぞろとぉ」

「お、おはよう、ございます。お、お掃除は、お、お気になさらないで、ください。わ、私たちで、やりますから」

「あ、あの」

 リオンが手を上げて1歩前に出る。

「うちでちょっと、あって」

「あらぁ」

 マーガレットが指を頬に添えた。

「ゆっくりして行って頂戴ねぇ。お掃除とかは、本当に気にする必要は無いのよぉ~」

「ありがとう。でも掃除はやっぱり俺たちでやるから」

 そこまで世話になる訳には行かない。仕事の邪魔をしてしまうのだから。
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