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#96 昆布出汁の豚汁と、昆布の味噌佃煮で朝ご飯。その2
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「それは嬉しいのう。和風出汁なんて何年振りかのう。壱に来て貰ってから、いろいろと懐かしいものが食べられて嬉しいのう」
茂造は嬉しそうに笑みを浮かべる。
「鰹節がまだ無いから、昆布からしっかり出汁を取ってみた。小皿のはその昆布を使った佃煮。味噌味だけど」
「おお、佃煮まで……! ありがとうじゃのう、嬉しいのう」
茂造が嬉しそうに笑みを浮かべ、何度も何度も首を振る。
「そんなに嬉しいものなのだカピ?」
サユリが不思議そうに首を傾げる。
「そりゃあのう。何せ10年振りの和風出汁じゃ。嬉しく無い訳が無いのう。では早速いただくとしようかの」
茂造が豚汁を手にし、一口啜る。既に下げられていた目尻が更に下げられる。
「旨いのう。やはり和風出汁の味噌汁は旨いのう。おお、これは豚汁じゃったか。旨いのう」
「喜んで貰えて良かったよ」
壱も豚汁を口に含む。先程味見はしたが、さてどうだろうか。
うん、口に広がる昆布の風味。味噌に豚肉や玉ねぎなどからも旨味が溶け出して、とても美味しく出来ている。具も巧く煮えている。
控えめに言ってもとても旨い。壱も満足で目尻を下げた。
「サユリ、どうかな、昆布出汁」
「うむ、成る程カピ。これまでの味噌汁も旨かったカピが、やはり和のものには和と言う事カピか。これは旨いカピ」
サユリが豚汁のサラダボウルから顔を離さず言う。夢中になって食べてくれている。
「ふう」
漸く顔を上げ、次は佃煮に鼻を寄せる。
「これは何カピか?」
「出汁を取った後の昆布で作った佃煮っていうやつ。いつも俺らが食べてるのとは味付け違うけど。少し塩辛いから、ご飯と一緒に食べたら美味しいよ。はい」
壱はサユリのご飯に、佃煮を一切れ乗せてやる。サユリはまた鼻を近付けると、齧り付いた。
「成る程カピ。この微かな塩辛さが米の甘みを引き立たせるのだカピな。これは幾らでも米が食べられてしまうカピ。ほら壱、もっと佃煮とやらを米に乗せるカピ」
「はいはい。でもあんまり量が無いから、配分気を付けてな」
壱は笑って言うと、ご飯にサユリの分の佃煮を全部乗せてやった。
「うむ。この佃煮も良く出来るおるのう。ご飯が旨いのう」
茂造も佃煮でご飯を掻っ込んでいた。では、壱も一口。
成る程、これも我ながら良く出来ている。甘辛い味付けが絶妙である。何とも白米が進む一品だ。
「旨く出来てる! 良かったー」
「うむ、旨いのう」
「なかなかやるカピな、壱」
「ありがとう! 豚汁はお代わりあるから、どんどん食べてね」
「それは嬉しいのう」
「我も食べるカピ。もっと寄越すカピ」
「はいはい」
壱は笑うと、また目の前の食事に夢中になった。
「ところで壱よ、ずっと言いたかったんじゃが」
食事がひと段落した頃、茂造が口を開いた。
「ロビンに頼んで、箸を作ってもらわんかの」
「あ、箸、あー、箸か!」
フォークで食べるのに慣れてしまい、すっかり忘れていた。
確かに木製工房のロビンなら、箸の1膳や2膳、作れるだろう。
「そうだな。そうして貰えたら嬉しいな。今度頼んでみようかな。設計図とかいるかな。実際の太さ調べておかなきゃ。ちゃんと使いやすいものじゃ無いと」
「箸とは何カピか?」
「俺らの世界、と言うかアジア圏で主に使うカトラリー、テーブルウエアだよ。2本の棒みたいなのを使って食べるんだ」
「ふうん? 難しそうカピな」
「大体は小さい頃に親に躾けられるからね。大人になってもちゃんと箸持てない人もいるけど、大概は大丈夫。この世界は基本ナイフとフォークだし、じいちゃんと俺が使う分あれば良いよな」
「そうじゃの。今度作ってもらうとするかの」
茂造は言い、ほっほっほ、と笑った。
茂造は嬉しそうに笑みを浮かべる。
「鰹節がまだ無いから、昆布からしっかり出汁を取ってみた。小皿のはその昆布を使った佃煮。味噌味だけど」
「おお、佃煮まで……! ありがとうじゃのう、嬉しいのう」
茂造が嬉しそうに笑みを浮かべ、何度も何度も首を振る。
「そんなに嬉しいものなのだカピ?」
サユリが不思議そうに首を傾げる。
「そりゃあのう。何せ10年振りの和風出汁じゃ。嬉しく無い訳が無いのう。では早速いただくとしようかの」
茂造が豚汁を手にし、一口啜る。既に下げられていた目尻が更に下げられる。
「旨いのう。やはり和風出汁の味噌汁は旨いのう。おお、これは豚汁じゃったか。旨いのう」
「喜んで貰えて良かったよ」
壱も豚汁を口に含む。先程味見はしたが、さてどうだろうか。
うん、口に広がる昆布の風味。味噌に豚肉や玉ねぎなどからも旨味が溶け出して、とても美味しく出来ている。具も巧く煮えている。
控えめに言ってもとても旨い。壱も満足で目尻を下げた。
「サユリ、どうかな、昆布出汁」
「うむ、成る程カピ。これまでの味噌汁も旨かったカピが、やはり和のものには和と言う事カピか。これは旨いカピ」
サユリが豚汁のサラダボウルから顔を離さず言う。夢中になって食べてくれている。
「ふう」
漸く顔を上げ、次は佃煮に鼻を寄せる。
「これは何カピか?」
「出汁を取った後の昆布で作った佃煮っていうやつ。いつも俺らが食べてるのとは味付け違うけど。少し塩辛いから、ご飯と一緒に食べたら美味しいよ。はい」
壱はサユリのご飯に、佃煮を一切れ乗せてやる。サユリはまた鼻を近付けると、齧り付いた。
「成る程カピ。この微かな塩辛さが米の甘みを引き立たせるのだカピな。これは幾らでも米が食べられてしまうカピ。ほら壱、もっと佃煮とやらを米に乗せるカピ」
「はいはい。でもあんまり量が無いから、配分気を付けてな」
壱は笑って言うと、ご飯にサユリの分の佃煮を全部乗せてやった。
「うむ。この佃煮も良く出来るおるのう。ご飯が旨いのう」
茂造も佃煮でご飯を掻っ込んでいた。では、壱も一口。
成る程、これも我ながら良く出来ている。甘辛い味付けが絶妙である。何とも白米が進む一品だ。
「旨く出来てる! 良かったー」
「うむ、旨いのう」
「なかなかやるカピな、壱」
「ありがとう! 豚汁はお代わりあるから、どんどん食べてね」
「それは嬉しいのう」
「我も食べるカピ。もっと寄越すカピ」
「はいはい」
壱は笑うと、また目の前の食事に夢中になった。
「ところで壱よ、ずっと言いたかったんじゃが」
食事がひと段落した頃、茂造が口を開いた。
「ロビンに頼んで、箸を作ってもらわんかの」
「あ、箸、あー、箸か!」
フォークで食べるのに慣れてしまい、すっかり忘れていた。
確かに木製工房のロビンなら、箸の1膳や2膳、作れるだろう。
「そうだな。そうして貰えたら嬉しいな。今度頼んでみようかな。設計図とかいるかな。実際の太さ調べておかなきゃ。ちゃんと使いやすいものじゃ無いと」
「箸とは何カピか?」
「俺らの世界、と言うかアジア圏で主に使うカトラリー、テーブルウエアだよ。2本の棒みたいなのを使って食べるんだ」
「ふうん? 難しそうカピな」
「大体は小さい頃に親に躾けられるからね。大人になってもちゃんと箸持てない人もいるけど、大概は大丈夫。この世界は基本ナイフとフォークだし、じいちゃんと俺が使う分あれば良いよな」
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茂造は言い、ほっほっほ、と笑った。
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