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#44 朝食で贅沢なお味噌汁を。その2
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さて、食べるとしよう。
「口に合うと良いんだけど。いただきます」
「いただくとしようかの」
「いただくカピ」
まずは味噌汁。器に直接口を付け、啜る。途中で味見をしていた壱ですら、その出来栄えに眼を見開いた。
「やった、旨い!」
つい口に出す。鯛の出汁がしっかりと出ていて、臭みはまるで無い。鯛と味噌の旨味がしっかりと感じられる。
鯛は白身なので、そもそも癖の少ない魚ではある。だがそれを丁寧に、塩振りに霜降りと下処理をし、そこまでして、この味に辿り着く。
鯛のあっさりとした、しかしコクのある風味に味噌が合わさって、この味が出る。壱は達成感に眼を閉じた。手間を掛けた甲斐があったと。
次に鯛団子を口に含む。繋ぎの小麦粉と微塵切りの玉ねぎのお陰か、ふんわりと柔らかく仕上がっている。
それがまた味噌と合って味わい深い。壱は何度も口を動かした。
ご飯は有無を言わさず美味しい。最後にフォークを伸ばしたのは卵焼き。うん、加減も悪く無い。卵の味を生かした程良い塩加減だ。
「旨いのう。味噌汁も卵焼きもご飯も旨いのう。嬉しいのう」
恐らく数年ぶりに和食を口にする茂造が、眼を細めてしみじみと言う。その手は止まらない。
壱も数日振りの味噌汁を堪能した。ほっとする味。鯛の出汁なので、家で飲んでいた昆布と鰹出汁の味噌汁よりもずっと贅沢だ。なのに懐かしさを覚える。
「サユリはどうだ? 口に合う?」
黙々と味噌汁のサラダボウルに顔を突っ込むサユリに聞いてみると、暫し後に顔を上げる。
「うむ、面白いカピな。これは味噌を溶かしただけでは無いのだカピな。昨日きゅうりに付けた味噌だけでは無い味がするカピ」
「正解。鯛の粗で出汁を取ったんだ。塩振って霜降りしてって、実は結構手間が掛かるんだよ。昆布と鰹節、せめて昆布だけでもあれば、もっと楽に作れるんだけどなぁ」
「コンブとは何カピ?」
「海の幸なんだけど、こっちでは食べないのかな。つか生えてるのかな」
「ううむ、儂も海に潜る機会が無かったから、海の底がどうなっているかは判らんのう」
「うーん、俺が潜れたら良いんだろうけども、泳ぎは得意じゃ無くてさぁ」
壱と茂造が困り顔で腕を組むと、サユリが何気無く言った。
「なら、我が潜るカピ」
ふたりは驚いてサユリを見る。
「サユリ、そんな事まで出来んの?」
「そもそもカピバラは泳げるカピ。我の場合は魔法で息を長時間保たせられるし、濡れもしないカピよ。銭湯に浸かるのは大好きだカピが、海水はべたべたするから苦手カピ」
「へぇ、凄い」
素直に感心する。そう言えば、サユリに噛まれた、壱が行き着けていた動物園にも池があって、カピバラがそこで気持ち良さそうに泳いでいた。
「鰹ブシとやらも、この村でも鰹は上がるカピ」
「そうなの?」
食堂に仕入れられないので、無いものだと思っていた。
「生で食べるにはやや癖があるからのう。村人からの評判があまり良く無くての、カルパッチョから抜いて他の魚を増やしたんじゃ。今は釣り上がっても海に戻しておる」
「そっかぁ。タタキとか美味しいんだけどな」
「タタキか! それは儂も食いたいのう」
茂造が顔を輝かせる。
「フライパンででも作れるよ。風味はどうしても藁焼きとか炭焼きよりは落ちるんだけど。ポン酢が無くても塩で食べたら良いし、薬味に玉ねぎとにんにくがあるから、今度作るよ」
「楽しみじゃ」
茂造は眼を細める。
「壱に来て貰ってから、いろいろな懐かしいものが食べられて嬉しいのう」
「それはそれで興味深いカピが、まずは鰹ブシ、鰹が上がれば作れるのでは無いカピか?」
「うん。作り方すら見た事が無いんだけど、スマホで調べてみるよ。サユリがいたら出来そうな気がする」
「大概は時間魔法でどうにでもなるカピ」
「では、漁師たちに今度鰹が上がったら、持って来て貰える様に言っておくかのう。何尾要るかのう」
「鰹節用とタタキ用で、まずは2尾かな?」
昆布と鰹節があれば、もっと手軽に味噌汁が作れる。となると、毎朝飲める様になるでは無いか。壱は期待に膨らんだ。
「口に合うと良いんだけど。いただきます」
「いただくとしようかの」
「いただくカピ」
まずは味噌汁。器に直接口を付け、啜る。途中で味見をしていた壱ですら、その出来栄えに眼を見開いた。
「やった、旨い!」
つい口に出す。鯛の出汁がしっかりと出ていて、臭みはまるで無い。鯛と味噌の旨味がしっかりと感じられる。
鯛は白身なので、そもそも癖の少ない魚ではある。だがそれを丁寧に、塩振りに霜降りと下処理をし、そこまでして、この味に辿り着く。
鯛のあっさりとした、しかしコクのある風味に味噌が合わさって、この味が出る。壱は達成感に眼を閉じた。手間を掛けた甲斐があったと。
次に鯛団子を口に含む。繋ぎの小麦粉と微塵切りの玉ねぎのお陰か、ふんわりと柔らかく仕上がっている。
それがまた味噌と合って味わい深い。壱は何度も口を動かした。
ご飯は有無を言わさず美味しい。最後にフォークを伸ばしたのは卵焼き。うん、加減も悪く無い。卵の味を生かした程良い塩加減だ。
「旨いのう。味噌汁も卵焼きもご飯も旨いのう。嬉しいのう」
恐らく数年ぶりに和食を口にする茂造が、眼を細めてしみじみと言う。その手は止まらない。
壱も数日振りの味噌汁を堪能した。ほっとする味。鯛の出汁なので、家で飲んでいた昆布と鰹出汁の味噌汁よりもずっと贅沢だ。なのに懐かしさを覚える。
「サユリはどうだ? 口に合う?」
黙々と味噌汁のサラダボウルに顔を突っ込むサユリに聞いてみると、暫し後に顔を上げる。
「うむ、面白いカピな。これは味噌を溶かしただけでは無いのだカピな。昨日きゅうりに付けた味噌だけでは無い味がするカピ」
「正解。鯛の粗で出汁を取ったんだ。塩振って霜降りしてって、実は結構手間が掛かるんだよ。昆布と鰹節、せめて昆布だけでもあれば、もっと楽に作れるんだけどなぁ」
「コンブとは何カピ?」
「海の幸なんだけど、こっちでは食べないのかな。つか生えてるのかな」
「ううむ、儂も海に潜る機会が無かったから、海の底がどうなっているかは判らんのう」
「うーん、俺が潜れたら良いんだろうけども、泳ぎは得意じゃ無くてさぁ」
壱と茂造が困り顔で腕を組むと、サユリが何気無く言った。
「なら、我が潜るカピ」
ふたりは驚いてサユリを見る。
「サユリ、そんな事まで出来んの?」
「そもそもカピバラは泳げるカピ。我の場合は魔法で息を長時間保たせられるし、濡れもしないカピよ。銭湯に浸かるのは大好きだカピが、海水はべたべたするから苦手カピ」
「へぇ、凄い」
素直に感心する。そう言えば、サユリに噛まれた、壱が行き着けていた動物園にも池があって、カピバラがそこで気持ち良さそうに泳いでいた。
「鰹ブシとやらも、この村でも鰹は上がるカピ」
「そうなの?」
食堂に仕入れられないので、無いものだと思っていた。
「生で食べるにはやや癖があるからのう。村人からの評判があまり良く無くての、カルパッチョから抜いて他の魚を増やしたんじゃ。今は釣り上がっても海に戻しておる」
「そっかぁ。タタキとか美味しいんだけどな」
「タタキか! それは儂も食いたいのう」
茂造が顔を輝かせる。
「フライパンででも作れるよ。風味はどうしても藁焼きとか炭焼きよりは落ちるんだけど。ポン酢が無くても塩で食べたら良いし、薬味に玉ねぎとにんにくがあるから、今度作るよ」
「楽しみじゃ」
茂造は眼を細める。
「壱に来て貰ってから、いろいろな懐かしいものが食べられて嬉しいのう」
「それはそれで興味深いカピが、まずは鰹ブシ、鰹が上がれば作れるのでは無いカピか?」
「うん。作り方すら見た事が無いんだけど、スマホで調べてみるよ。サユリがいたら出来そうな気がする」
「大概は時間魔法でどうにでもなるカピ」
「では、漁師たちに今度鰹が上がったら、持って来て貰える様に言っておくかのう。何尾要るかのう」
「鰹節用とタタキ用で、まずは2尾かな?」
昆布と鰹節があれば、もっと手軽に味噌汁が作れる。となると、毎朝飲める様になるでは無いか。壱は期待に膨らんだ。
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