【R18】特攻E小隊

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第二十話 チームアルファ

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「竜族は出てこないようですね」
 前方組で、塹壕の中に待機しているエルがカレンに話かけた。

 すでに後方の大型火器から、要塞に向け次々に砲弾が発射され続けており、すごい轟音と硝煙のにおいがあたりを覆っている。
 しかしながら、敵も要塞に籠って出てこず、籠城戦の様相だ。

 エルたちのすぐ隣の塹壕に、アイリスとリサ、メグも待機しており前方の様子を伺っていた。そしてそのちょっと前方に、若い推し兵たちが塹壕を掘り、その前に弾除けのバリケードを設置しており、頭の上を砲弾が行き来する中、まさに彼女たちの盾として踏ん張っている。

「まあこうなると、私の主な任務は、シールドで後ろの大砲ちゃんたちを守ることね。敵の弾もだんだん近寄ってきているみたいだし、始めるわよ~」
「お、お手柔らかにお願いしますね……」
「う―ん、だめっ。ここにいるみんなに無事に帰ってほしいから。
 手加減は無しよ~!」
 そういいながら、カレンはエルに後ろから抱きつき、お腹に両手を回した。
「ふあっ!」
 エルからため息のようなものが漏れるが、この轟音の中では誰にも聞こえない。
「う~ん。もっといい声で鳴いて―、エルちゃん! 
 どうせ聞こえはしないわよ―ん」
 カレンはお腹からわき腹にかけ、ゆっくり指を這わせていく。そして乳房の下に掌を添え、ゆっくりと揉みだした。
「くっ、んは―っ」
(服の上からだというのに、なんでこんなに感じるのかしら……あんっ)
 エルは、自分には百合っ気は無いだろうと思っていたのだが、もしかしたら……などとぼ―っとしながら考えていた。一方、カレンは絶好調なようで、彼女が作り出すシールドは、どんどんその半径を広げ、強固なものになっているように思えた。

「ブラボーは、そろそろ要塞に突入したころかしら?」
 砲撃を開始して三十分が経過した。予定だと、そろそろローアイ少尉達が要塞の裏手に到達するはずだと、アイリスは思った。
「フォルテ、状況は?」
「はい、チームブラボーは、要塞裏手からの侵入を開始したようです」

「チームブラボー? 何ですかそれ?」
 メグが問う。
「もう、ブリーフィングで何聞いてたのよ? 今回は小隊をまたいだ変則編成なので、私たち、前方のエルフ・人間合同チームがチームアルファ。後方の要塞にとりつくほうが、チームブラボー!」
 メグがリサに叱られている。

「どうやら、竜族は在庫切れみたいね。そうなると私たちに出来ることは少ないけど、油断せずに頑張りましょう、二人とも」
「ははっ、たまにはエルちゃんと交代しますか?」
「なに馬鹿なこと言ってんの!」
 メグの言葉に、アイリスは真っ赤になって反応した。
(でも、確かに彼女だけに頑張らせるのも……)
 一瞬、以前、自分がカレンと接触試験をした時の事を思い出し、背中がゾクっとした。

 その時、フォルテが激しく明滅した。
「北部カレスト地区監視塔より緊急入電。
 ドラゴンが、こちらの敵要塞方面に高速で移動中。
 推定到達時刻まで、あと二十分」
 
 その近くにいた全員の顔がこわばった。

「くそ! おいでなさったか!」
 メグが立ち上がる。
「どうやら私たちの出番もちゃんとありそうだね、メグ!」
 リサも何となくうれしそうに見えた。
「とにかくみんな、落ち着いて冷静に! 
 フォルテ、中隊本部に対応を至急確認して」
 そう言いながら、アイリスも心中穏やかではなかった。
(ローアイ少尉、お願い、一刻も早く救出完了して脱出してっ!)

 中隊本部から、ドラゴン到達予想時刻十分前までに、前線を三百m後退させる旨、指令が出された。そして、それまでにチームブラボーが脱出に成功すれば、その時点での全軍即時撤退が指示された。

 ◇◇◇

「なんとか予定時刻に間に合ったな」

 時刻を確認して、要塞裏に集まったメンバーの点呼を取ったが、全員そろっている。要塞裏にも歩哨は何人かいる様だが、こちらの思惑通り、前側に人手をとられている様でお世辞にも手厚い警備とは言えない。ここで、ベテランの第八小隊のメンバーに、それら歩哨を無力化してもらい、あわせて要塞裏手の扉と、そのちょっと奥にある階段までの制圧を指示した。第十二小隊は、元気はあるが如何せん経験不足な新兵が多く、正面からの突入ではなく、敵の死角からはしごで二階の目的の部屋を目指させることとし、俺と沙羅は数人の護衛と共に、外で指示を出しながら、敵が横から廻りこんで来ないかウォッチすることにした。

「よ―し、いくぞ。野郎ども! 俺たちのアイドルを救いだせ! かかれ―!」
 俺の号令一過、全員が予定の行動にとりかかる。各小隊の支援AIは、ポコとLinkを張りつつ、兵らと一緒に要塞に向って行った。

 五分後、第八小隊は階段までの通路を制圧し、それを確保しつつ、正面側から戻ってきた敵と要塞内で交戦中とのことだ。第十二小隊は、目的の部屋の近くに窓がなく、直接その部屋への侵入が難しそうなため、少し離れた逆側の窓から、梯子での侵入を試み、二階にいた敵兵と交戦中だ。

 戦況がポコから逐次報告される。

「入電。
 第八小隊ハ、階段一階部分マデノ制圧自体ハシバラク持チコタエラレソウダガ、敵ノ攻撃モ激シク、二階マデ回り込ム余裕ガナイとのコト。ナオ、二階にまな集積反応ガアリ、たーげっとト思ワれるガ、他魔族ノ可能性モアリ。トノコトデス」

 そうなると、俺と沙羅は、念のため二階の支援に回った方がよさそうだ。一緒にいた護衛の兵達には、引き続き周辺のウォッチを続ける様指示し、沙羅とともに、第十二小隊が確保している梯子に向かった。

 梯子で上がったところの二階の部屋は抑えられたが、ターゲットがいると思われる部屋が、廊下のはす向かいで、肝心の廊下を、敵さんが自由に通してくれない状況だった。
 廊下の階段側の奥に小銃を構えた数人がいて、廊下に出ると狙撃される。救出後の帰り道のことも考えるとこの廊下の制圧は必須だが、狭すぎて、手りゅう弾だと階段下の第八小隊にも迷惑がかかる可能性があった。

 その時、ポコが激しく明滅した。
「北部かれすと地区監視塔ヨリ緊急入電。
 どらごんガ、コチラノ敵要塞方面ニ高速デ移動中。
 推定到達時刻マデ、アト二十分」
「くそ、こっちに来やがったか。
 早いとこ救出を完了して逃げ出さないと、面倒だな」

 気持ちは早るが、どうしたものか……
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