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18.月満つれば則ち欠く
18-2. 富士なる山
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滝川勢が伊勢を出て、信濃へ向けて兵を進めたのは二月。信忠とともに快進撃を続ける中、三月になり、忠三郎も信長に従って岐阜から木曽へと抜け、木曽から信濃、信濃から甲斐へと向かうことになった。
今は信忠の居城となった岐阜城。山の麓に広がる城下を遠目に眺めると、胸の奥底に微かな郷愁の念が沸き上がる。かつて人質としてこの城に送り込まれた日々の面影が、今も霞の中にありありと浮かび、心の裡に懐かしさに似たものが騒ぎ立つ。
滝川家の人々と過ごしたあの頃。粗野にして直情なる彼らが、未だ幼き忠三郎に温かい手を差し伸べてくれたことが、芋がら汁のほのかなる香りとともに思い出された。荒波の如き戦乱の世に、彼らの真心が忠三郎の孤独をいかばかり救ってくれたかと思い起こすたび、今この岐阜の地を踏む己が存在すら、彼らの情けにて育まれたものと痛感する。
そして三月十一日、一行は信忠の臣・森長可の居城である金山城に到達した。そこへ、武田が滅びたと言う一方が届いた。何百年もの間、甲斐を治め、山岳に強き武田がここまで早く討たれようとは、信忠の武勇あってのことと、皆が口々に賞賛の声を上げた。
「さすがは城介様。比類なきご武勇にて、あの武田をかくも早く打ち倒されるとは」
皆が感嘆の意を示す中、忠三郎の心には、異なる思いが密かに渦巻いていた。
(これこそ義兄上・滝川左近の謀略の賜物――)
武田家がかくも容易に崩れ去ったのは、表向きには信忠の武勇によるものとされているが、見えないところで動いていたのは一益だ。一益が幾年にもわたり、武田家の中枢にまで調略の手を伸ばしていたと、僅かに耳にしたことがある。誰も詳らかには語らないが、今となっては、次々に寝返った家臣たちの姿こそが、それを証明していると言える。
一益は表に立つことをせず、影に潜みながら、綿密に計り事を進める才を持ち、忠三郎もまた、その冷静沈着な策士ぶりを頼もしく思うと同時に、一種の畏れを抱いている。一益が描き出したその見えない絵図の中で、自らもまた駒として動かされているのではないか――その思いが、忠三郎の心の片隅に密かに灯っていた。
信長はすべてを把握している筈だが、微かに頷き、
「我らが来るまでもなかったようじゃ」
穏やかに言葉を漏らした。信長本隊の力を借りずとも勝ちを得たことに満足しているようだ。
「されど、ここまで来たのじゃ。予は富士なる山を見てから帰ろうと思うておる」
その言葉には、戦さで勝利を収めるのみならず、この世の美景をも見据えんとする余裕が見て取れ、周囲の者たちも思わず顔を見合わせ、声なき賛意を交わした。
(富士なる山)
忠三郎の胸の内にも興味が深く沸き上がる。
「遥か昔より多くの歌に詠まれ、貴き姿を仰ぎ見られしその名山。幾重の季節を経て、数多の歌人が富士を讃えしその心を、今、己が眼にて確かめることとしよう」
近臣たちは皆、武田の滅亡を喜び、晴れやかに笑みを交わしながら、法華寺へと向け馬を進めた。一益が御座所として選び設えた上諏訪の法華寺では、ここに集う者たちの功が称えられるにふさわしく、万事が整えられ、堂内には香の薫りが漂っていた。
遠路、諏訪まで長旅を続けてきた一行は、喜び、その日は到着早々、戦勝祝いの宴が催された。
近臣たちは、一益が細やかに目を配り、この場を用意したことに感服し、各々が勝利を祝い、満足げな面持ちであったが、忠三郎はなお一人、無言でその様子を見守っていた。
「此度は滝川殿の手腕が遺憾なく発揮されたのであろう」
諏訪まで共に付き従ってきた明智光秀が、はばかるように、静かにそう言った。忠三郎の思索を見透かすかのように、淡々とした声が耳に響く。
光秀もまた、一益がこの戦の影で幾多の手を打っていたことを悟っているのか、抑えた語調ながらも、その目は深く遠くを見据えている様子だった。
「仰せの通りかと」
と忠三郎も応じたが、内心には言葉にせぬ思いが潜んでいた。この戦で滝川家が得た功名もまた、ただ表に見えるものばかりではなく、その陰に一益の狡猾なる計が幾重にも重なっていたことを、光秀は既に見抜いているのかもしれない。
「左近殿は、敵には回したくないものじゃ」
光秀が、静かにそう呟いた。
「さようにございます」
忠三郎も頷き返しながら
(敵に回すとは…そのようなことがあるとも思えぬが…)
光秀の言葉に微かな違和感を感じつつ、その真意を測りかねる。一益が敵対する場面など、忠三郎の頭には到底思い描けない。あの義兄が、あらゆる謀を用いて織田家に尽くしてきた姿を見てきた身には、なおさら想像する余地すらないことだ。
「ゆえに遠国に遠ざけられるのであろう」
光秀の言葉に、忠三郎は盃を口に運ぶ手をそっと止めた。その言葉には、なにか深い意図が含まれているように聞こえる。
「それは…」
遠国とは、関東支配のことだろう。一益の名がその候補として挙がっていると聞いてはいたが、それが信長の「お疑い」によるものだというのか?
ほんの戯れ言のように聞き流せる話ではない。
(あの義兄上が、上様の嫌疑を受けるなど…)
忠三郎は光秀の言葉を静かに聞いていた。一益が成したことの数々を称える光秀の皮肉な笑みに、妙な含みを感じる。
「武田滅亡の影に滝川左近殿の策謀あり。武田を打倒するための遠き道のりを、誰よりも冷静に、忍耐強く、陰ながら支え続けたのは他ならぬ左近殿であり、この場に立つこともまた、すべてはその計り知れぬ謀略の賜物」
忠三郎は黙して光秀の言葉を飲み込む。光秀が一益をここまで評価していることに少なからず驚きつつも、心中ではうなずかざるを得ない。確かに、武田を打ち倒すため、一益がどれほど緻密に策を練り、冷徹に手を打ってきたか――あの冷徹な顔の裏に潜む計略を知っているのは、滝川家の面々を近くで見守ってきた忠三郎ならではと思っていたが。
(明智殿は随分と義兄上を評価されておる)
一益がその手腕で道を切り開く姿を、心の内では畏れ慕う者も少なくないのだろう。しかしその強さ故に、一益の手が遠国へと伸びてしまうことに安堵する者もいるのかもしれない。まさに今、目の前にいる光秀のように。
「されど…」
光秀がふと、少し低く抑えた声で続ける。
「その左近殿も遠国におるとあらば、恐るるには足らぬ」
光秀の言葉に、釈然としない思いを抱いた。一益が遠国にいれば脅威にはならない――その言い方には、どこか引っかかるものがある。
(義兄上は伊勢にいては恐ろしい存在、されど、遠国であれば脅威とはならぬと、そう仰せなのであろうが…)
光秀がなぜこれほど一益を畏れるのか。一益が荒木村重や松永久秀のように、織田家に反旗を翻すと疑っているのかもしれない。だが、忠三郎の知る一益は、常に織田家を支え、謀略を尽くしてきた。それが裏切りに転じるなど、思いもよらぬことである。
(それとも…いや、どうもそうした疑いとは違うておるような…)
では何だろう。
江南の国衆の多くは、かつては佐久間信盛の与力であったが、信盛が追放されてからは光秀の与力になった。忠三郎の縁戚である後藤喜三郎、青地四郎左も、かつて佐久間信盛のもとにあったが、今は光秀の与力だ。二人は面倒見のいい光秀を慕い、その結びつきは親子の情に似て深いものであるらしい。
二人の話を聞いていて、歳の離れた光秀に対し、彼らがいかに信頼を寄せているかが、よく伝わってきた。
(明智殿の忠義心は確かなものと、かねがね耳にしておるが…)
その忠義の厚さ、与力や家臣への細やかな配慮――二人の言葉には少しの疑いもない。忠三郎はそれを微笑んで聞いていたが、今、こうして思い返してみると、胸の奥で釈然としない気持ちが湧き上がってくるのを抑えられない。
(此度の話は…)
忠三郎の中に、どうしても晴れぬ思いが残る。光秀が心底、信頼に足ると従弟たちが語ったことに、なぜか疑問が浮かぶのはどうしたことだろう。光秀が一益の脅威を口にしたその言葉の裏に、隠された意図があるのではないかと、どこか胸騒ぎがしてならない。
光秀の声には、ただの疑念以上の響きを感じる。忠三郎は心中で問いを繰り返しつつ、その真意を探るも答えが見つからない。何かが、その奥に隠されているように思えたが、それが何であるか、思い至らぬまま、胸の中で深い霧がかかっていくようだった。
甲州道、大ヶ原宿。
滝川家の面々が既に先行して、信長のために御座所の準備をしているとの話を聞き、忠三郎はひと足早く大ヶ原宿へと向かっていた。
すると、宿場町の喧騒の中に、何やら聞き覚えのある大きなぼやき声が響く。
「やれやれ、戦さの次は大工仕事か。腕が足りぬのぅ…腰が痛いわい!」
声の主はやはり義太夫であるらしい。忠三郎は思わず噴き出しながら、声のする方へと足を向けた。
「義太夫、これはまた愉快な作業に励んでおるな!」
義太夫は振り返り、愚痴をこぼしたばかりだというのに、顔をぱっと輝かせる。
「おお、鶴!いやいや、わしのことなど構わんでくれ。上様の御為とあらば、この身が砕けようと…って、ほんに腰が痛いんじゃ!」
忠三郎は苦笑しながら、軽口で応じた。
「まことにご苦労なことじゃ。されど、滝川勢の大工仕事を目の当たりにして、上様が御座所に驚かれるやもしれぬぞ!」
義太夫がふっとため息を漏らしながら、ぶつぶつと愚痴をこぼし始める。
「心にもないことを申すでない。どうせおぬしら腰巾着どもは、上様同様、物見遊山の富士見物に興じるだけであろう」
随分とご機嫌斜めな義太夫に、忠三郎は苦笑いを浮かべる。どうやら疲れ果てているらしい。
「いやいや、義太夫、この御座所の設えが終われば、皆、心置きなく富士の景色を楽しめるであろう?」
「戯けたことを申すではないか。ここが終われば上野《こうづけ》じゃ。我らは本国から遠く遠く離れた上野に行かねばならんのじゃ」
愚痴の原因は、武田攻めが終わってからも伊勢に帰れないことのようだ。
「義太夫。分かっておらぬな。義兄上は此度、上野一国と信濃二群を手に入れた。それが如何なることか」
「如何なることと申すのじゃ」
義太夫は、どうせつまらぬことであろう…と言いたげに忠三郎を斜めに見る。
「おぬしらも城を与えられ、大身となるということではないか」
『大身』と『城』という言葉を耳にした途端、義太夫はぐっと身を乗り出してきた。
「お?大身?城、とな?」
先ほどまでの疲れた顔が、いつの間にか興奮に輝いている。忠三郎はその変わりように、思わず微笑を抑えきれない。
「いかにも。義兄上は織田家では柴田殿に次ぐ広大な領地を手にされたのじゃ。おぬしら重臣たちもそれぞれ城を持ち、大身として名を馳せることになるやもしれぬぞ」
義太夫は急に胸を張り、あたかも一国一城の主になったかのごとく、威厳たっぷりの様子であたりを見回す。そしてひとしきり満足げにうなずくと、ぽつりと一言。
「…それはそれで、なかなか悪くない話じゃ」
あまりの変わりように、忠三郎は、思わず笑いを噛み殺す。
しかし、義太夫がふと遠くを見つめるような顔で、
「しばらくは帰れぬであろう」
と呟いた瞬間、その表情があまりに真剣で、忠三郎も気づけば口元の笑みをきゅっと引き締めていた。
「何分にも遠く離れた上野とあらば、さもありなん」
そう返しつつ、忠三郎は口にはしなかったものの、胸の奥底に小さな棘のような不安が刺さっているのを感じた。ふとした瞬間に現れては消えぬその感覚――それは、あの堅実で冷静な一益が遠く上野へ赴き、日常からいなくなることへのものだ。
(義兄上が不在である間に、万が一、上方で何かが起こったとしたら…)
一益が上野に赴けば、あの堅実で冷静な一益とはしばし別れることになる。
冷静な一益がいる限り、どれだけ嵐が吹き荒れようと揺らがぬと思えていたものが、ひとたび距離を置かれると、急にその強固な土台が頼りなく見えた。 そんな想いを悟られまいと、忠三郎は軽く息をつき、ふとわずかに笑みを作って義太夫を見やる。
(まさか、そんな事態が起こるはずもない。織田家は安泰じゃ)
軽く首を横に振って、不安を頭から振り払おうとする。しかし、いつもならすっと消えていく気持ちが、今回は胸の奥底にしこりのように残る。
「如何した?」
義太夫が不思議そうに忠三郎の顔を覗き込む。
「いや…妙なことが頭に…。まぁ、上方のことは案ずるな。織田家の天下は盤石で、変わりようがない」
忠三郎がそう言って明るく笑うと、義太夫は、然様か、と頷き、
「されど…世は無常。この世に変わらぬものなどあるかのう…」
と妙に意味深なことを言い出した。
「何を申すか、急に」
「月満つれば則ち欠くと言うではないか。世が無常であることなど、唄本ばかり読んでおるおぬしであれば、よう存じておろう?」
義太夫が、これまた妙なことを言い始める。忠三郎は思わず苦笑した。
「月満つれば則ち欠く、か…さような無常の理は、確かに承知しておる。されど、無常の理など、余人には気付かぬほどゆるりと訪れるもの。織田家がそのようにあっけなく崩れることなど、想像もできぬ」
そう言って肩をすくめると、義太夫はひどくしみじみとした表情で遠くを見つめ、
「然様か、おぬしには、まだまだこれからも、変わらぬ月が照らしておるというわけか…」
とぽつりと呟いた。
「義太夫らしからぬことばかり申す。何か心にかかることでも?」
忠三郎が不審に思ってそう尋ねると、義太夫は苦笑し、
「心にかかることがあるのはわしではない。鶴、おぬしであろう?何かあったか?」
まるで忠三郎と明智光秀の会話が聞こえていたかのようなことを言い始めた。忠三郎はぎくりとしたが、すぐに笑顔を取り繕って返す。
「わしには心にかかることなど微塵も…」
そう言いかけた忠三郎だったが、義太夫がにやりと目を細め、じっとこちらを見つめてくる。
「ふむ、素破を侮るでないぞ。我が見透かしの目をもってすれば、隠し事など霧と消えるが如く…」
この妙に厳かな言葉に、忠三郎は面食らいつつも、
「む…痩せても枯れても素破ということか」
と皮肉交じりに返したものの、どうやら今日の義太夫は一層鋭く、何やらじりじりと胸中を見透かされるようだ。
(こやつにも素破らしき才覚があったとは…)
と、妙に感心していると、義太夫がすっと身を寄せてきた。
「ふふ、わしが見れば、おぬしの心の皺も数えられるわい。さては姫様のことであろう?殿に夜討ちをかけられ、たっぷり説教を食らったらしいではないか」
明智光秀の話題かと思いきや、意外にも章姫の件であったことに面食らった。
「良いか?我らが留守の間、姫様にいらぬことをせぬようにのう」
忠三郎は深く息をつき、やれやれと空を見上げた。どうやらあの夜の出来事は、屋敷中の者に知れ渡り、義太夫の冷やかしの話題にされているらしい。これでは「忠実なる義兄」などとは呼べぬ怪しい噂が、さらに広まるばかりではないか。
「まったく妙な噂ばかり立ておって…」
忠三郎はやれやれと息をつく。
そうぼやきながらも、頭の中では全く異なる考えを巡らせる。どうせ安土へ戻っても滝川家の屋敷はひっそりとして、少々寂しくなるのだ。ならば、やはり自分が時折顔を出して、章姫を慰めるしかないではないか、と。
(何、寂しさを紛らわすくらいであれば、義兄上も許してくれよう。そもそも章姫は我が正室の妹。訪ねて行って取沙汰されるものでもない)
忠三郎はそう勝手な理屈をつけ、心中ひとり納得した。
今は信忠の居城となった岐阜城。山の麓に広がる城下を遠目に眺めると、胸の奥底に微かな郷愁の念が沸き上がる。かつて人質としてこの城に送り込まれた日々の面影が、今も霞の中にありありと浮かび、心の裡に懐かしさに似たものが騒ぎ立つ。
滝川家の人々と過ごしたあの頃。粗野にして直情なる彼らが、未だ幼き忠三郎に温かい手を差し伸べてくれたことが、芋がら汁のほのかなる香りとともに思い出された。荒波の如き戦乱の世に、彼らの真心が忠三郎の孤独をいかばかり救ってくれたかと思い起こすたび、今この岐阜の地を踏む己が存在すら、彼らの情けにて育まれたものと痛感する。
そして三月十一日、一行は信忠の臣・森長可の居城である金山城に到達した。そこへ、武田が滅びたと言う一方が届いた。何百年もの間、甲斐を治め、山岳に強き武田がここまで早く討たれようとは、信忠の武勇あってのことと、皆が口々に賞賛の声を上げた。
「さすがは城介様。比類なきご武勇にて、あの武田をかくも早く打ち倒されるとは」
皆が感嘆の意を示す中、忠三郎の心には、異なる思いが密かに渦巻いていた。
(これこそ義兄上・滝川左近の謀略の賜物――)
武田家がかくも容易に崩れ去ったのは、表向きには信忠の武勇によるものとされているが、見えないところで動いていたのは一益だ。一益が幾年にもわたり、武田家の中枢にまで調略の手を伸ばしていたと、僅かに耳にしたことがある。誰も詳らかには語らないが、今となっては、次々に寝返った家臣たちの姿こそが、それを証明していると言える。
一益は表に立つことをせず、影に潜みながら、綿密に計り事を進める才を持ち、忠三郎もまた、その冷静沈着な策士ぶりを頼もしく思うと同時に、一種の畏れを抱いている。一益が描き出したその見えない絵図の中で、自らもまた駒として動かされているのではないか――その思いが、忠三郎の心の片隅に密かに灯っていた。
信長はすべてを把握している筈だが、微かに頷き、
「我らが来るまでもなかったようじゃ」
穏やかに言葉を漏らした。信長本隊の力を借りずとも勝ちを得たことに満足しているようだ。
「されど、ここまで来たのじゃ。予は富士なる山を見てから帰ろうと思うておる」
その言葉には、戦さで勝利を収めるのみならず、この世の美景をも見据えんとする余裕が見て取れ、周囲の者たちも思わず顔を見合わせ、声なき賛意を交わした。
(富士なる山)
忠三郎の胸の内にも興味が深く沸き上がる。
「遥か昔より多くの歌に詠まれ、貴き姿を仰ぎ見られしその名山。幾重の季節を経て、数多の歌人が富士を讃えしその心を、今、己が眼にて確かめることとしよう」
近臣たちは皆、武田の滅亡を喜び、晴れやかに笑みを交わしながら、法華寺へと向け馬を進めた。一益が御座所として選び設えた上諏訪の法華寺では、ここに集う者たちの功が称えられるにふさわしく、万事が整えられ、堂内には香の薫りが漂っていた。
遠路、諏訪まで長旅を続けてきた一行は、喜び、その日は到着早々、戦勝祝いの宴が催された。
近臣たちは、一益が細やかに目を配り、この場を用意したことに感服し、各々が勝利を祝い、満足げな面持ちであったが、忠三郎はなお一人、無言でその様子を見守っていた。
「此度は滝川殿の手腕が遺憾なく発揮されたのであろう」
諏訪まで共に付き従ってきた明智光秀が、はばかるように、静かにそう言った。忠三郎の思索を見透かすかのように、淡々とした声が耳に響く。
光秀もまた、一益がこの戦の影で幾多の手を打っていたことを悟っているのか、抑えた語調ながらも、その目は深く遠くを見据えている様子だった。
「仰せの通りかと」
と忠三郎も応じたが、内心には言葉にせぬ思いが潜んでいた。この戦で滝川家が得た功名もまた、ただ表に見えるものばかりではなく、その陰に一益の狡猾なる計が幾重にも重なっていたことを、光秀は既に見抜いているのかもしれない。
「左近殿は、敵には回したくないものじゃ」
光秀が、静かにそう呟いた。
「さようにございます」
忠三郎も頷き返しながら
(敵に回すとは…そのようなことがあるとも思えぬが…)
光秀の言葉に微かな違和感を感じつつ、その真意を測りかねる。一益が敵対する場面など、忠三郎の頭には到底思い描けない。あの義兄が、あらゆる謀を用いて織田家に尽くしてきた姿を見てきた身には、なおさら想像する余地すらないことだ。
「ゆえに遠国に遠ざけられるのであろう」
光秀の言葉に、忠三郎は盃を口に運ぶ手をそっと止めた。その言葉には、なにか深い意図が含まれているように聞こえる。
「それは…」
遠国とは、関東支配のことだろう。一益の名がその候補として挙がっていると聞いてはいたが、それが信長の「お疑い」によるものだというのか?
ほんの戯れ言のように聞き流せる話ではない。
(あの義兄上が、上様の嫌疑を受けるなど…)
忠三郎は光秀の言葉を静かに聞いていた。一益が成したことの数々を称える光秀の皮肉な笑みに、妙な含みを感じる。
「武田滅亡の影に滝川左近殿の策謀あり。武田を打倒するための遠き道のりを、誰よりも冷静に、忍耐強く、陰ながら支え続けたのは他ならぬ左近殿であり、この場に立つこともまた、すべてはその計り知れぬ謀略の賜物」
忠三郎は黙して光秀の言葉を飲み込む。光秀が一益をここまで評価していることに少なからず驚きつつも、心中ではうなずかざるを得ない。確かに、武田を打ち倒すため、一益がどれほど緻密に策を練り、冷徹に手を打ってきたか――あの冷徹な顔の裏に潜む計略を知っているのは、滝川家の面々を近くで見守ってきた忠三郎ならではと思っていたが。
(明智殿は随分と義兄上を評価されておる)
一益がその手腕で道を切り開く姿を、心の内では畏れ慕う者も少なくないのだろう。しかしその強さ故に、一益の手が遠国へと伸びてしまうことに安堵する者もいるのかもしれない。まさに今、目の前にいる光秀のように。
「されど…」
光秀がふと、少し低く抑えた声で続ける。
「その左近殿も遠国におるとあらば、恐るるには足らぬ」
光秀の言葉に、釈然としない思いを抱いた。一益が遠国にいれば脅威にはならない――その言い方には、どこか引っかかるものがある。
(義兄上は伊勢にいては恐ろしい存在、されど、遠国であれば脅威とはならぬと、そう仰せなのであろうが…)
光秀がなぜこれほど一益を畏れるのか。一益が荒木村重や松永久秀のように、織田家に反旗を翻すと疑っているのかもしれない。だが、忠三郎の知る一益は、常に織田家を支え、謀略を尽くしてきた。それが裏切りに転じるなど、思いもよらぬことである。
(それとも…いや、どうもそうした疑いとは違うておるような…)
では何だろう。
江南の国衆の多くは、かつては佐久間信盛の与力であったが、信盛が追放されてからは光秀の与力になった。忠三郎の縁戚である後藤喜三郎、青地四郎左も、かつて佐久間信盛のもとにあったが、今は光秀の与力だ。二人は面倒見のいい光秀を慕い、その結びつきは親子の情に似て深いものであるらしい。
二人の話を聞いていて、歳の離れた光秀に対し、彼らがいかに信頼を寄せているかが、よく伝わってきた。
(明智殿の忠義心は確かなものと、かねがね耳にしておるが…)
その忠義の厚さ、与力や家臣への細やかな配慮――二人の言葉には少しの疑いもない。忠三郎はそれを微笑んで聞いていたが、今、こうして思い返してみると、胸の奥で釈然としない気持ちが湧き上がってくるのを抑えられない。
(此度の話は…)
忠三郎の中に、どうしても晴れぬ思いが残る。光秀が心底、信頼に足ると従弟たちが語ったことに、なぜか疑問が浮かぶのはどうしたことだろう。光秀が一益の脅威を口にしたその言葉の裏に、隠された意図があるのではないかと、どこか胸騒ぎがしてならない。
光秀の声には、ただの疑念以上の響きを感じる。忠三郎は心中で問いを繰り返しつつ、その真意を探るも答えが見つからない。何かが、その奥に隠されているように思えたが、それが何であるか、思い至らぬまま、胸の中で深い霧がかかっていくようだった。
甲州道、大ヶ原宿。
滝川家の面々が既に先行して、信長のために御座所の準備をしているとの話を聞き、忠三郎はひと足早く大ヶ原宿へと向かっていた。
すると、宿場町の喧騒の中に、何やら聞き覚えのある大きなぼやき声が響く。
「やれやれ、戦さの次は大工仕事か。腕が足りぬのぅ…腰が痛いわい!」
声の主はやはり義太夫であるらしい。忠三郎は思わず噴き出しながら、声のする方へと足を向けた。
「義太夫、これはまた愉快な作業に励んでおるな!」
義太夫は振り返り、愚痴をこぼしたばかりだというのに、顔をぱっと輝かせる。
「おお、鶴!いやいや、わしのことなど構わんでくれ。上様の御為とあらば、この身が砕けようと…って、ほんに腰が痛いんじゃ!」
忠三郎は苦笑しながら、軽口で応じた。
「まことにご苦労なことじゃ。されど、滝川勢の大工仕事を目の当たりにして、上様が御座所に驚かれるやもしれぬぞ!」
義太夫がふっとため息を漏らしながら、ぶつぶつと愚痴をこぼし始める。
「心にもないことを申すでない。どうせおぬしら腰巾着どもは、上様同様、物見遊山の富士見物に興じるだけであろう」
随分とご機嫌斜めな義太夫に、忠三郎は苦笑いを浮かべる。どうやら疲れ果てているらしい。
「いやいや、義太夫、この御座所の設えが終われば、皆、心置きなく富士の景色を楽しめるであろう?」
「戯けたことを申すではないか。ここが終われば上野《こうづけ》じゃ。我らは本国から遠く遠く離れた上野に行かねばならんのじゃ」
愚痴の原因は、武田攻めが終わってからも伊勢に帰れないことのようだ。
「義太夫。分かっておらぬな。義兄上は此度、上野一国と信濃二群を手に入れた。それが如何なることか」
「如何なることと申すのじゃ」
義太夫は、どうせつまらぬことであろう…と言いたげに忠三郎を斜めに見る。
「おぬしらも城を与えられ、大身となるということではないか」
『大身』と『城』という言葉を耳にした途端、義太夫はぐっと身を乗り出してきた。
「お?大身?城、とな?」
先ほどまでの疲れた顔が、いつの間にか興奮に輝いている。忠三郎はその変わりように、思わず微笑を抑えきれない。
「いかにも。義兄上は織田家では柴田殿に次ぐ広大な領地を手にされたのじゃ。おぬしら重臣たちもそれぞれ城を持ち、大身として名を馳せることになるやもしれぬぞ」
義太夫は急に胸を張り、あたかも一国一城の主になったかのごとく、威厳たっぷりの様子であたりを見回す。そしてひとしきり満足げにうなずくと、ぽつりと一言。
「…それはそれで、なかなか悪くない話じゃ」
あまりの変わりように、忠三郎は、思わず笑いを噛み殺す。
しかし、義太夫がふと遠くを見つめるような顔で、
「しばらくは帰れぬであろう」
と呟いた瞬間、その表情があまりに真剣で、忠三郎も気づけば口元の笑みをきゅっと引き締めていた。
「何分にも遠く離れた上野とあらば、さもありなん」
そう返しつつ、忠三郎は口にはしなかったものの、胸の奥底に小さな棘のような不安が刺さっているのを感じた。ふとした瞬間に現れては消えぬその感覚――それは、あの堅実で冷静な一益が遠く上野へ赴き、日常からいなくなることへのものだ。
(義兄上が不在である間に、万が一、上方で何かが起こったとしたら…)
一益が上野に赴けば、あの堅実で冷静な一益とはしばし別れることになる。
冷静な一益がいる限り、どれだけ嵐が吹き荒れようと揺らがぬと思えていたものが、ひとたび距離を置かれると、急にその強固な土台が頼りなく見えた。 そんな想いを悟られまいと、忠三郎は軽く息をつき、ふとわずかに笑みを作って義太夫を見やる。
(まさか、そんな事態が起こるはずもない。織田家は安泰じゃ)
軽く首を横に振って、不安を頭から振り払おうとする。しかし、いつもならすっと消えていく気持ちが、今回は胸の奥底にしこりのように残る。
「如何した?」
義太夫が不思議そうに忠三郎の顔を覗き込む。
「いや…妙なことが頭に…。まぁ、上方のことは案ずるな。織田家の天下は盤石で、変わりようがない」
忠三郎がそう言って明るく笑うと、義太夫は、然様か、と頷き、
「されど…世は無常。この世に変わらぬものなどあるかのう…」
と妙に意味深なことを言い出した。
「何を申すか、急に」
「月満つれば則ち欠くと言うではないか。世が無常であることなど、唄本ばかり読んでおるおぬしであれば、よう存じておろう?」
義太夫が、これまた妙なことを言い始める。忠三郎は思わず苦笑した。
「月満つれば則ち欠く、か…さような無常の理は、確かに承知しておる。されど、無常の理など、余人には気付かぬほどゆるりと訪れるもの。織田家がそのようにあっけなく崩れることなど、想像もできぬ」
そう言って肩をすくめると、義太夫はひどくしみじみとした表情で遠くを見つめ、
「然様か、おぬしには、まだまだこれからも、変わらぬ月が照らしておるというわけか…」
とぽつりと呟いた。
「義太夫らしからぬことばかり申す。何か心にかかることでも?」
忠三郎が不審に思ってそう尋ねると、義太夫は苦笑し、
「心にかかることがあるのはわしではない。鶴、おぬしであろう?何かあったか?」
まるで忠三郎と明智光秀の会話が聞こえていたかのようなことを言い始めた。忠三郎はぎくりとしたが、すぐに笑顔を取り繕って返す。
「わしには心にかかることなど微塵も…」
そう言いかけた忠三郎だったが、義太夫がにやりと目を細め、じっとこちらを見つめてくる。
「ふむ、素破を侮るでないぞ。我が見透かしの目をもってすれば、隠し事など霧と消えるが如く…」
この妙に厳かな言葉に、忠三郎は面食らいつつも、
「む…痩せても枯れても素破ということか」
と皮肉交じりに返したものの、どうやら今日の義太夫は一層鋭く、何やらじりじりと胸中を見透かされるようだ。
(こやつにも素破らしき才覚があったとは…)
と、妙に感心していると、義太夫がすっと身を寄せてきた。
「ふふ、わしが見れば、おぬしの心の皺も数えられるわい。さては姫様のことであろう?殿に夜討ちをかけられ、たっぷり説教を食らったらしいではないか」
明智光秀の話題かと思いきや、意外にも章姫の件であったことに面食らった。
「良いか?我らが留守の間、姫様にいらぬことをせぬようにのう」
忠三郎は深く息をつき、やれやれと空を見上げた。どうやらあの夜の出来事は、屋敷中の者に知れ渡り、義太夫の冷やかしの話題にされているらしい。これでは「忠実なる義兄」などとは呼べぬ怪しい噂が、さらに広まるばかりではないか。
「まったく妙な噂ばかり立ておって…」
忠三郎はやれやれと息をつく。
そうぼやきながらも、頭の中では全く異なる考えを巡らせる。どうせ安土へ戻っても滝川家の屋敷はひっそりとして、少々寂しくなるのだ。ならば、やはり自分が時折顔を出して、章姫を慰めるしかないではないか、と。
(何、寂しさを紛らわすくらいであれば、義兄上も許してくれよう。そもそも章姫は我が正室の妹。訪ねて行って取沙汰されるものでもない)
忠三郎はそう勝手な理屈をつけ、心中ひとり納得した。
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