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1.日野谷
1-5. 若松の森
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翌朝、脇腹の痛みで飛び起きた。
「いたたた…」
目を開けると見知らぬ男が立っており、どうやら蹴られたらしい。鶴千代の横では同じく蹴られたらしく、義太夫が腹を抑えている。
(なんと乱暴な…)
こんな狼藉を受けたことがない。
「もう少し違う起こし方があるじゃろ」
義太夫が怒って起き上がると、仁王立ちになって見下ろしていた男が笑う。
「いつまで寝ておるのじゃ」
「わしは兎も角、客人を蹴るな」
起き上がると頭が痛い。これは飲みすぎたようだ。騒がしい二人の声が頭に響く。
「何、客人?甲賀辺りから来たおぬしの連れではないのか」
この狼藉者は甲賀の者ではないらしい。
「戯けたことを申すな。甲賀の者が絹など着るか。彦八、そのお方は上様の娘婿の蒲生鶴千代様じゃ」
彦八と呼ばれた男はそれを聞き、腰も抜かさんばかりに驚いた。
「な、なに!蒲生鶴千代?!…?まことか、それは。殿は何も仰せではなかったが…」
鶴千代は、あれ、と首を傾げ、
「上様の娘婿?わしが?」
「おや、違うたかのう。わしはそう聞いたが…」
確かに、以前、信長から娘をやる、と言われたことがある。そのとき限りの話で、戯れと思っていたのだが。
「まぁ、どちらでもよい。飯を食って早速稽古としよう」
「稽古とは?」
「殿から、ここで武芸の稽古をせいと言われたであろう?」
「何故、それを…」
一益にそう言われたのは部屋から少し離れた庭先だった。しかもそのとき、義太夫は完全に酔いつぶれて寝入っていた。
(そういえば、昨夜は…)
すっかり調子に乗り、一益に兄弟固めの盃をとねだったことを思い出した。そのあと更に勢いがつき、一益の前で気分よく三国志演武の一節を吟じ、そしてその後が思い出せない。
義太夫に連れられて行った部屋で、家人たちに交じって朝餉を取る。
(これは一体…)
椀に盛られたものを見て、箸が止まる。鶴千代が普段食べていたのは白米。岐阜にきてから織田家で出されたものは玄米。しかし今、目の前にあるのは白米でもなければ、玄米でもない。
(米ではない)
奇妙な色をしている。一体、なんだろうか。その横には辺りに生えていそうな野草が申し訳程度に副菜として添えられ、味噌汁にも見覚えのないものが浮かんでいる。
「如何した、鶴殿。しっかり飯を食わんか。殿は、一日五合食えと、そう仰せじゃ」
「一日五合?」
椀に山と盛られているのはそのせいらしい。副菜はあってなきかのような量だ。五合と言っているのは副菜の貧しさを補うためと思われたが、それにしても大変な量で、普段から食の細い鶴千代には至難の業だ。
「あの…これは…」
味噌汁を持って尋ねてみると、
「味噌汁じゃ。日野には味噌がないか?」
「いや…味噌汁の中に…」
「お?芋がらの茎ではないか。妙なことばかり申すのう」
義太夫は平然と平らげていく。
(芋がらの茎?)
説明を聞いてもよくわからなかった。
その上、館と馬屋が近すぎる。馬屋から漂う匂いが強く、どうにも飯が喉を通りにくい。鶴千代は義太夫に倣い、味噌汁を飯にかけて、口に流し込んだ。
「おぉ!見事な食いっぷりじゃ。まだまだ飯は仰山ある。遠慮のう食え」
「い、いや!それには及ばず」
慌てて義太夫を押しとどめる。
「それよりも、昨夜は、ちと酔いすぎて左近殿に無礼なことを言うたのではないかと案じられ…」
(挙句の果てに、こんなところで当たり前のように飯を食っていていいのか…)
心配していたことを告げると、義太夫が明るく笑う。
「男のくせに、つまらぬことをくよくよ考えるな」
「つまらぬこと?」
「然様。殿はそのような小さき器ではない。案ずるな、案ずるな」
力いっぱい背中を叩かれた。本当に大丈夫だろうか。この義太夫という真面目さの欠片もない瓢げた男といると、だんだん可笑しな色に染められていく気がした。
滝川家に通い、武芸に励むようになってから三か月。鶴千代は一益に呼ばれた。
「そなたの元服の日取りが決まった」
「元服」
「上様が直々に烏帽子親を務める。明後日、岐阜城へ登城いたせ」
「はい」
鶴千代は頷き、詰所に戻る。
(佐助、わしは元服する。このわしの晴れの日に、おぬしは顔を見せてくれぬのか)
一番喜んでくれる筈の佐助が共にいない。
(もう、誰の手を借りることもなく、一人で馬に乗れるようになった。元服すれば初陣の日も近い。その時までに戻って参れ)
岐阜に来てからも、佐助がひょっこりと顔を出すのを待っていた。あれ以来、一度も姿を見ないが生きていれば必ず、元服には、いや元服に間に合わなくても初陣にはきっと姿を見せてくれる。
(されどもし、現れなかったら…)
考えたくもないことが頭をよぎり、ふいに不安に襲われる。
そこへ、義太夫がひょいとやってきた。
「如何した。元服であろう?烏帽子親は上様というではないか。嬉しゅうないのか」
嬉しそうにしているつもりだが、義太夫が肘で小突いてくる。
「無論、喜んでおる」
「下手な嘘をつくな。何を気にしておる。白状せい」
何故わかるのか。義太夫はやけにしつこい。
「よいか。素破の目を欺こうなど、百年早いわい」
そうだった。義太夫ばかりではない。新介も、助太郎も、助九郎も、そして一益自身もただの武士ではない。この家の者の大半が素破だ。
(もしや…)
同じ甲賀の出であれば、佐助のことを知っているのではないだろうか。
「義太夫。三雲…という名を存じておるか」
「おぉ。知らぬはずもなし。甲賀五十三家の中でも大身じゃ。三雲の本家は未だ六角親子を匿い、甲賀の三雲城に籠っておるではないか。あの家の三郎左衛門は気位の高い頑固親父。甲賀衆の中では三雲家は格上じゃなどと抜かしおる。まぁ、まず織田に降ることはあるまいて」
随分詳しい。甲賀は思っていた以上に狭い世界らしい。
「六角のお館様は未だ近江を取り戻そうとされておるのか」
「あの地を四百年も治めていたのじゃ。そう簡単に諦めるとも思えぬが…。で、三雲が如何した?知り合いがおるか?惚れた女子か?」
「女子ではないが…」
「では男か。蒲生家の家人か?後藤家の者か?」
鶴千代は驚いて義太夫を見る。母・お桐が後藤の家の出であることも、後藤の叔父が謀反の嫌疑で討ち取られたことも知っているようだ。
「後藤…なぜ、それを…」
「六角のお家騒動を知らぬ者はおらぬ。おぬしの祖父・快幹によって後藤の跡継ぎにされた後藤喜三郎は、我らが近江に攻め入った折、いの一番に織田家に臣従しておる」
「喜三郎が…」
理不尽に親を殺された従兄弟の後藤喜三郎は、真っ先に調略の対象になっていた。喜三郎は、信長の招きに応じ、蒲生家が織田に降伏すると決める前から、いち早く信長に従っていたようだ。
(何も知らなかった)
あの頃の鶴千代は佐助から得た情報しか知りようがなかった。
(そうか。佐助、おぬしは…)
佐助の口から後藤の家の話がでたことは一度もない。鶴千代がお桐の事で心を痛めていることをよく知っていたので、あえて口にしなかったのだろう。
「勿体つけるな。三雲家にいるのは誰じゃ?」
義太夫がじれて急かせてくる。
「佐助…三雲佐助…」
とても久しぶりにその名を口にし、ふいに涙が溢れた。義太夫はなにごとが起きたかと驚き、
「それはおぬしの?」
「誰よりも大切な…友」
鶴千代の目からポロリと涙がこぼれた。
四月になり、一益をはじめとした滝川家の面々が伊勢へ戻っていった。岐阜で元服した鶴千代は忠三郎と名を改め、日野へ戻る旅支度をはじめる。
「昨年九月から八か月。あっという間でござりました」
部屋の掃除をすませた町野新三郎も、無事に役目を果たして安堵しているようだ。
「新三郎、大儀であった。されど日野へ戻れば、もう大事ない。わしにかまけておらず、おぬしは家へ帰れ」
故国を離れ、八か月もの間、帰してやることができなかったことへの詫びのつもりだった。しかし町野新三郎は急に真顔になる。
「若。これはそれがしの身の不徳ゆえと思うておりますが、若は未だ、三雲佐助の帰りをお待ちなのでは?」
心の内を言い当てられてドキリとしたが、次の瞬間、軽く笑った。
「如何した。突然、そのような…」
「三雲佐助は六角家の命により我が家や若の近辺を探っていた間者ではありませぬか」
忠三郎の心が大きく揺り動かされる。笑みを湛えたまま平静を保つのに必死だ。
「そのことはよく…」
「幼い若を欺き、敵に通じていた不届き者ゆえ大殿に成敗されたと聞き及んでおりまする」
佐助は最後、何と言っていたか。自分には何の咎もない、そう言っていた。
(お爺様が咎なきものを殺めるため、佐助に根も葉もない濡れ衣を着せて…)
これまで抑え続けていた、いいようもない怒りと悲しみが沸き上がる。
「何の根拠があってそのようなことを申すか」
溜まりかねて、つい、そう言ってしまった。
「大殿や殿の近辺を探るかのような怪しげな姿を見た者が幾人もおりまする。それだけではありませぬ。何を探っていたのか、鎌掛城や音羽城辺りをうろついていたとの話も」
「鎌掛城や音羽城…」
どちらも祖父・快幹によって討たれた蒲生宗家の城だ。蒲生家十六代当主・蒲生秀紀が暗殺されたのは大永五年というから、忠三郎が生まれる三十年も前の話。今は廃城になったと聞いていたが、そんな城に今更何があるというのだろうか。
(何かがある。そして佐助はそれを見た。もしや、それゆえ討たれたのでは…)
今まで何の疑問ももたずにいた祖父の行動に疑念を抱いた瞬間だった。
「新三郎、よう分かった。されど案ずるな。おぬしの言うことは、十分、わかっておるつもりじゃ」
忠三郎が微笑んで宥めると、新三郎はまだ何か言い足りなさそうにしていた。
翌月、岐阜を立ち、故国である南近江・日野へと戻って来た。一年前の九月に日野を出てから約八か月、留守にしていたことになる。
(随分と長い間、離れていたような気がする)
そう思うのは、この短い間に目まぐるしく、いろいろなことがあったからだ。
綿向山が少しずつ近づいてくると、裾野に広がる日野の町が見え始める。幼いころから悲しみも喜びも包み込んでくれていた懐かしい山。故国の山河は変わらず、美しかった。
忠三郎は町野新三郎を先に城へ帰すと、一人、信楽院に向かった。
毎年、秋には欠かさずきていたのに、昨年の秋は岐阜にいて、来ることができなかった。
「これはこれは、鶴千代様。お戻りとは」
忠三郎の姿を見た住職が、中から出てきた。
「今、戻ったばかり…。例のお方は来ていたか?」
気になっていたことを聞くと、
「お見えになりました」
やはり来ていた。また行き違いになってしまったのかと落胆する。
「名は…名乗られたか?」
「いえ。何も」
今回も名乗らなかったようだ。
(名乗れぬ訳は…何であろうか…)
何度も考えたが、未だもって分からない。
「佐助は来てはおらぬか」
住職はちらりと忠三郎を見たが、申し訳なさそうに首を横に振ると、何かを思い出したように奥へと入っていった。
忠三郎は一人、兄の墓という五輪塔の前に立ち、頭上に広がる空を見上げる。
(佐助。わしは帰って来た。おぬしはどこにおる)
忠三郎から三雲佐助の話を聞いた義太夫は、
『行方知れずか。ではわしが探してやろうか?』
と言ってくれた。しかし忠三郎はそれを断った。探すまでもない。何故か、ここに来れば会えるような気がしていた。
(いや…そうではない)
もうどこにもいないのだと、はっきりと知ることが怖かったのかもしれない。今もどこかで生きていると、待っていればいつかは再会することができると、わずかでも、そう思っていたかっただけかもしれない。
(されど佐助、おぬしはやはりもう…)
と思ったとき、
「鶴様」
背後から声がして、振り返ると住職が立っていた。
「これを…」
と渡してきたのは油紙に包んだもの。開いて見ると、折りたたまれた手紙だった。
「これはもしや…」
「はい。三雲殿から預かっておりました。鶴様が元服されたのちに渡してほしいと」
「佐助が」
佐助と別れたあの日のことを思い起こしてみる。佐助は、追手が向かってきているのを見て、自分を捕えにきたのだと、そう言った。
(お爺様に捕らえられることを事前に知っていた)
もっと前から覚悟を決めていた。だから驚くこともなく、大人しく捕らわれた。そして、
(わしに、何かを伝えようとして)
手紙を残した。
忠三郎は逸る心を抑え、住職に礼を言うと、佐助の手紙を胸にしまって若松の森へと向かった。
松風かけ抜ける初夏の若松の森。よく見ると無数の松の間には、所々にひっそりと白いツツジの花が点在している。初夏にふさわしい花の色で古くは多くの万葉歌人に詠われ、南北朝時代には新田義貞がその妻のために植えたという話が伝わる。
忠三郎はその中に隠れるように腰を下ろし、胸元から油紙に包まれた佐助の手紙を取り出す。
開いて見ると、懐かしい佐助の文字が目に入る。
この手紙を読んでいるということは、無事、信長の元から戻り、元服を迎えたということ。まことに祝着至極。しかし自分が傍にいないのが残念だと綴る。
(わしが人質となることが、分かっていたのか)
何故なのか。驚きつつ、読み進める。
佐助が言おうとして、なかなか言えなかったこと。それは、祖父・快幹のことだった。
父・賢秀と祖父・快幹は昔から仲が悪く、快幹は忠三郎の兄を、そして賢秀は忠三郎に家督を譲ろうと互いに切磋琢磨していた。そんな中で、六角家のお家騒動が起こった。それを契機に蒲生家はさらに力をつけ、祖父と父の争いも表面化しそうなところまできていた。
そこへ信長が現れた。
快幹は最初から信長に従う気はなく、降伏は迫りくる七万の織田軍との戦闘を回避するため、更には忠三郎を人質とすることで日野から離し、その間に兄に家督を継がせるためだ。
なぜなら、墓に埋葬されたのは別人。死んだ筈の兄・重丸は生きている。
「兄上が…生きている」
考えたこともなかった。では母・お桐が毎年、寺に行き、弔っていたのは皆を欺くためだったのか。
(何故、そんなことを…)
その謎は佐助がすでに解明していた。
兄は賢秀の子ではない。快幹とお桐の間に生まれた子であり、それを知った賢秀が兄を闇から闇に葬ろうとした。しかしお桐が命がけで守ろうとしたために暗殺は失敗。賢秀から兄を守るため、死んだことにして密かに快幹が匿っている。
(お爺様が…兄上に家督を継がせようと)
快幹は岐阜に送った孫は信長に討たれると、そう思っていたようだ。しかし、佐助はそうはならないと思っていた。なぜなら、
『君こそ大將の器也』
忠三郎ならばきっと、信長に認められ、日野に戻ってくると信じていた。こうして手紙を読んでいるのであれば、自分の見立てに間違えはなかったのだ、とある。
「佐助…おぬしの思うていた通りになった」
いかに老獪な快幹でも、忠三郎が生きていることはまだしも、信長の娘を娶るとまでは思っていなかったろう。
しかし安心してはいけない。これまで幾人も毒味していた膳奉行が死んでいる。不安があれば、池の鯉に毒味をさせるように。快幹に隙を見せてはいけない。折を見て甲賀にいる六角義治と佐助の家の本家筋にあたる三雲家と共に兵を挙げようとしている。鎌掛城と音羽城は大変危険である。決して近寄ってはいけない。等々、佐助は忠三郎にとって脅威となる事柄について、詳細に調べ、記載している。ここまで調べあげるために、相当な時間と労力を要したことは容易に想像ができる。
「こんなにも、わしのために…」
ここまで読み、繊細な忠三郎は深く傷つき、悲しみ、嘆いているだろう。それが分かっていたから、これまで伝えることができなかった。けれども元服し、大人になって戻って来た今であれば、すべてを受け止め、日野谷に住む多くの民を戦乱から守ることができる筈、と期待を込めてそう綴る。
もう一つ。秋の日に信楽院に現れる人物について。それが佐助が思っている人物であれば、きっともうすぐ会える。いや、もしかしたらもう会っているかもしれない。佐助の考えの通りであれば、その人物が佐助に代わり、忠三郎の力となってくれるだろう、と書かれている。
「そんな…そんなことは望んではおらぬ。佐助。おぬしではなかったのか。わしと供におるのは。分かり合える者とは。それなのに何故…」
文字が滲んで読めなくなる。忠三郎は何度も涙を拭って続きを読む。
最後に、甲賀の山中で肩身狭く育った自分には、忠三郎と過ごした一年半がこの世に生を受けて最も楽しい時間だった。鳳雛から鳳凰となり、空高く飛び立ち、無骨な武士には作ることのできない泰平の世を築くものとなることを願う、と締め括られていた。
「佐助…もう、待っていても、戻ってきてはくれぬのか」
松の木陰に身を隠したまま、肩を震わせ俯いた。
どれほどの時、そうしていたのか。山から吹き下ろす風が少し冷たい。
顔を上げると、ツツジの白さに目が留まり、気づいた。母を失ってからの墨染めの日々。すべてがくすんで見えたあの頃、佐助は現れ、あの時から世界は一変した。傷ついた心を包み込むような春の淡くも温かい空気、地を潤す恵みの雨、澄み切った空に輝き命を育てる夏の陽光、誰もが心躍らす一面に広がる黄金色の稲穂、静かに降り積もり、新しい年の豊作を予兆させる冬の沫雪、そしていつの時も温かく日野谷を抱く綿向山。
佐助は巡る季節を共に過ごし、忠三郎の周りがこんなにも美しく彩られているのだと気づかせてくれた。あの日々があるから、幼い頃と今とでは、目に映るものが大きく異なって見える。佐助が傍にいなくても、岐阜から戻ったとき、故国の山河が美しいと、そう思った。
どれほど悲しみに打ちひしがれても、それでもこの世の美しさが変わらないのであれば、佐助と共に過ごした宝玉のような日々も、色褪せることなく残り続けるのではないだろうか。
風速(かざはや)の、美穂の浦みの、白つつじ
見れども寂し、亡き人思へば
万葉集 巻三(四三四)
「いたたた…」
目を開けると見知らぬ男が立っており、どうやら蹴られたらしい。鶴千代の横では同じく蹴られたらしく、義太夫が腹を抑えている。
(なんと乱暴な…)
こんな狼藉を受けたことがない。
「もう少し違う起こし方があるじゃろ」
義太夫が怒って起き上がると、仁王立ちになって見下ろしていた男が笑う。
「いつまで寝ておるのじゃ」
「わしは兎も角、客人を蹴るな」
起き上がると頭が痛い。これは飲みすぎたようだ。騒がしい二人の声が頭に響く。
「何、客人?甲賀辺りから来たおぬしの連れではないのか」
この狼藉者は甲賀の者ではないらしい。
「戯けたことを申すな。甲賀の者が絹など着るか。彦八、そのお方は上様の娘婿の蒲生鶴千代様じゃ」
彦八と呼ばれた男はそれを聞き、腰も抜かさんばかりに驚いた。
「な、なに!蒲生鶴千代?!…?まことか、それは。殿は何も仰せではなかったが…」
鶴千代は、あれ、と首を傾げ、
「上様の娘婿?わしが?」
「おや、違うたかのう。わしはそう聞いたが…」
確かに、以前、信長から娘をやる、と言われたことがある。そのとき限りの話で、戯れと思っていたのだが。
「まぁ、どちらでもよい。飯を食って早速稽古としよう」
「稽古とは?」
「殿から、ここで武芸の稽古をせいと言われたであろう?」
「何故、それを…」
一益にそう言われたのは部屋から少し離れた庭先だった。しかもそのとき、義太夫は完全に酔いつぶれて寝入っていた。
(そういえば、昨夜は…)
すっかり調子に乗り、一益に兄弟固めの盃をとねだったことを思い出した。そのあと更に勢いがつき、一益の前で気分よく三国志演武の一節を吟じ、そしてその後が思い出せない。
義太夫に連れられて行った部屋で、家人たちに交じって朝餉を取る。
(これは一体…)
椀に盛られたものを見て、箸が止まる。鶴千代が普段食べていたのは白米。岐阜にきてから織田家で出されたものは玄米。しかし今、目の前にあるのは白米でもなければ、玄米でもない。
(米ではない)
奇妙な色をしている。一体、なんだろうか。その横には辺りに生えていそうな野草が申し訳程度に副菜として添えられ、味噌汁にも見覚えのないものが浮かんでいる。
「如何した、鶴殿。しっかり飯を食わんか。殿は、一日五合食えと、そう仰せじゃ」
「一日五合?」
椀に山と盛られているのはそのせいらしい。副菜はあってなきかのような量だ。五合と言っているのは副菜の貧しさを補うためと思われたが、それにしても大変な量で、普段から食の細い鶴千代には至難の業だ。
「あの…これは…」
味噌汁を持って尋ねてみると、
「味噌汁じゃ。日野には味噌がないか?」
「いや…味噌汁の中に…」
「お?芋がらの茎ではないか。妙なことばかり申すのう」
義太夫は平然と平らげていく。
(芋がらの茎?)
説明を聞いてもよくわからなかった。
その上、館と馬屋が近すぎる。馬屋から漂う匂いが強く、どうにも飯が喉を通りにくい。鶴千代は義太夫に倣い、味噌汁を飯にかけて、口に流し込んだ。
「おぉ!見事な食いっぷりじゃ。まだまだ飯は仰山ある。遠慮のう食え」
「い、いや!それには及ばず」
慌てて義太夫を押しとどめる。
「それよりも、昨夜は、ちと酔いすぎて左近殿に無礼なことを言うたのではないかと案じられ…」
(挙句の果てに、こんなところで当たり前のように飯を食っていていいのか…)
心配していたことを告げると、義太夫が明るく笑う。
「男のくせに、つまらぬことをくよくよ考えるな」
「つまらぬこと?」
「然様。殿はそのような小さき器ではない。案ずるな、案ずるな」
力いっぱい背中を叩かれた。本当に大丈夫だろうか。この義太夫という真面目さの欠片もない瓢げた男といると、だんだん可笑しな色に染められていく気がした。
滝川家に通い、武芸に励むようになってから三か月。鶴千代は一益に呼ばれた。
「そなたの元服の日取りが決まった」
「元服」
「上様が直々に烏帽子親を務める。明後日、岐阜城へ登城いたせ」
「はい」
鶴千代は頷き、詰所に戻る。
(佐助、わしは元服する。このわしの晴れの日に、おぬしは顔を見せてくれぬのか)
一番喜んでくれる筈の佐助が共にいない。
(もう、誰の手を借りることもなく、一人で馬に乗れるようになった。元服すれば初陣の日も近い。その時までに戻って参れ)
岐阜に来てからも、佐助がひょっこりと顔を出すのを待っていた。あれ以来、一度も姿を見ないが生きていれば必ず、元服には、いや元服に間に合わなくても初陣にはきっと姿を見せてくれる。
(されどもし、現れなかったら…)
考えたくもないことが頭をよぎり、ふいに不安に襲われる。
そこへ、義太夫がひょいとやってきた。
「如何した。元服であろう?烏帽子親は上様というではないか。嬉しゅうないのか」
嬉しそうにしているつもりだが、義太夫が肘で小突いてくる。
「無論、喜んでおる」
「下手な嘘をつくな。何を気にしておる。白状せい」
何故わかるのか。義太夫はやけにしつこい。
「よいか。素破の目を欺こうなど、百年早いわい」
そうだった。義太夫ばかりではない。新介も、助太郎も、助九郎も、そして一益自身もただの武士ではない。この家の者の大半が素破だ。
(もしや…)
同じ甲賀の出であれば、佐助のことを知っているのではないだろうか。
「義太夫。三雲…という名を存じておるか」
「おぉ。知らぬはずもなし。甲賀五十三家の中でも大身じゃ。三雲の本家は未だ六角親子を匿い、甲賀の三雲城に籠っておるではないか。あの家の三郎左衛門は気位の高い頑固親父。甲賀衆の中では三雲家は格上じゃなどと抜かしおる。まぁ、まず織田に降ることはあるまいて」
随分詳しい。甲賀は思っていた以上に狭い世界らしい。
「六角のお館様は未だ近江を取り戻そうとされておるのか」
「あの地を四百年も治めていたのじゃ。そう簡単に諦めるとも思えぬが…。で、三雲が如何した?知り合いがおるか?惚れた女子か?」
「女子ではないが…」
「では男か。蒲生家の家人か?後藤家の者か?」
鶴千代は驚いて義太夫を見る。母・お桐が後藤の家の出であることも、後藤の叔父が謀反の嫌疑で討ち取られたことも知っているようだ。
「後藤…なぜ、それを…」
「六角のお家騒動を知らぬ者はおらぬ。おぬしの祖父・快幹によって後藤の跡継ぎにされた後藤喜三郎は、我らが近江に攻め入った折、いの一番に織田家に臣従しておる」
「喜三郎が…」
理不尽に親を殺された従兄弟の後藤喜三郎は、真っ先に調略の対象になっていた。喜三郎は、信長の招きに応じ、蒲生家が織田に降伏すると決める前から、いち早く信長に従っていたようだ。
(何も知らなかった)
あの頃の鶴千代は佐助から得た情報しか知りようがなかった。
(そうか。佐助、おぬしは…)
佐助の口から後藤の家の話がでたことは一度もない。鶴千代がお桐の事で心を痛めていることをよく知っていたので、あえて口にしなかったのだろう。
「勿体つけるな。三雲家にいるのは誰じゃ?」
義太夫がじれて急かせてくる。
「佐助…三雲佐助…」
とても久しぶりにその名を口にし、ふいに涙が溢れた。義太夫はなにごとが起きたかと驚き、
「それはおぬしの?」
「誰よりも大切な…友」
鶴千代の目からポロリと涙がこぼれた。
四月になり、一益をはじめとした滝川家の面々が伊勢へ戻っていった。岐阜で元服した鶴千代は忠三郎と名を改め、日野へ戻る旅支度をはじめる。
「昨年九月から八か月。あっという間でござりました」
部屋の掃除をすませた町野新三郎も、無事に役目を果たして安堵しているようだ。
「新三郎、大儀であった。されど日野へ戻れば、もう大事ない。わしにかまけておらず、おぬしは家へ帰れ」
故国を離れ、八か月もの間、帰してやることができなかったことへの詫びのつもりだった。しかし町野新三郎は急に真顔になる。
「若。これはそれがしの身の不徳ゆえと思うておりますが、若は未だ、三雲佐助の帰りをお待ちなのでは?」
心の内を言い当てられてドキリとしたが、次の瞬間、軽く笑った。
「如何した。突然、そのような…」
「三雲佐助は六角家の命により我が家や若の近辺を探っていた間者ではありませぬか」
忠三郎の心が大きく揺り動かされる。笑みを湛えたまま平静を保つのに必死だ。
「そのことはよく…」
「幼い若を欺き、敵に通じていた不届き者ゆえ大殿に成敗されたと聞き及んでおりまする」
佐助は最後、何と言っていたか。自分には何の咎もない、そう言っていた。
(お爺様が咎なきものを殺めるため、佐助に根も葉もない濡れ衣を着せて…)
これまで抑え続けていた、いいようもない怒りと悲しみが沸き上がる。
「何の根拠があってそのようなことを申すか」
溜まりかねて、つい、そう言ってしまった。
「大殿や殿の近辺を探るかのような怪しげな姿を見た者が幾人もおりまする。それだけではありませぬ。何を探っていたのか、鎌掛城や音羽城辺りをうろついていたとの話も」
「鎌掛城や音羽城…」
どちらも祖父・快幹によって討たれた蒲生宗家の城だ。蒲生家十六代当主・蒲生秀紀が暗殺されたのは大永五年というから、忠三郎が生まれる三十年も前の話。今は廃城になったと聞いていたが、そんな城に今更何があるというのだろうか。
(何かがある。そして佐助はそれを見た。もしや、それゆえ討たれたのでは…)
今まで何の疑問ももたずにいた祖父の行動に疑念を抱いた瞬間だった。
「新三郎、よう分かった。されど案ずるな。おぬしの言うことは、十分、わかっておるつもりじゃ」
忠三郎が微笑んで宥めると、新三郎はまだ何か言い足りなさそうにしていた。
翌月、岐阜を立ち、故国である南近江・日野へと戻って来た。一年前の九月に日野を出てから約八か月、留守にしていたことになる。
(随分と長い間、離れていたような気がする)
そう思うのは、この短い間に目まぐるしく、いろいろなことがあったからだ。
綿向山が少しずつ近づいてくると、裾野に広がる日野の町が見え始める。幼いころから悲しみも喜びも包み込んでくれていた懐かしい山。故国の山河は変わらず、美しかった。
忠三郎は町野新三郎を先に城へ帰すと、一人、信楽院に向かった。
毎年、秋には欠かさずきていたのに、昨年の秋は岐阜にいて、来ることができなかった。
「これはこれは、鶴千代様。お戻りとは」
忠三郎の姿を見た住職が、中から出てきた。
「今、戻ったばかり…。例のお方は来ていたか?」
気になっていたことを聞くと、
「お見えになりました」
やはり来ていた。また行き違いになってしまったのかと落胆する。
「名は…名乗られたか?」
「いえ。何も」
今回も名乗らなかったようだ。
(名乗れぬ訳は…何であろうか…)
何度も考えたが、未だもって分からない。
「佐助は来てはおらぬか」
住職はちらりと忠三郎を見たが、申し訳なさそうに首を横に振ると、何かを思い出したように奥へと入っていった。
忠三郎は一人、兄の墓という五輪塔の前に立ち、頭上に広がる空を見上げる。
(佐助。わしは帰って来た。おぬしはどこにおる)
忠三郎から三雲佐助の話を聞いた義太夫は、
『行方知れずか。ではわしが探してやろうか?』
と言ってくれた。しかし忠三郎はそれを断った。探すまでもない。何故か、ここに来れば会えるような気がしていた。
(いや…そうではない)
もうどこにもいないのだと、はっきりと知ることが怖かったのかもしれない。今もどこかで生きていると、待っていればいつかは再会することができると、わずかでも、そう思っていたかっただけかもしれない。
(されど佐助、おぬしはやはりもう…)
と思ったとき、
「鶴様」
背後から声がして、振り返ると住職が立っていた。
「これを…」
と渡してきたのは油紙に包んだもの。開いて見ると、折りたたまれた手紙だった。
「これはもしや…」
「はい。三雲殿から預かっておりました。鶴様が元服されたのちに渡してほしいと」
「佐助が」
佐助と別れたあの日のことを思い起こしてみる。佐助は、追手が向かってきているのを見て、自分を捕えにきたのだと、そう言った。
(お爺様に捕らえられることを事前に知っていた)
もっと前から覚悟を決めていた。だから驚くこともなく、大人しく捕らわれた。そして、
(わしに、何かを伝えようとして)
手紙を残した。
忠三郎は逸る心を抑え、住職に礼を言うと、佐助の手紙を胸にしまって若松の森へと向かった。
松風かけ抜ける初夏の若松の森。よく見ると無数の松の間には、所々にひっそりと白いツツジの花が点在している。初夏にふさわしい花の色で古くは多くの万葉歌人に詠われ、南北朝時代には新田義貞がその妻のために植えたという話が伝わる。
忠三郎はその中に隠れるように腰を下ろし、胸元から油紙に包まれた佐助の手紙を取り出す。
開いて見ると、懐かしい佐助の文字が目に入る。
この手紙を読んでいるということは、無事、信長の元から戻り、元服を迎えたということ。まことに祝着至極。しかし自分が傍にいないのが残念だと綴る。
(わしが人質となることが、分かっていたのか)
何故なのか。驚きつつ、読み進める。
佐助が言おうとして、なかなか言えなかったこと。それは、祖父・快幹のことだった。
父・賢秀と祖父・快幹は昔から仲が悪く、快幹は忠三郎の兄を、そして賢秀は忠三郎に家督を譲ろうと互いに切磋琢磨していた。そんな中で、六角家のお家騒動が起こった。それを契機に蒲生家はさらに力をつけ、祖父と父の争いも表面化しそうなところまできていた。
そこへ信長が現れた。
快幹は最初から信長に従う気はなく、降伏は迫りくる七万の織田軍との戦闘を回避するため、更には忠三郎を人質とすることで日野から離し、その間に兄に家督を継がせるためだ。
なぜなら、墓に埋葬されたのは別人。死んだ筈の兄・重丸は生きている。
「兄上が…生きている」
考えたこともなかった。では母・お桐が毎年、寺に行き、弔っていたのは皆を欺くためだったのか。
(何故、そんなことを…)
その謎は佐助がすでに解明していた。
兄は賢秀の子ではない。快幹とお桐の間に生まれた子であり、それを知った賢秀が兄を闇から闇に葬ろうとした。しかしお桐が命がけで守ろうとしたために暗殺は失敗。賢秀から兄を守るため、死んだことにして密かに快幹が匿っている。
(お爺様が…兄上に家督を継がせようと)
快幹は岐阜に送った孫は信長に討たれると、そう思っていたようだ。しかし、佐助はそうはならないと思っていた。なぜなら、
『君こそ大將の器也』
忠三郎ならばきっと、信長に認められ、日野に戻ってくると信じていた。こうして手紙を読んでいるのであれば、自分の見立てに間違えはなかったのだ、とある。
「佐助…おぬしの思うていた通りになった」
いかに老獪な快幹でも、忠三郎が生きていることはまだしも、信長の娘を娶るとまでは思っていなかったろう。
しかし安心してはいけない。これまで幾人も毒味していた膳奉行が死んでいる。不安があれば、池の鯉に毒味をさせるように。快幹に隙を見せてはいけない。折を見て甲賀にいる六角義治と佐助の家の本家筋にあたる三雲家と共に兵を挙げようとしている。鎌掛城と音羽城は大変危険である。決して近寄ってはいけない。等々、佐助は忠三郎にとって脅威となる事柄について、詳細に調べ、記載している。ここまで調べあげるために、相当な時間と労力を要したことは容易に想像ができる。
「こんなにも、わしのために…」
ここまで読み、繊細な忠三郎は深く傷つき、悲しみ、嘆いているだろう。それが分かっていたから、これまで伝えることができなかった。けれども元服し、大人になって戻って来た今であれば、すべてを受け止め、日野谷に住む多くの民を戦乱から守ることができる筈、と期待を込めてそう綴る。
もう一つ。秋の日に信楽院に現れる人物について。それが佐助が思っている人物であれば、きっともうすぐ会える。いや、もしかしたらもう会っているかもしれない。佐助の考えの通りであれば、その人物が佐助に代わり、忠三郎の力となってくれるだろう、と書かれている。
「そんな…そんなことは望んではおらぬ。佐助。おぬしではなかったのか。わしと供におるのは。分かり合える者とは。それなのに何故…」
文字が滲んで読めなくなる。忠三郎は何度も涙を拭って続きを読む。
最後に、甲賀の山中で肩身狭く育った自分には、忠三郎と過ごした一年半がこの世に生を受けて最も楽しい時間だった。鳳雛から鳳凰となり、空高く飛び立ち、無骨な武士には作ることのできない泰平の世を築くものとなることを願う、と締め括られていた。
「佐助…もう、待っていても、戻ってきてはくれぬのか」
松の木陰に身を隠したまま、肩を震わせ俯いた。
どれほどの時、そうしていたのか。山から吹き下ろす風が少し冷たい。
顔を上げると、ツツジの白さに目が留まり、気づいた。母を失ってからの墨染めの日々。すべてがくすんで見えたあの頃、佐助は現れ、あの時から世界は一変した。傷ついた心を包み込むような春の淡くも温かい空気、地を潤す恵みの雨、澄み切った空に輝き命を育てる夏の陽光、誰もが心躍らす一面に広がる黄金色の稲穂、静かに降り積もり、新しい年の豊作を予兆させる冬の沫雪、そしていつの時も温かく日野谷を抱く綿向山。
佐助は巡る季節を共に過ごし、忠三郎の周りがこんなにも美しく彩られているのだと気づかせてくれた。あの日々があるから、幼い頃と今とでは、目に映るものが大きく異なって見える。佐助が傍にいなくても、岐阜から戻ったとき、故国の山河が美しいと、そう思った。
どれほど悲しみに打ちひしがれても、それでもこの世の美しさが変わらないのであれば、佐助と共に過ごした宝玉のような日々も、色褪せることなく残り続けるのではないだろうか。
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万葉集 巻三(四三四)
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